第4話誰が名付けた?「ナポリタン」
私は「美味ければ何でもいい」と言う考えだが、「エッセイ」ともなると多少の蘊蓄や、個人的見解なんぞも書き添えねばならないと思う。出来上がるモノが「安い料理」でもこの考えは変わらない。
さて、読者さんにとって「スパゲッティ・ナポリタン」は身近な存在だろうか?
私の世代、つまり50代くらいから上の年齢だと「喫茶店」と言う文化があったことを憶えているだろう。今風の「カフェ」ではなく「喫茶店」(サテン)のことである。私と同年代で喫茶店に通い詰めたなんて人は、イマドキのカフェのコーヒーの不味さに閉口しているはずだ。注文方法も面倒になり、とんでもない呪文を若い女性が唱えているのを見ると、関心するやら呆れるやらで・・・
私はそんな面倒なカフェでの注文では「アイスコーヒーを普通のサイズで」で押し通すことにしている。カウンターの綺麗なお嬢さんが何か問いかけて来ても、「普通のアイスコーヒーを普通のサイズで」で通じる。田舎もんだと思われてもいい。実際、住んでいるのは田舎だ。
そんな昔の「喫茶店」で軽食と言えば、サンドイッチかナポリタンと相場は決まっていた。所持金に乏しい時はトーストにコーヒーであるが。あの頃は喫茶店には「常連」と呼ばれる固定客がいて、そんな常連同士の交流も楽しいモノであった。街で出れば、そんな「喫茶店」が3軒はあったものだ。勿論、その日によって常連の顔ぶれは違うが、喫茶店を見て回れば遊ぶ相手に困ることは無かった。
そんな喫茶店で食べる「ナポリタン」は本当に美味しかった。今ではあの「喫茶店文化」も廃れ、コーヒーを飲みながら食べる物はケーキとか、薄っぺらくてしゃらくさいサンドイッチに取って代わった。
もう一度、ナポリタンを見直してみようじゃないか。
一部の好事家の間では、「あのナポリタン」を再現しようと言う試みがなされている。曰く、スパゲッティは1.7㎜の物で、前日に茹でてマーガリンで和えておくと言う技法まで生まれている。コレは「ミートソース」でも事情は同じだ。ただ、ミートソースに関しては今日は触れないでおく。
私がアルバイトしていた喫茶店では、確かに大量に茹でて1食分ずつラップで包んでいた。包む時にマーガリンを10gほど乗せると、熱で溶けて全体に回る仕掛けだ。注文が入ると、電子レンジで麺を温め、缶詰のミートソースをかけて出す。
ナポリタンの場合は、フライパンにサラダ油を熱し、予め切っておいた具材を炒めてから「マーガリン味」のスパゲッティを加えて炒め合わせ、ケチャップで味付け。
何故、「ナポリタン」と呼ぶのか?
実はこの手の問題に明確な答えが出ることは少ない。日本全国で偶発的に生まれたレシピであり、似通ったレシピが統合されて今の形になった、と。
「ナポリタン」に関しては、レシピ自体はアメリカのものであると言う考えに私は賛同するが、それを「ナポリタン」と呼んだ理由が分からない。この手の料理となると、帝国ホテルとか老舗洋食店の名前が挙がるが、そこまで料理界の盟主でもなかろう。
ちなみに、「ケチャップ味は子供の味覚」とも言われるので、彼氏・彼女を招いて振舞うなら、トマトソースにしておいた方が無難であろう。ケチャップ特有の「甘み」が欲しければ砂糖でも放り込めばよろしい。
興味がある方は検索してみては如何だろうか?「ナポリタン発祥の歴史」は意外と読み応えがある記事が多い。
さて、実際に自分でナポリタンを作ると言うのは楽しいものだ。慣れてくれば非常に簡単に作れる食事でもある。スパゲッティの難点は「茹でるのに大量のお湯と時間がかかる」点である。例えば、私が使うスパゲッティでは「100gに対して熱湯1リットル。7分半茹でる」とある。大した手間でもコストでもないが、食費節約のために麺類を多用する身となれば、節約出来る部分はとことん節約したい。ここでは「水漬けスパゲッティ」と言う手法を使う。必要なのは容器と水だけである。容器は100均で売っている「レンジで簡単!」みたいな容器を買うのが良いと思う。大きさもピッタリだし、110円で買える。この容器にまだ乾麺の状態のスパゲッティを入れる。1人前は100gである。盛りの良いスパゲッティレストランでは120gなんてこともある。スパゲッティの入った容器に水を注ぐだけである。このまま冷蔵庫で3時間ほど放置しておけば、真っ白にふやける。これでいいのだ。白くふやけて柔らかくなったスパゲッティは、小さな鍋で茹でることが出来る。これはもう「エコ」である。小鍋にお湯を沸騰させ、水漬けしたスパゲッティを投入する。再沸騰すれば茹で上がりだ。なんと簡単なことであろうかっ!
