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そこからさらに○年後、地道に文を書いている私の元へ編集の人間が尋ねてきました、その人間は私に○○賞にぜひでてほしいと頭を下げて提案しました。
「貴方様の作品はとても良い作品だと思います。私は貴方様の小説に感銘を受けこの職に着き貴方様に直接御礼申し上げたくまいりました。」
こうとも言った、まるで神だと思いました、ですが蛇に睨まれた蛙のようになったのも事実です。
というのも自分の作品を褒めるのは恥ずかしながら自分自身でしたので自分の作品を他人なんぞに褒めて貰うのはあまりにもございませんので嬉しさのあまりに頭をさげてお願い申し上げました。
すると目の前の神様が大袈裟に涙を浮かべて頭を二度下げました。
台風のように私のことを褒めるだけ褒めて去った神様に心奪われながらこの感情をしたためるべく人払いをしてすぐ机に向かいました。
ある程度書き終えたところに女中が深蒸し煎茶と一緒に不信感を覚えるほど薄い手紙、少々の色気を放った1輪の花を持ってきました。
女中より何倍も色気の放った花を無意識のうちに鼻にちかづけました。
その花からは少女のような色気を全く知らない純粋な乙女のような香りが漂ってきました。
そのギャップからその花に取り込まれてしまいそうになりました、それが花の魅力なのでしょう、女達が声を高くし興奮しながら話している様子に鬱陶しさすら感じていましたが、今ならその感情がわかりそうです。
「これはなんという花なのでしょう?」
「こちらは……竜胆というお花です。青や水色などの寒色ばかりが特徴的ですが、実際は白やピンクの花も咲かせるそうです。
旦那様は花言葉というものはご存知でしょうか?」
マリア像のように白い肌をした女中が目を細め問いかけてきました。後光に照らされマリア像のようなものに感じました。その後どう返事をしたのかは定かではありませんが、女中相手に丁寧な口調で「いいえ、存じ上げません。」とだけ返したのだけは小さい脳で記憶しています。
「こちらの竜胆というお花の花言葉は悲しんでいる貴方を愛するという意味のもののようですよ。
そちらのお手紙は恋文のようなものではないでしょうか?」
それだけ女中は言い残すと障子をパタンと締め小鳥のようにトコトコという足音を立ててその場を後にしました。足音を立てている音があまりにも幻想的で思わず私はしばらく妖精の余韻に浸り夢の世界へ誘われました。
貴方に題をつけていただきたい。 谷崎 めろる @melololo
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