12話
俺とラウル、スズコ様が協力すると言ってから一週間が過ぎた。
スズコ様はラウルを連れて俺の自室にまで来てくれた。今日がそうだ。
そういや俺が記憶を取り戻してから一カ月が経ったな。
そんな事を思いながらスズコ様とラウルにソファを勧める。リアナが紅茶とお菓子を2人に出す。
「ありがとうな。リアナさん」
「……いえ。スズコ様、殿下に会いにいらしたのは珍しい事ですわ。何かございましたか?」
「……いやあ。ちょっとな。ラウルと王宮ではぐれてもた事があって。それで殿下が一緒に探してくださったんよ。それでお礼を言いに来たんやけどね」
「まあ。ラウル様とはぐれてしまわれたんですか。そこを殿下が助けたと」
「そういう事になるな」
スズコ様が頷くとリアナは感激したらしくハンカチを取り出して目元を押さえた。
「……そうでしたか。あのわがままな殿下が人助けをなさるとは。大きくなられました」
「リアナさん?」
スズコ様がおずおずと言うとリアナは目元を拭きながらすみませんと謝る。
「いえ。ちょっと感動してしまいました。殿下、これからもスズコ様とラウル様とは仲良くしてくださいね。お2人共、殿下をよろしくお願いします」
リアナは深々と頭を下げる。スズコ様は慌てて頭を上げるように言った。
「リアナさん。そないにあたしやラウルに気を使わんでええんよ。でも殿下とは仲良くさしてもらうわな。あなたのお願いを無下に断るのも悪いし」
「……ありがとうございます」
2人は子を持つ母親という共通点があるせいか分かり合える部分があるようだ。ちなみにリアナは2人の子供がいて上の子が7歳、下の子も5歳である。旦那もいて仲が良い。
「リアナ。その。ちょっと席を外してくれないか。スズコ様とラウル叔父上と3人だけにしてほしいんだ」
「わかりました。人払いはしておきますね」
頷くとリアナは部屋を出て行く。俺の代わりにラウルが以前と同じく防音魔法をかける。念には念をと言ったとこか。
「……これで誰もおらんようなったな。さて、エリック君。この間、スフィア侯爵やフェリシア妃の事を言ってたけど。あたしやラウルで調べてみたんよ。そしたらな、ちょっとわかった事があってん」
「何でしょうか?」
「まず、スフィア侯爵な。あの人、どうも税金を不当に徴収したりサギにまで手を出しとうみたいや。後、貴族の若い女の子を誘拐して奴隷として売ったり。まあ、かなりの悪人や」
「……そうですか。思ったより過激というか」
「そやなあ。スフィア侯爵をどないかせなと君が言うとったけど。でもシェリアちゃんは処刑されると言ってたな。もしかしてシェリアちゃんのエンドと侯爵は何か関係があるんかな?」
なかなか鋭い所を突く。さすがはラウルのお袋さんだ。
「ええ。シェリアちゃんのエンドにスフィア侯爵は密接に関係しています。何せ、主人公のアリシアーナを誘拐させて殺害するようにシェリアちゃんに指示するのは。侯爵ですからね」
「そうなんか。じゃあ、侯爵は叩けばホコリが色々と出るな。そしたら、あたしも陛下に言っとくわ。スフィア侯爵はちょっと怪しい所がありまっせって」
「……え。親父に直接言うのか。まあ、スズコ様の言う事だったらきく耳は持つとは思うけど」
つい、うっかり2人の前で親父と言ってしまった。俺は慌てて訂正しようとしたが。
「ははっ。エリック君。親父って。王子様なんやからせめてお父さんくらいでええんちゃうの!」
「……エリック。陛下を親父呼ばわりか。まあいいけど。僕の事も叔父貴とか呼んでたりするのかな」
スズコ様は爆笑してラウルは微妙な顔になっている。ああ、言うんじゃなかった。
「……あー、おかしい。日本の若い男の子じゃあるまいし。でも陛下の前ではちゃんとした方がええで」
「……はい」
俺は神妙に頷いた。いくら何でも国王を親父と呼ぶ奴は俺くらいだろう。
「まあ。それは置いとくとして。フェリシア妃の事も調べたんや。あの人も第三妃のサラ様に色々と嫌がらせをやっとうみたいでな。サラ様のお部屋に毛虫がうじゃうじゃ入ったプレゼントを贈ったり大事にしとった扇子を盗み出して壊してもたり。陰湿なやり方でやられとったと聞いたわ」
「成る程。酷いことをしますね」
「ほんまや。あたしもそれは思うた。フェリシア様も性格が悪いな」
2人して頷きあう。ラウルも頷いている。
「エリック。僕も個人的に調べてみた。フェリシア妃はお前の弟であるケビン王子に誰も信用するなと教え込んでいるようだぞ」
「ふーむ。叔父上も調べてくれたんだな」
「ああ。後、第一王女で妹のシュリナ様にも冷たく接しているらしい。お前など生まなければ良かったとか男であれば良かったのにとか言われるのが。日常茶飯事だと聞いた」
何か聞けば聞くほど状況は甘くない。まさか、ケビンやシュリナに対してもそんな事をやっていたとは。こりゃあ、親父とお袋に言わないといけない事案だな。
仕方なく俺はスズコ様とラウルと話し合い、親父とお袋に報告をすると決めたのだった。
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