第109話 Side - 531 - 4 - このうごきは・・・ -

Side - 531 - 4 - このうごきは・・・ -



「ここが新王都大図書館っすかぁ・・・ボク初めて来たっすよ、5階建て・・・かな?、・・・あ、飲食スペースもある、それに昇降機があるんっすね、良かったぁ、階段で5階はきついっす」


「うん、昇降機もあるし階段も動くの、一部の通路は床が動くよ、5階建ての広い館内に本がいっぱい詰まってるんだぁ、僕は本が好きだから1日いても飽きないよ、それにね、1階は図書館じゃなくて新品の本も販売してるの、お家の「エンタァ・ネトゥ」端末から注文を入れておくと、取り寄せてくれるんだよ、ほら、この引き換え番号と身分証を見せるの」


「へー、凄いっすね、お嬢・・・じゃなかったルシルくんはどんな本を読んでるんっすか?」


「主に魔導書かなぁ・・・それからこの国の歴史本や、白銀の大魔導士様についての文献も読み漁ってるの、あ、もちろん小説も読むよ」


「ルシルくんは本当に白銀の大魔導士様が好きなんっすね」


「うん、すっごく尊敬してるんだぁ、だから大魔導士様の事ならなんでも知りたいの!」


新王都のネオ・ローゼリア中央駅から魔導列車で1駅、僕達は王立大図書館に来ました。


シアさん・・・アーシアさんはまだ来た事がないって言ってるけど、この図書館は王都の情報発信地、ここに来ればほとんどの本が揃うし最新の雑誌も手に入るの。


2階には沢山の「エンタァ・ネトゥ」端末があって、有料だけどお家に端末を持ってない人はみんなそこで情報を集めたり、ゲームをしたり・・・、本当に楽しい場所なんだ!。


「さて、先に借りてる本を返して来るね、シアさんはどうする?」


「え、護衛なんだから当然ついて行くっすよ、ボクから離れちゃダメっすよ、ルシルくんに何かあったらボクお父様に殺されちゃうっすよ」


「・・・いくら団長さんでも実の娘にそんなことしないでしょ」


「・・・」


「え、・・・するの?」


「・・・訓練中に2回くらい心臓が止まったっす・・・、それでお父様が慌てて掌圧で胸を「ぬんっ!」ってやると動き出したらしいっす」


「わぁぁ!、それもう訓練じゃないよ、僕から団長に言っておこうか?、僕じゃ立場が弱くて言うこと聞いてくれないかもだけど・・・」


「いえ、これはボクを鍛えてくれてるお父様からの愛の鞭っす、それに最初は殴られて泣くくらい痛かったっすけど、最近はなんか・・・身体がゾクゾクって気持ちいいんっすよ、不思議っすね」


「・・・まぁ、シアさんが良いなら僕は何も言う事はないけど・・・」



ポーン・・・四階、技術書、魔導書、学術書フロアです。


ガシャン・・・


「おぉ・・・ここの昇降機、速いっすね」


「絨毯も高そうだし壁や扉の装飾も凝ってるし、王国の威信をかけて作ったって、お兄様が言ってたなぁ」


この新王都の建物のほとんどはここ数十年のうちに建てられた近代的な建物、高さも10階や20階建てだし各建物が中空で繋がっててデザインもモダン、だけどこの図書館は重厚な雰囲気を残してるの。


なんでも旧王都の大図書館を再現したそうで、広い敷地を贅沢に使った設計のレトロな外観、中は本がぎっしり詰まった書架が並んでて威圧感がすごいの、でもここの静かな空気が僕は好きだなぁ。





「おや、ルシルくん、返却かな」


「はい、ジョゼさん、帰りにまた何冊か借りようかと、あ、シアさん、こちらはこの図書館の司書さんで副館長のジョゼッフォ・ヒンニュウスキーさん、いつもこの4階にいるの、ジョゼさん、こっちはボクのお友達でシアさん、これから時々一緒にここに来るからよろしくね」


「よろしくっす」


「あぁよろしく・・・、ここは剣の持ち込みは特に制限はないけど、小さな子供もいるし危ないから抜かないでね」


「はい、わかりましたぁ」


「あ、そうだルシルくん、探して欲しいって頼まれてた小説見つかったよ、エリーゼ・シルフィー著「魔導士様との日々」これだよね」


「わぁ・・・見つかったの?、すっごい昔の本だからもう現存してないかと思ってたんだ、それ貸し出しできるかな?」


「もちろん、私もちらっと読んだけど面白いね、ただ希少な本で取り扱いレベルは5、他の人達にも読んでもらいたいからしばらくは短期の貸し出しになるけど、良いかな」


「はい、大丈夫です、貸し出し期間は最大5日間でしたっけ」


「あぁ、そうだね、返却期限に遅れたら1日ごとに料金が発生するから気をつけてね」





「さて、他に借りる本を選ぼうかな、・・・あ、ジョゼさんは僕の性別が女の子だって知ってるから」


「あ、身分証を見せるからバレるっすね、了解っす」


「ふふふふーん」


「ご機嫌っすね、ルシルくん、その本そんなに面白いんっすか?」


「人によるかなぁ・・・この本を書いた人はね、全く世間に知られてないんだけど、僕のご先祖さま、エリーゼ・シェルダンだって思ってるの、彼女は白銀の大魔導士様と仲が良かったし、40歳を超えてから小説を書き始めたってお家の文献に残っててね、まだ知られてない大魔導士様の秘密が書かれてると良いなぁ・・・って」


「そうなんっすか、じゃぁ何か分かったらボクにも教えて欲しいっす、あ、そうだ、ボクのご先祖さま・・・シャルロット・ブルナカノンも昔、白銀の大魔導士様の護衛をしてたらしいっすよ、うちの書棚を探したら日記か何か出て来るかもしれないっすねー」


がしっ!


