第114話 Side - 15 - 56 - どこにいるの? -

Side - 15 - 56 - どこにいるの? -



こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン15歳です、あ、もうすぐ16歳になります。


私は今、王城を出て馬車・・・生きている馬ではなくて四足歩行魔道具(アイヴォウ)ですが・・・に乗せられチベットスナギツネみたいな表情でどこかに連れて行かれています、事前の打ち合わせでは記録用の水晶を持った「影」と呼ばれる王国騎士団特殊暗殺部隊がついて来てる筈だけど怖いのです!、震えと涙が止まらないのです!。


「リーゼロッテ様、泣かないでください、怖くありませんよ・・・フフッ・・・」


以前、リィンちゃんと旅行に行く前にお手紙を渡してきたメイドさんが私の横に座って耳元で囁きます、前からこの人は距離感が近いのです!、私はそっちの趣味はないのです!、・・・あぅ!、太ももを撫でられましたぁ!、・・・いやぁぁ、下着の中に手を入れないで!。


フルフル・・・


・・・昨日お手紙で呼び出されて、王城の隅っこにあるお部屋に行ったらこのメイドさんが居て、案内されるままに馬車に乗って・・・今ここに居るのです、どこに連れて行かれるのでしょう。


ゴト・・・


馬車が止まりました、馬車に乗ってそんなに時間が経ってないから王城の近く?。


「では降りましょう、お手をどうぞ」


先にメイドさんが降りて私を支えます、目の前には大きなお屋敷、シェルダンの私のお屋敷と同じくらい?、周りにはよく手入れされたお庭が広がっています。


メイドさんについてお屋敷に入り、豪華な客間に通されました、私は怖くてまだ涙が止まりません。


「ようこそ、リーゼロッテ嬢、消息不明と聞いて心配しましたぞ」


「・・・あぅ・・・誰?」


「これは挨拶が遅れて申し訳ない、有名だからご存知だと思ったのですが・・・私の名前はセコビッチィ・ドワルスキー、この国の宰相ですよ、そして後ろのメイドは娘のアターシャー」


「・・・」


「どうぞお座りください」


「はい・・・ぐす・・・」


私は恐る恐るソファに座ります、目の前にはドワルスキー宰相・・・私の身体を舐めるように見ているのです!、気持ち悪いのです!。


「どうぞ」


メイドさんが私の目の前に美味しそうなケーキとお茶を置いて部屋の隅に控えます、美味しそう・・・じゅるり・・・ってそんな場合じゃないのです!。


「どうぞお召し上がりください、美味しいですよ」


「はい・・・」


私がもきゅもきゅとケーキを食べていると・・・。


「ははは、可愛らしい、だが知らないお家に来て安易に食べ物に手を出すのはどうかと思いますね、毒でも入っていたら大変だ・・・おっと、リーゼロッテ嬢は腕輪があるから大丈夫でしたかな」


「ぶふぉっ!、・・・げふっ!、えふっ!」


「あぁ、ご心配なく、毒は入っておりませんよ、大事なシェルダンのお嬢さんだ、何かあったら怖い当主様が黙っていないだろう」


酷いのです!、鼻からケーキが出たのです!、私の横に居たアターシャーさんが濡れたハンカチでお顔を拭いてくれています・・・ひぃっ!、お顔が近いのです!。


「・・・」


「おっと、怖い怖い、そんなに睨まないでください」


いやこの目つきは生まれつきなのです、睨んでないのです!。


「さて、私からリーゼロッテ嬢に提案があります、聞いていただけますか?」


こくり・・・。


「国王陛下がシェルダン家当主と共謀してあなたを便利な道具のように使おうとしています、ドック氏の作った腕輪に仕掛けをして、言う事を聞かないと苦痛を与えるようにした・・・これは先にお手紙で知らせた通りです、お手紙はあなたから王女殿下に渡されたようで、それが国王陛下にも知られて大きな問題になっていますが・・・それもうちの力でどうにでも出来るでしょう」


「・・・」


「我がドワルスキー家ならあなたをお守りできます、王家やシェルダン家にも負けない権力と人脈を持っている我が家に来て頂けたら、・・・そうですね、あなたの自由は保証しましょう、気が済むまで大好きな魔法陣や魔道具の研究をしても構わない、完成した魔道具はうちの持っている販売ルートで売れば大金を手にする事も出来ますよ、どうですか、あなたにそのような酷い腕輪を・・・一生外せない枷を付けた王家やシェルダン家など捨てて我が家に来ませんか?」


「・・・いいの?」


「はい、歓迎しますよ、・・・ただ、憎い王家に復讐をしたくありませんか?、あなたはどのような攻撃に対しても無傷だ、その力を利用して王族を始末してしまいましょう、指輪が心配なのでしたら・・・私達の手の者が他の王族に配られた指輪を事前に盗み出しておく事も可能ですよ、そうすればあなたは自由だ、残念ながらその無骨な腕輪を外す事は出来ませんが・・・あなたに害を与える事が出来る王族を全員消せばいいのです、そしたらその腕輪はただの飾りになります」


