第141話 Side - 15 - 79 - おみせができたのです! -

Side - 15 - 79 - おみせができたのです! -



「トシの兄貴、高い所お願いできる?」


「おぅ、任せとけ」


「よいしょ・・・おっと」


「リゼル君!、無理っす!、左足が動かないのにそんな所に登ったら危ないっすよ!」


「だって僕のお店だから・・・少しでも自分でやりたいの、それに腕輪があるから大丈夫」


「私達は外をやりますからリゼル君は商品の準備をお願いするっす!」


「えー、でも・・・」


「お願いするっす!」


シャルロットさんの「圧」に負けて私はお店の中に・・・。


私達はコルトの街でお店を開く準備をしています、ギャラン大陸から戻ってすぐに内装工事を始めて、シャルロットさんとトシの兄貴に手伝ってもらい私のお家の横にある納屋を店舗に改装しています。


私のお家には広い庭が付いていて、そこに大きな納屋があるのです、前の持ち主さんは庭の手入れをする道具や収穫した野菜を保管する為に使っていたようで、基礎や外壁が頑丈に出来ていたのでここをお店に改装する事にしたのです。


内装は自分達では無理だったので街の大工さんにお願いして内壁や床を新しく作ってもらいました、壁は清潔感のある白、床は淡い木目の板張りで、カントリー調にしてみました。


外壁塗装だけでも自分の手でやりたかったから、そこは大工さんに残してもらってたのに・・・。


シャルロットさんは私の護衛だから心配するのは分かるけど・・・ちょっとだけでもやりたかったのです。


「兄貴が手伝ってくれたから思ってたより早く終わりそう」


トシの兄貴は私達が納屋で色々やっているのを見て何かと手伝ってくれています、私の中では「トシのクソ野郎」から「トシの兄貴」に昇格したのです。


お店に設置する棚やショーケースについては私とお母様のお店、「リーゼ」の時にお世話になった商会が店舗用の設備を取り扱っているのでそこに発注してシェルダンの王都邸に届けてもらったものを私が転移させて持って来ました。


お店のカウンターの横には転移魔法陣が設置してあって、外に出なくても私の寝室から直接お店に移動できるようになっています。


「ふぅ・・・こんな感じかな」


「おーい、リゼル!、外壁の塗装終わったぞ」


「早っ・・・すぐ行くよー」






「わぁ・・・」


外に出ると・・・納屋だったとは思えない可愛いお店が完成していました。


建物の外壁は真っ白、屋根は濃い青、ドアや窓枠は青に近い薄いグレー・・・私の瞳の色なのです!、看板はまだ無いけど、軒先に「リゼルの薬草店」って書いて吊るす予定です。


お店の中は木を使った棚と水晶で出来た透明なショーケース、うん、可愛く出来たのです。


「忙しくて準備に手間取ったけど、ようやく完成したのです!、僕のお店・・・」


「やりましたね、リゼル君」


「あぁ、どうなる事かと思ったがよく出来てるな!」


「2人ともお家のテラスに来てよ、お礼にハーブティとケーキをご馳走するから」






「美味しいっす!」


「うめぇ!」


日本で買ったスーパーのモンブラン・ケーキだけど・・・。


「準備も終わったし、明日からいよいよ開店なのです」


「この街のお医者様に挨拶に行ったらとても喜んでたっす」


「あの爺さんが喜んでたのか・・・まぁそうだろうな、今まで不便だったんだぞ、まともな薬屋が無いから急に必要になった時は隣町まで買いに行ってたからな」


「僕は身体が弱い設定だからしばらく1日おきの午前中だけ営業する事にしたのです、他にお仕事もあるからね・・・」


「設定なのかよ!、それにリゼル、他の仕事って何だ?」


「色々あるのです・・・」


「何だよ、教えてくれたっていいだろ」


「・・・ある商会と共同で魔道具を開発したり、・・・まぁ色々あるのです」


「魔道具?・・・、お前実は凄い奴なんだな」


「そうなのです!、僕は凄いのです!」


「ハハハ・・・まぁいいか、じゃぁ俺は帰るぜ、またな」


「今日はありがとう兄貴」


そう言いながらトシの兄貴は家に帰ってしまいました、また借りが増えたのです・・・。






「でも素敵なお店になったっすね」


「うん、僕の理想を詰め込んだのです、お店の裏庭で薬草が順調に育ってるから材料の心配は無いし、でも調薬する時間があまりとれないのです」


「リゼル君忙しいっすからね」


「この街でスローライフを満喫する予定だったのになぁ・・・」


そう・・・、朝起きて騎士団の人達や物資を王城からギャラン大陸に転移させて、ここに戻ってお店を開きます、お昼にはお店を閉めてギャラン大陸から王城に物資を転移、お昼からはクックさんの腕のリハビリとオーニィ商会のお仕事、夕方にはまたギャラン大陸へ・・・あぁもう!、忙しいのです!。





