第140話 Side - 15 - 78 - とあるよるのかいわ よん -
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「どうだった?、インフィニちゃんの所の息子の結婚式」
「あぁ、料理がうまかったぞ、あの国の料理は大陸一だろうな」
「いや、料理の話じゃなくて・・・」
「・・・相手の令嬢が護衛の男と駆け落ちしようとしただけで妙な陰謀や他国からの妨害工作のようなものでは無かったようだ」
「そうか、良かったな」
「インフィニちゃんからお前に伝言を頼まれたぞ、「時間ができたらまた3人で集まってお食事でもしましょう」だとさ、これまでは遠くてなかなか会えなかったが、今はリゼちゃんが居るから頼めば2人をラングレー王国に転移させてくれるだろう」
「俺も久しぶりにゆっくり話がしたいしな、最後に3人で遊んだのは・・・インフィニちゃんが女王として即位する前の年だからもう随分前になるか」
「そうだな、お互い責任のある立場だし、忙しいからな」
「それはそうと、令嬢の処遇はどうなったんだ」
「結果的には不問になった、インフィニちゃんが彼女にえらく同情していてな、貴族の籍を抜けて平民としてスタンザ帝国の領地で暮らすそうだ、護衛の男と結婚するらしい、令嬢の両親や兄弟は彼女を溺愛しているようだから結婚しても経済的な支援が受けられるだろう」
「それは寛大過ぎないか」
「私もそう思った、だが望まない結婚をさせられそうになった可哀想な令嬢・・・その原因を作ったのが婚約話を持って行った自分・・・そう思ったのだろうな、私まで巻き込んでスタンザ帝国の皇帝を納得させた」
「・・・彼女は相変わらずやる事が無茶苦茶だな」
「それに、スタンザ帝国に高速鉄道を作る話は当初の予定通り進めるらしい、今まであまり話していなかったがスタンザ帝国の皇帝はなかなかに性格が良いし面白い男だった、私は気に入ったし意気投合してな、これからはもっとお互いに交流を行おうという事になった」
「そうなのか・・・目立たない地味な皇帝だと思っていたが・・・」
「話を聞いているとあまり我が強い性格ではないし外交が苦手なようだ、だから他国との交流より自分の国を豊かにする事に重きを置いた政治をしている、自国をまとめる手腕は大したものだぞ、頭も切れるし国民の人気も高い、互いに親しくなれたのは今回の収穫の一つだな」
「そうか・・・上手くまとまって一件落着だな」
「あぁ、一時はどうなる事かと思ったぞ」
「リゼちゃんの件はどうなった?、私をローゼリアに転移させに来た時、えらく機嫌が悪かったようだが」
「そうだな、屋敷に戻った娘から詰め寄られた、「話が違う!、私は聞いてない!」だとさ」
「言わなかったお前が悪い」
「待て!、言えば娘は協力してくれたかどうかも怪しいんだぞ」
「そうだよな・・・これから毎日、朝昼夕方こことギャラン大陸を転移・・・しかも何年もだからなぁ」
「娘が不機嫌な理由はそれじゃない・・・いやもちろんそれも不満そうだったが・・・転移させる対象がいかつい男ばかりって事だ、耐えられないらしい」
「相変わらずの男嫌いだな・・・」
「嫌いなんじゃない、怖がってるんだよ、昨日から娘はお腹痛い、引き篭もりたいと泣いて宥めるのに大変だった」
「報酬は払うし、騎士達には彼女に話しかけるな、ちょっかいを出すな、興味を持つなと厳命する予定だ、それでもダメか?」
「その報酬の話だがな、1日に金貨100枚は多過ぎる、要らない、どうしてもと言うなら1日30枚、それ以上は受け取れないって言ってるぞ」
「何でだよ?、働きに対する正当な額だ100枚でも安いかなと思ったのだぞ、金はいくらあっても良いだろうに・・・だがこれは国の重要な事業だ、タダで働かせる訳にはいかないぞ、お前が代わりに受け取るか?」
「俺も要らん、毎年増え続ける資産に頭を抱えてる状態だ、何をしても減らないんだぞ!、娘が嫌がるのは先生・・・ドック氏からの入れ知恵らしい、儲け過ぎるとアレに掲載されて王国中に公開されるだろ、絶対に嫌だそうだ」
「王国長者番付か・・・」
「そうだ、金を稼いだ順番に金額と名前が公表される、俺は毎年1位だが・・・」
「あぁ、そうだったな、国王の私は今年7位だったぞ、お前凄いな」
「ちなみに妻は8位だ、「リーゼ」の売り上げが絶好調で笑いが止まらないらしい、親子3人が10位以内になると俺としても流石にまずい、面倒な奴らに目を付けられるし恨みを買いそうだ」
「そう言っても受け取ってもらわないと官僚や大臣達に予算の説明がな・・・私が横領したみたいに疑われると面倒だ」
「俺もそう言ったんだが・・・娘が言うにはどうしても受け取らないといけないなら自分の取り分、金貨30枚の残りはギャラン大陸の困っている民衆に食糧援助か医療援助でもしてやってくれ、だとさ」
