第139話 Side - 15 - 77 - まほうきしいれいなーさんのゆううつ -

Side - 15 - 77 - まほうきしいれいなーさんのゆううつ -



「な・・・なんですかぁ!、このえっちな服は!」


「魔法騎士団長専用の新しい制服だ、耐久性と動き易さを重視した斬新なデザイン・・・と陛下は仰っていたな、着用した感想を聞きたいらしいから早く着替えろ」


「・・・い・・・嫌です、こんなの恥ずかしい・・・」


「貴様は陛下が直々に「リーゼ」に依頼し、特注品として完成した制服を着るのが嫌だと言うのか、それに以前からヒラヒラしたスカートは動きにくいから改善して欲しいと言っていたではないか!」


「え・・・リーゼってローゼリア王国の?、あんな人気ブランドが何で騎士団の制服なんか作るんですかぁ!」


「制服なんかとはなんだ!、あの店はドレスや下着はもちろん運動着も作っている、ローゼリア王国の魔法騎士団にもローブを作っているのだぞ、値段はそれなりにするから上官向けのものが殆どだがな」


「・・・え、そうなのですか?・・・ってそんな事はどうでもいいのです!、これは恥ずかしいです、お尻や太ももの形がはっきり分かるではないですか」


「安心しろ、うちの騎士団に幼女に欲情するような変態は居ない・・・いや居なくはないだろうが、少なくとも態度に出すような奴はいないだろう、もし居たら俺に言え、根性を叩き直す」


私は今、お城の騎士団本部で総長とお話ししています、私の目の前にいるのは我がラングレー王国騎士団総長、ヒョウ・リュウケーン様、鎧のように引き締まった筋肉と鋭い目をした・・・我々騎士団を統括する上司です。


「私は幼女ではないです!」


「見た目は幼女だろうが!」


ドン!


「ひぃっ・・・」


「文句を言うな!、貴様は先日リーゼロッテ嬢を敵と勘違いし、自爆しようとしただろう、その件の罰だと思え、恥ずかしい制服を着て自分の愚かな行動を反省するのだ、とっとと着替えて来い!」


「わぁーん!、総長も恥ずかしい服って思ってるんだぁ!」






「ひっく・・・ぐすっ・・・着替えましたぁ・・・」


「ほう・・・似合ってるじゃないか」


「下着の線がちょっと見えます、これ寒い時期に毛糸のパンツ履いたら下着の形がはっきり見えて恥ずかしいです!」


「下着を履かなければいいだろう」


「なっ・・・本気で言ってます?」


「俺が冗談を言った事があるか」


「無いです・・・でも・・・でもぉ・・・」


「これを作ったのはリーゼロッテ嬢でな、軍隊用に防寒、防熱、防水の魔法陣を布の裏地に刻んでいる、漏らしても染みて来ない優れ物だから安心しろ」


「お漏らしの心配なんてして無いですぅ!、・・・そもそもこの服の生地見た事ないですけど、何で出来てるんですか、サラサラで伸縮性がやけにいいですけど」


「俺も詳しくは知らん、「リーゼ」の企業秘密だそうだ、運動する時に着る服で「レギーンス?」と言うらしい、これから大陸中に普及させたいようでな、営業にも力を入れているそうだし今度ローゼリアの騎士団にも新しい制服として同じものを納入すると言っていたな、喜べ、うちの方が先に採用された」


「ローゼリアの騎士団と同じだと問題があるのでは?、紛らわしかったり、間違えたり・・・」


「ローゼリアとは色違いだから問題無い、それにあそこはうちとは同盟関係だし友好国だから戦争になる事はまず無い」


「・・・」


「他に質問は?」


「ないです」







「あらあら!、可愛いわイレイナーちゃん、よく似合ってる、リゼちゃんにお願いしてうちにも分けてもらった甲斐があったわね、着心地はどう?」


「はい、よく伸びるし身体にピッタリとしていて動きやすいですが・・・少し恥ずかしいです」


「えー、可愛いのに・・・まぁ、慣れれば問題ないわね、今は2着しか届いてないけど、それで修正箇所が無いなら予備として10着ほど作ってもらうわ、今はイレイナーちゃんだけになるけど、騎士団の上官達は順次新しいのに入れ替える予定なの」


「・・・」


騎士団総長から陛下が着心地を聞きたいそうだと言われ、陛下の執務室に向かいました、お部屋の中に入った私を見て陛下はとても喜んで頂いて・・・あぅ、これ着るの嫌だって言おうと思ってたのに、そんなに喜ばれたら言えない・・・。


「実はね、この前ローゼリアの国王陛下とお話ししてて・・・あ、その時にリゼちゃん・・・リーゼロッテさんも居てね、ローゼリア王国で新しい騎士団の制服ができるって話になったの、それでうちも一新したいなーって思って作ってもらえないか相談したら了承してくれたのよ、それは新開発の素材を使ってて、内側に魔法陣が刻まれてるから暑さや寒さにとても強いの」


「ローゼリアの騎士団もこの恥ずかしい・・・いえ!、新開発の制服を着るのですか?」


「値段が高いから上官の制服だけらしいわ、上の服は色の違いだけで殆ど同じよ、ローゼリアは黒地に金糸の刺繍だから印象がかなり違うわね、でも貴方の下の制服は私とリゼちゃんが共同でデザインした特別製なの、標準のものはもう少しゆったりしたズボンになるわ」