そんな事を考えている間に夜になって、お店の中で明日の段取りをシャルロットさんと打ち合わせていると・・・。


「お嬢様・・・」


「うわ、びっくりしたぁ!」


突然私の背後から男の人の声がしたのです、シャルロットさんも気付かなかったのか、慌てて臨戦体制に・・・。


「・・・じぃじ?、わぁ、じぃじだぁ!」


私の後ろには懐かしい顔・・・私が10歳の時に引退、領地で暮らしている筈の「じぃじ」、シェルダン家元執事長、オーイヴォ―レー・アッツ―シーが立っていたのです。


「どうしたのじぃじ、元気だった?」


「はいお嬢様、お嬢様のお店が完成したと旦那様から聞いてお祝いに・・・」


「ありがとう、じぃじ」


私は嬉しくて昔のようにじぃじに抱き付いています、わぁ・・・懐かしい薬草の香り、じぃじの匂いだぁ。


「ほっほっほ、それに可愛い弟子の腕が衰えていないか確認に参りましたぞ」


「・・・じぃじ、あれからいっぱい勉強して医療免許や調薬免許も取れたの、もう一人前だよ」


「それは良かった、お嬢様もお元気そうで何より・・・では少しお薬を拝見致しましょう」


「うん、見て見て!、これはね、私の自信作で、それとあっちにあるのはね・・・」


「・・・なるほど、また腕を上げましたねお嬢様、じぃじは嬉しいですぞ」






じぃじに私が作ったお薬を見てもらっていると・・・。


「あの、リゼル君・・・その人は・・・」


あ、嬉しくてシャルロットさんを放置してたのです。


「ごめんねシャルロットさん、紹介するよ、僕が10歳の頃までお世話してくれてた執事長のオーイヴォ―レー・アッツ―シーさんだよ、今の執事長、セバスチャンさんのお父様で、小さい頃とても可愛がってもらってたの、それに僕の調薬のお師匠様」


「え・・・元執事長・・・アッツーシー・・・ど・・・毒蛇?・・・」


どうしたのかな、シャルロットさんが真っ青になって震えているのです。


「おやおや、護衛の方ですかな・・・お嬢様、じぃじは少しこの騎士様とお話があります、お借りしても?」


「うん、いいよ」


「ひぃっ!・・・」


あれ、シャルロットさんがとても怯えているのです、生まれたての動物の赤ちゃんみたいに足が震えて・・・。


「では参りましょう・・・」


「い・・・いやぁ・・・リゼル君、嫌っす・・・一緒に・・・」


「僕に遠慮しないでお話しして来なよ」


そしてシャルロットさんはじぃじと裏庭に行ってしまいました、何であんなに怯えてるんだろう、じぃじ、とっても優しいのに・・・。






「お前は儂(わし)の事をどこまで知っている?、知っている事を全て話せ」


「あぅ・・・シェルダン家の元執事長というのは表向きの姿で・・・元王国騎士団特殊暗殺部隊隊長、・・・代々シェルダン家に仕えているローゼリアの毒蛇と呼ばれる毒使い・・・そして大陸中から恐れられている暗殺者・・・です」


「うむ、今は引退して全ての肩書きに「元」が付く、儂の裏の顔は表世界の人間には知られていない筈だが・・・旦那様から聞いたのか?」


「・・・いえ、私の家は代々シェルダン家に仕える騎士を多く輩出しています、父親・・・ブルナカノン家現当主から・・・噂だけは聞いておりました」


「そうか・・・」


シュッ・・・


あぅ・・・


「・・・お前は隙だらけだな、何故今の儂の攻撃を避けなかった?、その刃に毒が塗られていればお前はもう死んでいる、それに儂が部屋に入った事にすら気付かない・・・そんな事でお嬢様をお守りできると思っているのか」


「ひぅ・・・も・・・申し訳・・・」


「謝らんでいい、今後は身を引き締めて全ての災いからお嬢様をお守りするのだ」


「はい・・・」


「話は以上だ、では戻ろうか・・・」






じぃじ達が裏庭から戻って来ました、私はじぃじの分のお茶とケーキを用意してお家のリビングに場所を変えてお話の続きをしています。


「ねぇ、じぃじ、領地でのんびり過ごしてるってお父様から聞いたけど、何してたの?、ゆっくり療養できた?」


「ほほほ・・・のんびりと過ごしておりましたよ、趣味の「釣り」や「狩り」を楽しんでおりました、そうそう、別の大陸にまで赴いて獲物を狩り尽くした事もありましたな」


「わ、凄いねじぃじ、楽しそう、今度連れて行ってよ」


「そうですな、いずれ機会があればご一緒しましょう」


「わざわざここまで来てくれたのはお祝いの為だけ?、もしかして・・・お父様が無理を言ってここに来させたんじゃないよね」


「いえ、来年お嬢様がこの街や王都に大切な「日本」のご家族やご友人を招待すると聞いて身の回りの「お掃除」でもさせて頂こうかと思いましてね、しばらくこの街の宿屋に滞在する事にしております」


「じぃじにそんな事させられないよ!、家のお掃除はシャルロットさんと分担してちゃんとやってるのです、この街はとっても綺麗で食べ物も美味しいの、ここではのんびり過ごして欲しいな」


「それは楽しみですなぁ」


あれ、まだシャルロットさんの顔色が悪いのです、お腹減ってるのかな?。





※近況ノートにイラストを追加しました。


リゼル・フェルドくん(リゼルの薬草店Ver)

https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/16817330667968317719


リゼル・フェルドくん(リゼルの薬草店+コートVer)

https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/16817330667968362929


コルトの街のリゼルのお家(敷地全体)

https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/16817330667968414251


コルトの街のリゼルのお家

https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/16817330659317776843


コルトの街のリゼルの薬草店https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/16817330667968452190




(柚亜紫翼からのお知らせ)

「〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜」

1〜18話まで加筆修正を行いました。

特に1〜3話までは新しく書き直しています。

人生初の小説投稿、当時は頑張って書いたのですが、今読むと気になる箇所が沢山ある為、修正を行いました。

尚、投稿が不定期になり始めたので、できれば小説をフォローして次の投稿をお待ちください。

今後とも応援よろしくです。

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