胡麻団子
第14話 優秀小姑?従業員
「改めまして厚井彰です! 今日からお世話になります! 一緒に最強で究極の満足度100パーセント! 王道だけどいろんな観点、視点でお客様に寄り添える、そんな中華そば作りをしたいと思ってます! どうかよろしくお願いします!」
「あ、はは。店主の竜居忠利です。その肩の力抜いてもらって、楽しく……は仕事だから難しいかもだけど、もうちょっと気楽に、ね?」
「なるほど! その方がお客さんも委縮しないですもんね! 最近のラーメン屋は高圧的なところが多いですし、やっぱり大衆料理の中華料理店は気持ちの作り方から違いますね! 了解です! その経営理念胸に刻んで業務もしっかり学ばせてもらいます!」
「うん。よろしくね」
俺の目の前に俺以外の初めての従業員が1人。
昨日いきなりラーメンを教えて欲しいって言われたから、ここで働いてくれるならって簡単にOKしちゃった結果がこれ。
……。人手が欲しいとは思っていたけど、熱い人来ちゃった、というか雇っちゃったなあ。
そんなに大層なこと考えてるつもりないし、無料の素材で楽にお金稼いじゃおっと! っくらいの気持ちなんだけど……この人、彰君の中でこの店の、俺の評価が高すぎてこっちが緊張するわ。
中華そばに関しては鶏ガラとキラーフィッシュの身っていう食材が安定して手に入るようになったから、一先ずOKってことにたかったんだけど……この感じだと麺とか他の部分の改良、新しいモンスターや野菜、野草を早く手に入れないとか。
増築のこともあるし、ちょっと無理してでもダンジョンに籠る時間増やしたいって思ってたからいいんだけどさ。
ただ急かされるのは本当に勘弁だぞ。
それにこういうタイプって他の業務がおざなりになる事もあるかもしれないから教育が大変――
「じゃあ早速ラーメン、中華そば作りを教えて欲しいって言いたいんですけど……それよりもまずは営業第一ですよね? 初日、というか自分みたいな新参者はまずフロアから頑張ります!」
「え? あ、うん。それは助かるけど……いいの?」
「親父の店でも最初はそうでしたし、そもそも自分みたいな若輩者が最初から厨房に立てるなんて思ってません。それに店の基礎、理念というのをこの身で直に感じてみたいってのもあったので、むしろフロアをやりたいって気持ちが今はあります」
「そ、そう。じゃあ今日は注文をこの伝票に書き込んでもらって……キャッシャーの使い方とか分かる?」
「概ねうちと同じなので問題ないです。メニューも昨日のうちに全部頭に入れましたし、今のところ注文は卵スープセットと棒棒鶏ばかりですよね? なら全然大丈夫だと思います!」
「そ、そう?」
「開店まで後30分……。仕込みの方は大丈夫ですか?」
「い、一応」
「じゃあ自分はテーブル拭いて、ピッチャー用意しておきます。あ、あと店先の掃除はここに来たときにやっておいたので大丈夫ですから」
「お。おう……」
……。やだ! この子滅茶苦茶できるじゃない! おじさん感心しちゃった!
じゃなくって……この程度まだまだ。
フロアの業務はただ俺の作った料理を出すだけじゃなくて、注文を聞いて、テーブルを片付けて、会計等こなさないといけないことが沢山。
これができたくらいでじゃあ、まだ俺の中華そばを手伝わせるわけには――
「――1番卓のお客様、卵スープセット2つと棒棒鶏、それにチンジャオロース1つ! あ、これ2番カウンター持ってきますね! それとこれが終わったら一先ず注文掃けるので早めに3番卓のテーブル片付けといてください。食器は洗剤液の中いれておいてくれれば自分洗っておくので、すぐに待ってるお客さん入れてOKです!」
「わ、分かった」
「あ、お会計ですね! すぐ行きますから少々お待ちください! 竜居さんはまず料理頼みます!」
ふ……。初日からこの働き。
彰君……貴様が、NO1だ。
店を開けてから数時間。
俺一人の時はあれだけ行列を作らせてしまっていたのに、それが嘘みたいにない。
料理に集中できるし、なんなら夕方の準備までできるレベル。
熱いの来ちゃったとか言って本当にごめんだわ。
とはいえ、ここまで働いてもらうと申し訳なさも出てくる。
尚更早めに麺を……そうだ。
これだけ余裕があるなら、準備時間にちょっとだけダンジョン潜って……第2区画でちらっと見かけたあのモンスター、絶対あれを落としてくれるからそれで麺の試作を彰君が帰る前に一緒にしてもいいな。
それとそれを使って特別に……1品作ってあげるか。
「そうと決まればまずは餡を準備して……えーっとゴマはあったかな?」
「竜居さん! 注文は卵スープセットと棒棒鶏それにチンジャオロースですらからね!」
もう、全部片してきたのか……。すっご。
でも小姑じゃないんだから、もう少し甘やかしてよ。
いや、助かってるんだけどね。本当に。
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