第四話 風雲、急を告げる
この時期の雨は長引くため、
自身の行為にそう思った晴明は、
彼の前には両腕を組んで、
長身で青い髪に青い
その表情はといえば
「立っていないで座ったらどうだ? 青龍」
『なにをしている?』
「――だったら食うか? 黴が生えてはいるが」
再び餅菓子を出して青龍に差し出すと、彼の
『俺が聞いているのは、なにゆえ〝あれ〟を
「あれとは?」
『まさか、本当にわかっていないのか?』
青龍は、目を
「青龍、お前らしくないな。いつもなら、はっきり言ってくるお前が」
『俺たちにも、あれの正体がわからないからだ。俺たちの敵となるのか、ならないのか』
青龍に寄れば、姿なき
幽鬼騒ぎに振り回されて危うく忘れかけていたが、青龍が妖気を感じたという妖は、
青龍にすれば、十二天将である自分たちが妖に気づいて、主である晴明がなぜ気づかないのかと言いたかったようだ。
結局――、青龍が口を閉ざしたまま
気をつけろ。あいつがくる。
あいつが
気をつけろ。
気をつけろ。
晴明は、
そこに、なにかの気配を感じたからだ。しかしそこにはなにもなく、 雨が吹き込んできた。濡れるのが嫌だった晴明は
◆
その
その華は点々と咲き、やがてそこには白い
華の名前は
その華を
「まったく、おかしなことが起きるわぃ……」
大内裏は
「青い
忠行の
そろそろ
「そなたはどう見る?
「彼岸花にはもともと毒がありますが、生えているだけなら、さして問題ではないかと」
「じゃが、
確かに忠行の言う通りである。
しかもである。その華の近くに、骸が転がっているのだ。
考えられるのは――。
忠行が
「父上?」
「どうやら、正体不明の妖が入り込んだようじゃのぅ。保典」
保憲は
「ではすぐに、晴明に」
「いや……」
「なにか? 父上」
「晴明は、内裏での
その晴明は、
別名・
(いくらなんでも、まだいないか……)
昨夜の土砂降りによって、飛香舎の地も乾いてはいなかった。
七年前まで、ここには笑顔があったという。長い髪を
そしてその
はたして
なにゆえに――。
晴明は、弾かれるように視線を上げた。
さぁ――……と音がする。
雨など降っていないのに、雨が降る音がする。
なにゆえに――、われは。
「なんだ……?」
どこからともなく声が聞こえたが、それはすぐに聞こえなくなった。
晴明の背を、嫌な汗が流れる。
もしかすると、とんでもないモノを誘い出してしまったのではないか。
その勘だけは、消えることはなかった。
◆◆◆
大内裏から帰宅した晴明は、
『なにか、あった? 晴明』
晴明はいつもの
風を
「……
『まさかそんなことで、そんな顔をしているわけ?』
「……?」
視線を
晴明は陰陽師、
『ここに
太陰は自分の
「ただの
晴明の視線は太陰から離れ、式盤に戻される。
『なにも
晴明の話はこうだ。
内裏に、正体不明の幽鬼が
占いによれば、日付は今日の
「結局は、幽鬼は表れなかったが――」
『が――?』
『青い彼岸花が咲いていた……。これも二度目だ』
『確かに
「なにゆえと……」
『え……』
太陰は、思わず
『
晴明はそういって、両腕を組んで眉を寄せた。
聞けば昨夜、青龍がやって来たという。
いつもの
そして太陰と青龍もまた、その声を聞いているのだ。
なにゆえ――と。
『晴明――、あのね……』
妖が潜んでいるかも知れないことを告げようとして、太陰は口を
ただ、晴明のその嫌な予感は当たるだろう。はたして、何が出てくるのか。
神である
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