「しんれい写真」

赫彩(あかいろ)

しんれい写真

私はいつものようにテレビ番組を見ていた。

正しくは「ただ」テレビをつけていただけだが、

あるコーナーが私をひどく惹きつけた。

「何か」を見なければいけない気持ちにかられた。


そのテレビ番組は心霊写真や超常現象のビデオなどを特集していた。

芸能人たちが出演し、いつも通りのありきたりなリアクションで驚いて見せていた。

番組はその時代には珍しく生放送だった。


番組は順調に進み、終盤。

特別コーナーで霊能力者が、芸能人たちの持ち寄る心霊写真や心霊映像などの真贋を判別するという内容が映し出されていた。

芸能人たちは各々持ち寄ったものを霊能力者に見せていく。


まず男性の芸能人が持ち出した心霊写真を判別していた。


するとすぐに

「これは違いますね。確かに霊的痕跡はありますが、実際には何も映っていませんよ」

と言ってみせた。


私は「うまいやり方だ」と思った。

最初に知った風な口をきき、否定することで本当に判別できるのだと感じさせる。

私は「まだ」インチキ臭い番組と出演者だなと考えていた。


しかし次の写真で私は考えを改めざるを得なくなった。


あれは女性芸能人が見せた写真だった。

その芸能人曰く「友人と古びた神社で撮った写真」

とのことだった。


その写真は、二人の女性の後ろに「誰か」がぼんやりと映っているように見えた。


その写真が霊能力者に渡されると、少しずつ雰囲気が変わっていった。

霊能力者の顔が少し強張り、汗もにじんでいた。

そして急に写真を伏せ「カメラを止めて」と連呼した。


「何が映っているんですか?」と司会の男が興味津々に聞く。



霊能力者は

「神様です。」

といった。



番組の生放送はそこで止められた。

私はしばらく砂嵐状態のテレビから目を離せずにいた。


あれ以降、私は神社で写真を撮らないようにしている。

この世のものではない方を撮らないために。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「しんれい写真」 赫彩(あかいろ) @akairo3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