「わぁ、どうしたんっすかルシルくん、そんなに肩を掴んだら痛いっす」


「・・・それ読みたいの、シアさんのお家行っていい?」


「まだあるかどうかもはっきりしてないっす、時間が空いたら誰かに手伝ってもらって探してみるっすよ」


「うん、お願い!」





そして僕達は新しく借りる本を選んで、予約していた本を受け取った後、図書館の外に・・・大図書館前の駅で次のネオ・ローゼリア中央駅行きの魔道列車を待っています。


「それでルシルくん・・・ってあれ?、どうしたんっすか、水晶モニタァの文字ニュース見入っちゃって」


「・・・国王陛下の命により・・・白銀の大魔導士様、王国東部セレステ領に現れたポイズンドラゴンを討伐・・・見事討ち取る、居合わせたセレステ領所属の騎士団によると、一瞬の出来事で何が起きたか分からない・・・ただドラゴンの首が落とされ転がるのを呆然と見ていた・・・だって!」


「一昨日から旦那様が王城に呼ばれてたセレステ領でドラゴンが暴れてるっていう件っすね、あれ討伐されちゃったんっすかぁ、遠いから王都は平常通りっすけど向こうじゃ大騒ぎだってお父様が言ってたっすよ」


「すっごーい!、大伯母様ドラゴンと戦ったんだぁ!、わぁ・・・見たかったなぁ・・・写真や映像は無いのかな!」


「無いと思うっすよー、大魔導士様はある意味国の最終兵器っすから秘匿されてるし、他の国に姿や魔法知られちゃマズいから報道規制かかってるんじゃないっすかね」


「わーん、見たいよぉ、お父様に頼んでなんとかできないかなぁ・・・はっ!、もしかして討伐が終わった大伯母様うちに泊まるかも!」


「でも大魔導士様がお屋敷に宿泊されるならもっと警備が物々しいし、お父様に話が伝わってる筈っす、そんな感じも無かったし、第3小隊長のボクの所には何の話もなかったっすよ」


「え、小隊長?」


「はいっす!、シェルダン家の騎士団小隊長って強い順に任命されるっす、だから小隊長はボクみたいなバカでも強ければなれるっす、小隊長がバカな分は中隊長や4つの騎士団大隊長がフォローするから大丈夫っすよ、実はうちの騎士団の小隊長ってほとんどが脳筋っすよ、一応ボクの所属を言っておくと黒翼騎士団02中隊所属、第3小隊長っすね」


「わぁ・・・」


「何っすかルシルくん、ボクってそんなに弱そうに見えるっすか?」


「いやごめん、そんなつもりの「わぁ・・・」じゃなくて、僕ってお家に養ってもらってるけど何も役に立ててないの、だからその年齢で立派なお仕事できてるシアさんは凄いなぁ・・・って」


「ルシルくんも役に立ってるじゃないっすか」


「え?」


「みんな言ってるっすよ、ルシルくん見てると心が潤うって、元気で楽しそうにしてる姿を見るとこのお家を守らなきゃって思うし、旦那様やご子息様達も「娘の為に頑張らないと」「妹が喜んでくれてやる気が出る」っていつも聞かされてるっすよ」


「えー、それはちょっと・・・まるでお家の愛玩動物みたいじゃん」


「ははは、それも含めてみんなから愛されてるっすよ、隠し撮りされた写真が騎士達の中で高値で取引されてるし・・・ついこの間も先輩達が「お嬢のヨッガレギーンス姿たまらん」「俺、夜のオカズに使ってるぜ」「ぺったんこなお胸とあの尻がそそる」って・・・」


がしっ!


「写真・・・何それ・・・僕そんなの初耳だけど・・・詳しく」


「わぁぁ・・・思わず口が滑ったっす!、忘れて下さい、じゃないとボク先輩達からタコ殴りに・・・」


「写真の出所は・・・どこかなぁ」


「顔が怖い・・・それに近いっす、・・・ボクは・・・し・・・知らないっす・・・ぐす・・・」


「この後屋台の食べ物・・・肉串買ってあげる予定だけど・・・それに焼きソバも付けてあげるから正直に」


「・・・ご子息様・・・アンドリュー様が・・・騎士達に無理なお願い事をした時の報酬っす、・・・秘蔵のコレクションから厳選してるって、ちなみに着衣写真はランク普通(ノーマル)から希少(レア)、超希少(スーパーレア)まであるっす、それから超希少(スーパーレア)は半裸で、幻と言われてる神希少(スーパースペシャルレア)は全裸の写真っす・・・あ、まだ神希少(スーパースペシャルレア)は存在が噂されてるだけで現物は確認されていないっす」


「・・・そう」


そんな事を話してると・・・。





ガシャーン!


「おう!、このガキ!、どこ見てんだよ!、俺の荷物が落ちちまったじゃねