第3話3

「お母さんごめんね…他の人が普通に出来る事が出来ない、出来の悪い娘でごめんね。産まれて来てごめんね…」


千紗は夢の中で呟いた自分の言葉に、又言ってると自分で自分に辟易した。


そして…


又、いつも通り、スマホの朝のアラームが鳴り目覚めた。


「あーもう!うっさいなぁ!」


目から涙を溢れさせながら千紗は叫ぶと、まだ寝たまま寝ぼけたまま、頭の上のスマホを手探りで探し止めた。


そして、ぼやけた頭で考える。


(あー…又仕事かぁ…又、あのクソババア達に会わないといけないのか…)


そして、ふと、昨日の事を思い出す。


(昨日は確か、社長に呼ばれたっけ…)


(社長に呼ばれて…)


(!!!)


千紗は昨日社長に呼ばれ、結局、会社の有力関係者の姪の、16歳の少女を一ヶ月預かる事にした。


ボブで落ち着きのあるブラウンに染めている千紗と違い…


少女は、長いストレートの黒髪が美しい。


そして、顔が千紗と良く似ていた。


しかし、千紗の残りの仕事があったので、会社で少女と一度別れた。


そしてその夜改めて少女は、少女の叔父に千紗のマンションに連れて来られた。


少女の名は、五十鈴萌と言った。


萌は、食事も風呂ももう済ませてきたと言うので、夜も遅かったので千紗の家の中一通りを説明し…


全ては明日からと言う事にして…


叔父が帰り、千紗は自分のベッドを萌に譲り、自分は客間で布団で寝た。


全てを思い出した千紗の耳に、キッチンから音が聞こえた。


千紗はパジャマのまま、慌ててダイニングキッチンに行くと、萌がもうパジャマを着替え朝食を用意していた。


朝食の用意など、千紗がやるべきものだ。


千紗は動揺しながら、萌の後ろ姿に声をかけた。


「あっ!萌さん、それは、私の仕事です!」


すると、くるっと萌が振り返った。


「あっ!千紗さん!おはようございます!こっちこそ勝手にすいません。昨日の晩、千紗さんが台所と冷蔵庫自由に使ってって言ってくれたから、勝手にごはん作りしてました」


萌はそう言い、ニコっとした。


千紗は萌を見て、写真も無くて顔も知らない母が…


千紗の今の年齢の半分の16歳の頃の母が、今自分の目の前にいる錯覚に又落ちた。


(お母さんが16歳の頃、こんな感じだったんだろうか?…)


テーブルには、すでに皿やコーヒーカップや、昨日千紗が萌の朝食用に買った材料でサラダが2人分用意されていた。


「今すぐ、パン焼きますからね!」


萌はニコニコして、パンの袋を開けた。


しかし…


「あっ…私、朝は何も食べないので…」


千紗はダルそうに、そして、少し後ろめたそうに言った。


食べたくないのだ。


千紗は、朝は全く食欲も無く、朝食を食べないのが朝のルーティーン。


そして何より、その千紗の生活、仕事のルーティーンを他人に乱されるのが何より苦手で苦痛でストレスだった。


「えっ…そ、そうなんですか…」


萌が、ショックを受けたような顔をした。


その顔に、千紗に罪悪感が生まれた。


やはり自分の母親を思い出して。


「あっ…私は、コーヒーだけ貰います。食事は萌さんだけして下さい」


千紗のその言葉に、萌が千紗の顔をじっと見てから言った。


「じゃぁ一緒に、千紗さんも、一緒に、私と一緒にコーヒだけでも飲みませんか?」






















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