第22話 反り立つ角
「こいつらがホーンボアか。確かに、今までと比べてかなりまともだ」
殺気だった視線に鼻息。
つり上がった目。
ただの猪と違って頭部にはとさかのような赤い毛が生え、明らかにパンクな風貌。
肝心の角が見当たらないけど、多分あれが角に見えるってことなんだと思う。
そしてその気になるランクは……
『ホーンボア【G】』
イキリ爺よりも1ランク高いと防御壁にひびを入れられる、と。
さて、何故だか滅茶苦茶怒っているように見えるけど、その場から這い出るのにはまだちょっとだけ有余があ りそうだな。
「攻撃に移られれば俺だって致命傷をもらうかも知れないし……やるなら今だろ!」
まだ身体が全て地中から出ていないホーンボアの下まで駆け寄ると、俺はさながらもぐら叩きのようにその頭をサバイバルナイフで叩き切った。
「や、やったか?」
「……」
確かな手応え、流れる血。
間違いなく致命傷なのに、ホーンボアは全く鳴かない。
それどころかフラりフラりと身体を揺らしながら地中を出ようとする。
しかも周りの仲間たちもそれに動じず、地中から出ようとしている。
あくまでここは戦場。
仲間1人がやられた程度、1度切られた程度じゃ焦りもしないってこと……。
その生き様ちょっとカッコいいじゃんか。
うちのイキリ爺なんかこの隙にモギギ草食い始めてるってのに。
テイムしてこの区画の新しいリーダーにさせちゃおうか――
「ぶもおっ!」
感心している間に、猛々しいうなり声と共にその全身を見せたホーンボア。
顔から察してはいたが、中々に大きな身体。
特にM字に開かれた股関を隠すためかと思うくらい肥大化した前足はイキリ爺よりも筋肉が発達していて目を見張るものがある。
しかし、それ以上にあの股間からそびえる1本の角。
白銀に輝き見ただけでその硬さが想像……ん?股間の、角?
「きぎぃいいいいいぃぃぃ……」
「ぶもっ! ぶもっ! ぶもっ!」
その角にビビるイキリ爺とそれを高らかに笑いながら揺らすホーンボア。
「……。前言撤回。カッコいい? 滅茶苦茶卑猥でダサいよ! 頼むから揺らすな! 揺らすなって! そんでこんなんにビビんなよ!」
駄目だ。
もう角があれにしか見えない。
この光景もマッチョにセクハラする変態にしか見えない。
こいつら、本当に強いんだよな?
「はぁ。なんか急にやる気がなくなっちゃったな……」
「ふがふがふが……ぶもおおおおおおおおおおおお!」
俺が意気消沈していると、俺の攻撃したホーンボアもようやく地中から這い出た。
もう目が見えないのか、周りの匂いを嗅ぎ、何故かイキリ爺に方向を合わす。
そしてその顔に更に怒気を募らせると、雄叫びを上げながら角も天井にそそり上げる。正直止めて欲しい。
これを見るに、見たくなかったが、どうやらホーンボアたちがイキリ爺に怒りを覚えているというのは間違いない。
多分その理由は、匂いを嗅ぐ仕草から自分たちのモギギ草を奪われたから、とかかな?
となれば1発くらいイキリ爺はあのご立派な角で突かれないと駄目かも……いや、その絵面がきつすぎるからやっぱりそれは却下し――
「ぶもおっ!」
――パンっ!
「え?」
「ごが!?」
最悪の画を想像していると、死にかけのホーンボアの股間から破裂音と共に角が発射された。
そう。角が発射された。
大事なことだから2回言わせてもらったよ。
……。卑猥ここに極まれり。
こいつら駄目だ。もう見てられな――
「ごがあ!」
「って、ひびってこれが原因だったのか」
股間角ミサイルから逃げたイキリ爺は防御壁の中にダイブ。
すると、防御壁に新しいひびが……あんなでも威力は高いんだな。
あれだけは当たりたくない、絶対に。2つの意味で!!
「ぶももももも! ぶ、も……」
「死、んだのか?」
ビビるイキリ爺を見て満足したのか、目の前のホーンボアは地面に倒れた。
……。
最後の最後まで戦う姿勢はよかったんだけどなぁ……この攻撃方法だと賢者のあれにみえちゃうんだよなぉ。
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