「え・・・何で私だけ・・・私もズボンがいい・・・」


「イレイナーちゃんが着てるのはこれから子供向けに売り出す運動用のお洋服で「レギーンス」って言うんだって、今は女の子の運動服ってスカートか、動きにくいズボンしかないでしょ、楽で部屋着にもなる運動着って宣伝して売り出すみたい、大人向けも開発してるようだけど流石にスタイルのいい女性騎士がそれを着たら男性騎士達が目のやり場に困るでしょ」


やはり陛下もこの服がえっちだと思ってましたぁ!。


「・・・あの」


「それにね、普通だったらもっとお値段が高かったのだけど、試作品の耐久試験っていう事で半額以下にしてもらったのよ、だから着心地や気になった所をレポートにして提出してね」


「・・・」


あぅ・・・もう陛下の中では私がこの服を着る事が決定事項になっているようです・・・恥ずかしいけど・・・諦めるしか無いのかなぁ・・・。






「おはようございます、・・・だ・・・団長!、何ですかその姿は」


「みんなおはよう、・・・何って・・・新しい制服・・・(ぼそっ)」


わぁ・・・みんな私を見てる・・・私の恥ずかしい姿が見られてる・・・もうやだ、消えて無くなりたい・・・。


「わ、すごく似合ってますよ団長、可愛い!」


「それが新しい制服っすか、可愛いな、おいみんな見ろよ、団長超可愛いぞ」


「何だ!、何の騒ぎだ・・・おぅふ・・・」


え、どうして副団長、私を見て固まったの、それに前屈みになって・・・。


「きゃぁ、団長可愛いわぁ、お持ち帰りしたい!」


「団長の可愛らしさが目一杯引き立てられている素晴らしいデザインだ」


「え、これってあの「リーゼ」の特注品なの!、普通のお洋服が夜会のドレスくらいするっていう・・・」


フルフル・・・


「ぐすっ・・・」


「え・・・何で団長泣いてるんです?」


「団長泣かないで」


「みんな団長を励ませ、おいそこ、頭は撫でるな!、気安く触るんじゃない!」













「おい!、うちの会社、買収されたって本当か!」


「分からん、今役員が会議室に集まって何か話し合ってる、経営が苦しいって聞いてたけど急だな」


「どこに買われたんだ、それに俺らは解雇って事にはならないよな」


「それも分からんな、管理職の俺まで情報が来てない、昨日からうちの部署の連中が問い合わせてきて大変だった、こんな事になるならこの前の希望退職募集に手を挙げておくんだったな・・・」


「大変だな、中間管理職・・・お前とは同期だが昇進してなくてよかったよ」






「お、うまそうだ、今日の昼定食はチキン南蛮か」


「うまいぞ、それにおばちゃんが大盛りにしてくれた」


「俺もそれにするか」






「うまいな」


「あぁ」


「一昨日のうちが買収されたって話な、あれの詳細が分かったぞ」


「どうなった、情報が錯綜して他の連中も仕事が手につかないし、取引先からの問い合わせにもどう答えていいか分からん」


「買収先はアメリア・セーメイン・グループだ、今のうちの親会社が手放したらしい、あの企業の傘下に入って社名はそのまま残る、スポーツウェアのデザイン業務もそのまま続ける、うちの雇われ社長は今60歳近いから退職金をたんまりもらって退くらしい」


「そうか、親会社が変わるだけか、大事にならなくて良かった・・・アメリア・セーメイン・グループ・・・あまり聞かない名前だな」


「主に投資や不動産を手掛けてる会社だがスポーツ用品の製造販売にも力を入れてるらしい、それもあってうちが買われたようだ、海外の有名メーカー、「ニケ」や「クーマ」とも提携しているぞ」


「ほぉ・・・でかい企業なのか」


「あぁ、日本じゃそれほど有名ではないが、海外では「A.S.G.」という名前で金の取引や投資を手広くやっているらしい」


「そうか・・・うちの体制が変わらなくて安心したよ」


「それで、新しく就任する社長の挨拶が明日あるらしい、昼から周知があると思うが、明日の朝全員大会議室に集合だとよ」






ざわ・・・


「朝からみんな集まって何の話だよ」


「お前昨日の連絡聞いてなかったのか、親会社が変わって新しい社長の挨拶があるそうだ」


「え、そうなの?」


「まぁ、親会社が変わっただけで特に今までと変わらないようだが・・・」


「社長が交代って・・・あのジジイは辞めたのか」


「早期退職だとよ、退職金をたくさん貰ったらしい」


「羨ましいな」


「おい、専務の後ろに居る女の子可愛いな」


「あぁ、秘書か何かかな?」






「おはようございます、只今より新社長から皆さんに挨拶があります」


ざわ・・・


「おい、待てよ・・・嘘だろ」


「初めまして!、本日付けでユノスアイランドの社長となりました、雪藤亜芽里(ゆきとうあめり)と申します、優秀な皆さんと力をあわせてスポーツウェアのデザインに定評のある我が社を世界に羽ばたかせましょう!」









※近況ノートにイレイナーさんのイラストを追加しました。


イレイナー・ジャニィーさん(新しい制服)

https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/16817330667350027113


イレイナー・ジャニィーさん(新しい制服、上着、ブーツ無し)https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/16817330667350064134


アメリア・セーメイン・グループ(企業ロゴ)https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/16817330667350223201

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