第21話 狩りにいこうぜ!
「っと言うわけで、今日はホーンボアを狩りに行く! 一緒に行きたい奴は挙手してくれ!」
「「……」」
「ひっはっ! ひぃあぁはあああああああっ!」
真波の注文を受けてから数日。
休日前夜に扉を潜った俺は意気揚々と同行する仲間を募っていた。
だがホーンボアという名前を聞いた途端ある1匹を残して全員が俯いた。
まさか全員が知らんぷりをするとは思わなかったけど、それ以上にこいつらも人の言葉を理解し始めてることに驚きだな。
というか、コムボールに関しては同じ第2区画のモンスターだから面識があるとして、なんでチキンチキンまでこんな反応――
「ぷるるるるるるるるるっ! いやっはあっ!」
……。
ち●かわのウサギみたいな声でまたシナチク投げてるよ、あいつ。
よし。イキリ爺はホーンボア狩り強制連行決定。
「おーい。あんた俺の話も聞かずに楽しそうにしてはりますねえ」
「ご、ごがぁ……」
俺はそっとイキリ爺の背後に忍び寄ると、その肩を軽く叩いた。
そしてそれに体をびくんと跳ねさせ、イキリ爺はゆっくりとゆっくりと恐怖に怯えた顔で振り返る。
まるで幽霊でも見ているかのような顔だけど……今の俺そんなに怖いか?
「ご、ごが!ごが!」
「土下座なんかしてももう遅いっての。お前は罰として俺と一緒にホーンボア狩り決定、確定な」
「ごああああ!」
真波と競り合えるほど素早い土下座。
それでもって悲痛な叫び。
なんだかんだでイキリ爺のランクは【H】まで上がっているから、そこまで嫌がらなくてもいいような気がするけど……。
「そんなにヤバい奴なの?ホーンボアって」
『ガチヤバ。(゜ロ゜;←こんな感じになるで!』
考える素振りもなく地面に描かれた顔文字。
ただいくらなんでもそれは盛り過ぎな気がする。
そもそも……。
「いやいやいやいや。お前見たことないだろ?」
『ある! こっち来てください!』
「ごがっ!」
イキリ爺は地面に文字を書くとその鍛えた腕でこっちこいと催促。
俺はそれに従って第2区画への道まで向かう。
すると……。
「防御壁に、ひび?」
「ごかあぁぁ……」
以前俺が設置したはずの防御壁にひびらしきものが。
ちょっと前にキラーフィッシュの身とタッケタッケをちょちょっと取りに行ったときはこんなのなかったんだけどな……。
1回比較的時間があったからこの防御壁の強度を試すために、第2区画のモンスターで防御壁の対象になるキラーフィッシュを連れてきて攻撃させたこともあったんだけど……。
あの時はひびどころか、振動だって吸収してたのに。
「ホーンボアはそれだけ強力なモンスターってことか……。でもなんで俺のいない間にそれがここにまで来たんだ? 一緒に食材を取りに行く時以外はここの連中は外にでないはずじゃ?」
「……」
俺が視線を送ると、イキリ爺はさっと顔を背けた。
こいつ……自分が強くなったからってここから出ていろんなモンスターにちょっかい出したな。
……。
そういえばなんか口の周りに緑の後があるな。
「お前、なんか食べてただろ?」
「ごがごが」
近づくとヨモギに似たそれでいて清涼感ある香りが……。
なるほど、こいつの目当ては【モギギ草】で……ってそれまだ手に入れてない野草なんだから俺の分取っておいてくれてもよくない!
イキリ爺には条件のこと話してるはずだぞ!
「なぁその草、勿論俺の分もあるよな?」
「……」
「ちょっとその場で飛んでみ」
「……。ごが」
軽くジャンプするとイキリ爺の羽の中から数枚の【モギギ草】らしき草が落ちた。
「よしよし。そうやって最初から素直に俺の分も出してくれれば――」
「ごかあっ!」
俺がそれを拾い上げようとすると、決死の覚悟で羽交い締めしてくるイキリ爺。
こいつ……どんだけこれ好きなんだよ!
いつの間にかとんでもねえ中毒者になっちまったんだな!
いいよ。だったらその身体からモギギ草全部をぼこして抜いてやる!
「おら! 鳩尾食らえ!」
「ぎぎぃ!」
「うっ、そんな寝技どこで覚えた……。くそ!だけどまだまだ……」
俺の肘内からのイキリ爺の寝技からの返しからの返し。
俺たちの寝技勝負は段々と場所を移り……
「あ、ヤバ。外に出ちまった。モンスターが……」
「ごが!?」
「なーんてな! おら隙有り――」
「「ぶもおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」
ついに防御壁の外に出ると、見覚えのないモンスターが数十体地面の中から顔を出した。
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