私の実験と言うか経験では、太さ1.7㎜以上(スパゲッティーニ・スパゲッティ)では柔らかめの仕上がりになる。ナポリタンには好適であるが、「もっちりとした腰が欲しい」場合、1.5㎜程度の太さ(フェデリーニ)を使うと良い結果になる。推測だが、水が浸透した麺を茹でる際に、太い場合は芯まで熱が入る前に「表面がダレる」のだろう。麺が細ければ芯まで一気に熱が入るので「腰が残る」のだと思う。
この技法でガス代も節約できる。茹でる時に塩も不要なので節約出来る。茹でたら捨てるのだから、わざわざ塩を加えるまでも無い。
実はこの「水漬けスパゲッティ」と言うのは警視庁災害対策課公認の「災害時の推奨調理」になっている。熱源や飲料水の確保・補給が難しい場合でも、水漬けスパゲッティの技法を知っていれば、最小限の調理で済む。警視庁のレシピは確か・・・フライパンに少量の水を入れて沸騰させ、そこに水漬けスパゲッティを入れる。水が無くなってきたらサラダ油を入れて、適当な具材や缶詰と炒め合わせるだけ。サラダ油と書いたが、オリーブオイルでもいいし、油無しでも缶詰やレトルトソースを使う方法もある。
真っ白にふやけた麺も、加熱すれば本来の黄金色になるので心配は要らない。
スパゲッティを美味しく作るコツは、1度に作る量を2人前(200g~250g)にすることだ。茹でてソースをかけるだけなら、鍋の大きさ次第だが、フライパンでソースを絡めるような方法では、250gが限界だろう。これ以上の量になると味付けにムラが出やすい。
ではレシピ。
スパゲッティ 100g(乾麺の状態で)
オリーブオイル 大さじ2
ウィンナー 1~2本。ベーコンなら1~2枚
ピーマン 1/2個
玉ねぎ 1/4個
ケチャップ 大さじ3
ウスターソース 小さじ2/3ほど (小さじ1では多い)
胡椒 適宜
マーガリン 10g (バターでも美味しいが若干くどい)
スパゲッティについては書いた通り。具材を炒めてから茹で始めても手早く作れる。
オリーブオイルで具材を炒める。コレは好みの具材で良い。ピーマンと玉ねぎは必須だと思うが。具材に火が通ったら、ケチャップとウスターソースで味付けする。お好みで増減すればいい。表記量は「基本的に美味しく作れる」量なので参考値だ。
具材にケチャップとウスターソースが絡んだら火を消して、マーガリンを落とす。
スパゲッティが茹で上がるタイミングでフライパンの具材を熱して、そこにスパゲッティを放り込んで炒め合わせれば完成である。
昨今は小麦粉の高騰を受けて、麺類の値上げが激しい。安いと評判の業務スーパーでも、スパゲッティ1㎏が268円だったりする。私は安売りスーパーを知っているので、業務スーパー品よりも安く買っている。1㎏198円で売っていたりするのだ。
スパゲッティと言えば「デュラムセモリナ粉」であるが、国産メーカー品で、「強力粉とデュラムセモリナ粉」のミックスで作られたものがある。「赤城食品」と言う会社の「洋食屋さんのトップスパゲッティ」と言う名称、1.7㎜規格で1㎏198円。若干の腰の弱さはあるが、十分に美味しい。私が通うスーパーでは安く売っているのだが、メーカー直販だと100円高いのが不思議ではある。
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