11話
俺はその後、ラウルとスズコ様に会いたいという旨をリアナに伝えさせた。
ちなみに伝えさせた相手は親父だが。すぐに親父から返事が来て「自分の執務室ならば良い」との事だった。
早速、王宮に密かに滞在するスズコ様とラウルにも伝えられたらしい。スズコ様は「殿下やったらええよ」とのコメントをリアナに言っていたようで。
リアナは後で俺だけに教えてきた。そうして翌日にはラウルとスズコ様と会う約束が取り付けられたのだった。
俺はジュリアスと新しく付けられた護衛の騎士ーエオラスとオリバー、キラ、以前からの護衛であるジェフとセルジュの7人で親父の執務室に向かう。
「……殿下。我らが同室するのは控えた方がいいでしょうか?」
「そうだな。遠慮してくれると有り難い」
「わかりました。何かあればすぐにお呼びください」
そうしてくれと俺は頷いた。
その後、親父の執務室に到着した。ドアの両脇に控える騎士の片方が開ける。
俺が入ると護衛の騎士達は廊下で待機した。中に入ると親父と横にスズコ様、ラウルの3人がいた。
「……エリック。来たか」
親父が低く呟いた。スズコ様とラウルも俺に気がつく。
「殿下。お久しぶりです。ご機嫌麗しくようございました」
スズコ様がにこやかに言う。さすがによそ行きの笑顔は崩れないようだ。
「はい。スズコ様もお元気そうで良かったです」
「殿下。今日は僕や母上にご用があるとか。それで参ったのですが」
ラウルが早々に切り出した。俺は3人に近づいて言った。
「そうです。叔父上。父上、ちょっとスズコ様と叔父上と3人だけで話したいんですが。いいでしょうか?」
「ふうむ。要はわたしが邪魔という事か。まあいいだろう。王妃の部屋に行ってくるから二刻くらいだったら執務室を開けられるだろうし。その間であれば、構わん」
「ありがとうございます」
お礼を言うと親父はではなと言って執務室を出て行く。
足音が遠ざかった所でラウルが防音魔法と防御魔法を執務室に施した。
「……これでいいだろう。エリック、話しを誰かに聞かれる心配はこれでない」
「ありがとうよ。叔父上」
「……エリック君。で、あたしとラウル呼んだんは何でなんかな。教えてくれへん?」
スズコ様が真顔で問いかけてきた。俺は頷くと訳を言う。
「ラウル叔父上とスズコ様を呼んだのはある事をお話ししたいからです。お2人は前世の記憶を俺が持っていると言ったらどう思いますか?」
単刀直入に言うと2人はあからさまに驚いた。
「エリック君が前世の記憶を持っとるって。でも前世言うたってこのフォルド国の人なんやろ?」
「……残念ながら違います。俺は元々こことは違う世界の日本という所の出身でした。名前は新堂矢恵と言って女性だったんです」
「そうやったん。道理で最近のエリック君、3歳とは思えへん程大人びとったわけや。ちなみにあたしの出身地もわかってるんやろ?」
「スズコ様は言葉使いからして関西の方ですよね。日本の大阪とかその近辺の出身くらいは見当をつけてましたが」
「そうなんよ。当たり。あたしな、生まれは大阪で育ったんが兵庫県なんや。おかげでごっちゃ混ぜになってもたけど」
俺は成る程と納得した。やっぱりスズコ様も同じ日本人だった。前世の俺と同じ。
「……エリックも日本人だったのか。それで母上に言おうと決めたのか」
「そうだよ。叔父上、あんたも半分異世界の血が入ってたんだな」
「まあ、そうだな。エリック。前世の記憶を持ってると話したという事は。何か僕や母上に頼みたい事があるんだろう。言ってみろよ」
「察しがいいな。この世界は俺やスズコ様の育った日本でいうとゲームの中とそっくりなんだよ。要はここ自体が乙女ゲームの世界。そして俺や叔父上はそのゲームの攻略対象。ちなみにシェリア殿が悪役令嬢な」
悪役令嬢と言った途端にラウルとスズコ様は眉をひそめる。
「悪役令嬢なあ。嫌な言い方やわ」
「そうだな。シェリア殿がね」
2人して同じようなコメントを言う。そりゃあそうか。
「……それで2人に頼みたいのは。俺のルートにヒロイン、つまりはゲームの主人公だが。その主人公が入ったりシェリア殿の兄のトーマス殿のルートに入ったりすると。まずい事になる」
「まずい事なあ。その心は?」
「うーんと。シェリア殿は俺とトーマス殿のルートでは主人公の敵として立ちはだかるんだ。そしてゲームを終わりまで持っていくとシェリア殿は悲惨な最期を迎える。いいとこ、修道院送りで俺とトーマス殿のルートでは処刑されるんだよ」
処刑と聞いてスズコ様とラウルは黙り込んだ。眉をしかめた状態でだが。
「……そうやったんか。あ、でも。フォルド王国なあ。もしかしてあの「華国」やったりする?」
「そうです。「華やかなる貴公子達~フォルド王国物語〜」の中にここはそっくりなんです。シェリアちゃんはこのゲームの中では悲惨なエンドしかない」
「じゃあ、エリック君はどないしたいの?」
「……俺は。シェリアちゃんが憧れで一番好きなキャラでした。だから、助けたいんです。悲惨なエンドから」
「ふーむ。シェリアちゃんを助けたいなあ。でもどうやって助けるんや。それはちゃんと考えてるんか?」
俺はうっと唸る。正直、シェリアちゃんを助けるには俺以外の奴と婚約してもらう事しか考えていなかった。
「……俺、シェリアちゃんとはいずれ婚約を解消しようと考えています。後、スフィア侯爵とフェリシア妃をどうにかしないとシェリアちゃんや主人公のアリシアーナの身が危うい」
「確かにそれはそうやな。わかった、あたしも協力する」
「……母上が言うんだったら。僕も協力するよ。でシェリア殿の事はいずれ僕が引き受ける。それでいいか?」
「……叔父上。わかった。シェリアちゃんをよろしく頼む」
俺とラウルはがしっと握手した。スズコ様も良かったわあと嬉しそうにしていたのだった。
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