プロローグ(真)
曇り空の下、葬式場の会場には龍一と愛里の親戚を初め、職場の同僚や友人たちがたくさんの人々が集まっていた。それぞれが、遺影の前を悲しみで涙し、二人に今生の別れを告げていく。わたし、山本やまもと 美穂みほ弔問客の一人だ。龍一と愛里はわたしの小学生からの友人で兄弟当然の間柄………だったのに。
「子供を残して行くなよ…………ばかっ…………」
遺影の前で呟き我慢しても涙が零れる。ふと横を見るとわたしと同じくポツリと黙って遺影を見つめる少年が一人。
「…………………………………………」
少年の名前は上条 空君。二人に祝福してもらえる筈だった、その誕生日に両親を失った…最初のまだ赤ちゃんだったソラ君に会いに行った以降、わたしも仕事・・の関係で忙しく疎遠になっていたが…その成長した姿に時の流れを感じ疎遠になっていた関係を後悔する。ソラ君の手には野球グローブがありそれは、龍一が誕生日プレゼントとして準備していたものだったらしい。
そんな姿を人々は哀れみや同情の視線を向け、ある者はソラ君に話しかけ励まそうとする大人もいた、しかし何の反応も示さず遺影の前で呆然としている。そんな時間が一刻と流れ弔問客が少なくなった今もまるで石像のように動かない。そんな姿を遠目に見ながら親戚たちが話し合いに耳を傾けていた。彼の身寄りについて話し合いだ。しかし………
「あの子を引き取るのは無理よ。」
「俺たちだって、二人も子供がいるのに」
「よりにも、よって祖父母も亡くなってるなんて…」
そう、龍一も愛里もソラ君が生まれる前に亡くなっている。だからこそソラ君に残っている肉親は親戚達しかいないのだが、誰も彼も難色を示していた。そんな親戚達の姿に少しずつ苛立ちを覚えていく。時間が経つにつれて話し合いは徐々にエスカレートしていく。所々に怒声が飛び交いソラ君を押しつけあうように………もう私はそいつら(親戚達)に限界だった、しかしわたしは部外者、ソラ君の肉親ではないとただ遠巻きに事の顛末を傍観することしかできないと思っていた。けど………
「クソ!あいつら面倒なもん残していきやがって!いっそのこと3人・・で………」
その言葉に、考えるより先に体が動いたんだと思う。気づいた時には親戚達の話し合いのど真ん中に怒鳴り込み、
「わたしが!!引き取ります!!!」
自分でも、生涯であれくらい大きな声はもうでないと思う。怒鳴り声が部屋をこだました後、静寂が訪れ、何人かは腰をぬかしてわたしを目を丸くして見つめる。その数秒の気まずい静寂のあと、我に返った親戚が言葉を返す。
「きっ………君は部外者だろう!?何を言ってるんだ!」
「そうよ!肉親でもない貴女に!この子の責任なんて取れると思っているの?」
さっきまで言い争ってた親戚達が一斉にわたしを糾弾しだす……でも。
「ならその責任って何ですか?」
「そっ…!それはええと……」
「……すぐに答えがでないのはわかります。責任にだっていろいろあります…でも!」
目頭に涙をためながら、わたしが自分を鼓舞するように
「それでも今!!わたしたち(・・・・・)が負わなけれいけない責任は!ソラ君を幸せにすることじゃないですか!この中であの子を幸せにできる人はいないんですか?」
美穂の言葉に親戚達は静かになり
「わたしは、ソラ君を幸せにしたいんです。いえ絶対にしてみせます!」
………ここまでの事は、覚えている。柄にもなく涙と鼻水を垂らしながらソラ君の親戚達を説得した、その後も一悶着あったが必死にソラ君を引き取るのに頭がいっぱいで何を言ってたか覚えてはない、でもそのおかげか親戚達が折れる感じでソラ君を引き取ることができた。
龍一、愛里………ソラ君は、わたしが幸せに育てて見せるから、どうか天国で見守っててね。
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