見知らぬ笑顔が浮かぶ写真

 これは、私が幼かったころに起きた出来事だ。

 当時、母は出産のため、産婦人科に入院していた。当時の私は、まだ保育園児であり、母に会えないその状況が心に不安を呼んでいた。一方、兄は対照的でケロッとしていた。

 そんな私を喜ばせるために、父が家の物置部屋で見つけてきたポラロイドカメラで兄や私を何枚かパシャリと撮ったのだった。

 ポラロイドカメラで撮った写真はその場で現像されるのだが、そのとき現像された複数枚の写真の中に一枚少し不思議なものがあったのだ。

 私が一人、カメラ目線で笑顔を浮かべている写真だったのだが(確かピースをしていたはず)、その写真の左下側に見知らぬ人の顔があったのだ。心霊写真の割には、くっきりとしたそれは満面の笑みを浮かべていた。父でも兄でもない、その笑顔を浮かべている人物は一体誰なのか今でもわからない。

 母が妹を出産する直前だったこともあり、私が生まれる前に亡くなった祖父の顔だったら微笑ましい体験なのだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る