第3話 悪魔と闘ってるって、どういう事!?
「私はセシル・スベレスター。この国の第一王女よ」
美しい金髪少女が由香と亮介に微笑みながら言った。さっきの緊張した雰囲気の中での凛々しい表情とは違う、とても愛らしい表情だ。
「お、王女さま?」
由香と亮介は緊張し、カチコチに固くなる。
その様子をみてセシルはくすっと笑う。
「由香とは同じ歳だし、仲良くしましょうね」
「は、はい」
ふたりは赤くなりながら返事をする。
「食事を持ってきました」
アンが食事を運んできた。
「さあ、一緒に食べましょう」
王女のセシルに促され、3人で食事を始める。
ふたりは、最初は怖々、一口、二口と食べてみる。
結構美味しかったので、ふたりの顔がほころんだ。
暖かい料理を前に2人の緊張は一気にほぐれる。
「王女さま、こちらの世界について、質問してもいいですか?」
料理を食べながら遠慮がちに由香が言う。
「ええ、もちろん」
セシルは優しく微笑み答える。
「えっと、まず、ここは、王女さまの家ではないですよね?」
「ええ、ここは私たちの隠れ家よ」
「隠れ家?」
「今、私たちは悪魔と闘う為の準備をしていて、その為の隠れ家なの」
「あ、悪魔と闘っているんですか!?」
由香と亮介は同時に声を上げた。
「ええ、私たちは定期的にここに集まって、悪魔を倒すために聖なる石を集めているの」
悪魔と闘っている事も、聖なる石を集めているという話も、二人にとっては混乱を招くだけの説明だ。
「聖なる石を12個集めて首飾りを作り、それを悪魔に乗っ取られている人の首にかけると、その人から悪魔を
「悪魔に乗っ取られている人がいるんですか?」
亮介が驚きながら聞く。驚いてはいても、しっかりと肉はフォークに確保していた。
「ええ」
セシルは目を伏せ、悲しそうな顔した。
「父が…、父王が」
「え!?」
セシルの言葉に、姉弟は驚いてセシルを見て、そして顔を見合わせる。ますます頭が混乱する状況だ。
「…セシルのお父さんが、どうして?」
由香が
「私達の母が生きていた頃は、この国はとてもいい国だったのよ、でも…新しい王妃が来て、おかしくなったの。父は民が苦しく感じるほどの重税を課して、自分たちは毎日
そこまで言い、王女はグラスを取って水を少し飲む。そしてまた話を続けた。
「皇太子殿下と、第2王子のサラン兄さまと私の3人は、あんなに優しかった父王が急に変わってしまったことが信じられなくて、原因を調べたの。そしたら、現王妃が、自分の息子を王に着かせるため、悪魔に王の魂を売る契約をしてたのよ!!」
「なんだ、それ!自分の魂じゃなくて人のをか!?」
亮介は思わずいつもの口調になっていた。
「自分の魂は、彼女が王妃になる時に、すでに売っていたらしいの」
セシルが悔しそうに言った。
「なんて
由香も怒りが込み上げて来る。
「怒ってくれてありがとう」
セシルはにっこりと微笑む。
「彼らは、皇太子であるアーロン兄さまの命を常に狙っていて、私たちも気は抜けないの。でも、私たちも黙って見てるだけじゃないわ。聖なる石を集めながら、王や王妃の悪政の邪魔をしているの。現状を変えるため、志を同じくする有志が集まって裏の組織を作り、対抗しているのよ」
「王女は、私と同い年なのに…すこいのね」
本当に感心したように由香が言う。
「私は王女だもの。上に立つ者には、皆を守る責任が伴うものなのよ」
へーっと由香と亮介は感心してセシルを見る。
「ま、これはアーロン兄さまの受け売りですけどね」
少し恥ずかしそうに照れながらセシルは言った。
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