第4話 パパとママは…無事かな!?

 王子や王女たちは、宮殿に自分たちの屋敷を持っていて、普段はそこで生活している。でも聖なる石を探す為、定期的に宮殿を抜け出し、ここに来ているということだった。


 食事の後、ふたりはいろんな人から話を聞けて、大分この世界のことが分かってきた。


 この国の名前はスペランタ王国というらしい。

 前王妃が亡くなってから、王が悪政をくようになり、今は国民も苦しい状況になっているとのこと。

  

 現在は宮殿のほとんどを王妃が掌握しょうあくしている状況で、アーロンやサランの宮にはスパイや刺客が何度も送り込まれていて、自分の宮とて気を抜けない。

 唯一、セシルだけは、地位を脅かす存在になりえないので、今はノーマークらしい。王女のことまで、気にしてはいられないのだろう。


 聖女のレイアさんは、本来なら聖女として宮殿で暮らすべきなのだが、今はこのログハウスで生活をしている。宮殿には今、王妃側が立てた偽聖女が居て、レイアさんは指名手配されている身になってるらしい。


 前聖女のサラさんが宮殿を追われる前にノーマークの王女宮の中に、この隠れ家へ一瞬で来れるホールを作ったので、皆、宮殿からの行き来はそれを使っている。これのおかげで、王や王妃に、気付かれることなく行動出来ているという事だった。


 二人はログハウスの外にも出てみた。

 隠れ家と言うだけの事はあって、ログハウスは森の中にあり、四方が高い木々で囲まれている。

 それと、このログハウス、意外に大きい事に驚かされた。

 

 夜になり、皆で夕食を食べた後、二人は最初に目覚めた寝室で休むように言われた。


 由香と亮介はそれぞれのベットの上にあがると、それぞれのベッドサイドに置かれてる大きな袋をひっぱり、ベッドの上に置いた。この袋は、転移時に持っていた物を入れておいてくれたものだ。


 由香は電子腕時計をつかんで見てみる。時間は5時23分を示していた。日付はあの地震のあった日の翌日の日付だ。


 また袋を探ると、ポシェットとスマホが出てきた。スマホをバッと掴み、アンテナを確認すると一本もたっていない。

 そりゃそうだなと、あきらめ、保存してる写真を見ると、地震の直前にみんなで撮った写真が表示された。


 由香は急に寂しくなり、亮介の方を見た。

 亮介もスマホを見ていたが、ため息をつき袋から双眼鏡を取り出した。


「双眼鏡!?一緒に転移されたんだ」

 由香が驚きの声をあげた。

「身に着けている物とか、触れている物は全部一緒に転移されるみたい」

 亮介が冷静に言う。

「みたいね。ま、双眼鏡は何かの役に立つかもね」

「うん、まあ、他には何もないけど」

「わたしも。あ、でも充電器もってるから、スマホの充電はできるよ」

「ゲーム出来る?」

「オフラインのは出来ると思うけど、まあ、あんまり電池消費しないようにね」

 と言いながら由香が噴き出す。

「なに?」

「いや、異世界に来てまで、ゲームって…」

「いいじゃん、べつに」


 ふたりは袋を片付けて横になる。

「なあ、ねえちゃん」

「ん?」

「パパとママ…無事に逃げられたかな?」

「…」


 由香は亮介の方をバッと向く。

「あたりまえじゃん!」

「…そうだよな。俺たちだってこうやって生きているんだから」

「そうだよ!さあ、もう寝るよ!おやすみ」

「うん、おやすみ、ねえちゃん」

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