「・・・あの」


「はい?」


「・・・あなたも・・・指輪・・・あるよね?・・・ぐすっ・・・」


「あぁ、私と父上は末席ながら王位継承権がありますので、持っていますよ、要らないと言うのに王家から渡されたのです、でもあなたが味方になってくれるなら、この指輪はあなたの目の前で廃棄しますよ」


「・・・いや」


「は?」


「うぅ・・・あなたの味方には・・・ひっく・・・ならないの・・・帰るの・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・仕方ありませんね、使いたくはなかったのですが、少し痛い思いをしてもらいましょうか、もちろん味方になってもらえるまで苦しんでもらいますがね・・・はぁぁっ!」


そう言って、ドワルスキー宰相は赤い指輪を私に向けて魔力を流したのです・・・うぅ・・・怖いのです!、痛くならないのは分かってるけど、この前、博士やリィンちゃんにされた事がトラウマになっててあの指輪を見たら体が震えるのです・・・。


「・・・いや・・・やめて・・・」


「あれ?」


「・・・」


「・・・」


「・・・」


フルフル・・・


「なぜ苦しまない?」


「・・・」


「何故苦しまないのだ!、もう一度!・・・はぁぁぁっ!」


「ひぃっ・・・」


「・・・」


「ドックの奴に騙されたか!」


がしっ!


ぎゃぁぁ!、宰相が私の肩を掴んで押し倒したのです!、怖いのです!、そんなに近付いたら怖くておしっこが・・・漏れちゃう・・・。


「何だこれは・・・うわぁ!・・・げふっ!」


ずぅぅぅん!


どん!・・・どさっ・・・


普段は制御してる魔力が恐怖で抑えられなくなって・・・一気に放出したらお部屋の調度品が全部砕けて壁に沢山ヒビが・・・、あ、周りに立ってた兵士さんやメイドさんが壁まで吹き飛んじゃったのです・・・私を押し倒した宰相さんは天井まで飛んで・・・落ちたのです・・・し・・・死んでないよね・・・


あぅ・・・


じょろじょろぉ・・・ほかほかぁ・・・


「うぅ・・・ぐす・・・ひっく・・・えぐえぐ・・・」





ガチャ・・・


「騙したとは随分なこと言ってくれるじゃねぇか・・・って、気絶してるか・・・おい、そこの、叩き起こしてくれ」


博士とお父様・・・お城の騎士様が大勢お部屋に押し入って来ました・・・私は恐怖と博士の顔を見た安心とで泣き崩れました・・・床にはおしっこが溜まってるけど・・・。


「あぁぁぁ・・・博士ぇ・・・怖かったの!、もう嫌なの!・・・うわーん!・・・あぅ・・・何で避けるのです!」


「いやすまん、今の嬢ちゃん小便まみれだからな、つい・・・」


「うわぁぁぁん!、・・・酷い!・・・酷いのです!」







宰相の家からおしっこまみれで帰った翌日・・・私はお父様から説明を受けたのです、・・・お父様は宰相の家で私がお父様より博士に抱きつこうとしたのを見てとても凹んでいるのです・・・悪いことしちゃったな・・・。


私が馬車でお城を出た直後、国王陛下は結界の魔道具でお城の周りに結界を張り完全封鎖、城内に居る人達を外に出られないようにしました。


陛下が信用している近衛騎士団の精鋭と「影」を2つに分け、半分は馬車を追って宰相の家に、もう半分はお城の制圧に・・・。


そしてお城の中に居る人達全員に瞳水晶を使い、宰相派とその他に分けたのです。


国家反逆罪の現行犯で拘束された宰相にも瞳水晶を使い、共犯者を漏れなく洗い出し、家を捜査して見つけた共犯者の名簿も使って国のあちこちに散らばった宰相派を一掃すべく、今も騎士団が忙しく動いているようです・・・。


その捜査は大掛かりで、一時は国境を完全封鎖したとか。


宰相は博士に騙された!って騒いでいましたが、指輪は正常に動作、私の防御結界の腕輪で無効になっている事を知ると膝から崩れ落ちたのです・・・。


大規模な捜索はまだ続いていますが、こうして国を騒がせた「呪いの刃事件」をはじめとする数々の不穏な事件については何とか解決しそうなのです・・・今回の騒動で起きてしまった悲しい事件を除いて・・・。


「まだ見つからないのです?、早く手術しないと本当に歩けなくなっちゃう・・・」


「うん、宰相派の捜索と一緒に手配してもらったんだけど・・・リゼちゃんを装ってお城の裏門から出たところまでは確認できてるの、でもその後の足取りが全然掴めないの・・・どこに居るの・・・セシルちゃん・・・」

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