「どこの聖人だよお前の娘・・・本当に優しい子だなリゼちゃんは・・・」
「いや・・・先生と転移した先の貧しい村で困窮する人達の惨状を見たらしい、自分では全員を助ける力が無いからその時は見捨てたらしいが・・・」
「(ニヤリ)」
「待てよ!、お前悪い顔になってるぞ、何を閃いた」
「いや、あそこの大陸の住人は貴族に対して強い恨みや不信感を持ってる、我々もその誤解をどう解くか悩んでいてな、困窮する民を救う為に私財を投げ打って援助する聖人・・・いや聖女って言うのはどうかと思ってな・・・多分嫌がるだろうが・・・」
「間違いなく嫌がるだろうな・・・まだ長者番付に載る方がマシだと言いかねない、却下だ」
「まぁ待てよ、その方法だと私が今まで頭を悩ませていた問題が全て片付くのだ、ぜひ協力してほしい」
「俺の口からは言えない、お前が言え、これ以上娘に嫌われたら泣きそうだ」
「リゼちゃんはギャラン大陸を嫌っているだろう、用事が無い限り近付きたくない・・・そう言ってたよな」
「あぁ、ギャラン大陸怖い、行きたくない、悪い奴らがヒャッハー!する修羅の大陸だ・・・とか意味の分からん事を言っていた」
「なら問題ないだろう、本人の知らない所で聖女になっていてもバレなきゃ全く問題ないし、彼女に言って機嫌を損ねる必要も無いだろう、私としてもこれ以上リゼちゃんに嫌われるのは嫌だ、これから転移で何度も向こうに送ってもらうし頻繁に顔を合わせる事になるからな」
「俺はバレた時が怖い、「お父様大嫌い」なんて言われたら私は・・・私わぁぁぁ!」
「落ち着け、彼女は基本的に引き篭もりだ、ギャラン大陸の街に将来自分の銅像が建っていても気付かない確率が高い」
「そうだろうか・・・」
「そうだぞ」
「ほい、転移・・・お疲れ様でした・・・」
「助かるよ、騎士団の連中も久しぶりにローゼリアに戻れて嬉しそうだ」
「うん・・・それじゃぁまた明日」
「お疲れさん」
ギャラン大陸の拠点となるお屋敷に魔法陣を設置してから3日、私は約束通り朝昼夕方の1日3回、ローゼリア王国の騎士団本部とギャラン大陸の拠点を行ったり来たり・・・近衛騎士団長さん、見た目はいかついけど物腰が柔らかいから少しだけ普通に会話できるようになったのです、いつまでも怖がってちゃ印象悪いだろうし・・・。
リィンちゃんはラングレー王国に放置・・・陛下はローゼリアの王城に送ったのだけど、リィンちゃんは100日程かけて最初の予定通り各国を回りつつローゼリアに帰ってくるのだとか。
「何でよ!、私も転移して早くお家に帰りたい!」って泣き出すリィンちゃん、陛下が言うには帰路となる国々でも歓迎式典が予定されていて今更中止にはできないらしいのです。
立ち寄る宿にもお金が落とされるし、超大国のお姫様であるリィンちゃんを一目見ようと押し寄せる民衆で莫大な経済効果になるのだとか。
それならリィンちゃん諦めてのんびり帰って来てよ、って冷たく言ったら私の護衛騎士になったのだからリゼちゃんも一緒に居るべきだと最後の抵抗・・・。
陛下に説得されてもまだ不満気なリィンちゃんを置いて私は一度コルトの街へ、そうなのです、身の危険は去ったけど、お屋敷には戻らずこのコルトの街を拠点にして生活できるようになったのです!。
お父様に毎日3回何年も騎士様をギャラン大陸に転移させるなんて聞いてない!、って泣きながら詰め寄った結果、交換条件として私はずっとコルトの街で暮らしてもいいと言う事になりました。
但し数日おきにお屋敷で過ごさないとお父様が泣いちゃうので時々帰る事にしているのだけど・・・。
さて、コルトの街でお店を開く準備をしないと、それにクックさんの腕のリハビリに、博士に頼まれた呪いで苦しむ令嬢の為にスーツを作って、オーニィ商会へ納品する魔法陣の設計もやらなきゃ、それからラングレー王国のカルタスの街に拠点となるお家を購入して・・・。
日本に戻ったらコナンザと遊んで、バンドのみんなと曲作りやリハーサル、・・・あれ?、何で私こんなに忙しいんだろう・・・。
『小娘よ、もう小遣いが無いのじゃ、金貨10枚ほど頼むのじゃ!』
「この化け狐・・・あ、そうだ、リィンちゃんのお部屋にもシロさんの神棚を設置しないと・・・」
「おーい!、リゼル!、店の外壁塗り、手伝いに来てやったぞ!」
「あ、トシの兄貴!、ちょっと待ってて、すぐ行くよー」
「はぁ・・・リック様ぁ・・・」
私の護衛のシャルロットさんは私が引き続きこのコルトの街に滞在すると知って大喜び、そうだよね、この間遂にリックさんに求婚されたんだもんね・・・私がここに滞在するって決めた理由のうちの一つは・・・そう、シャルロットさんの恋を応援する為でもあるのです!。
「さて、長かったようで短かった宰相の事件は片付いたし、これから楽しい事いっぱいできるかな」
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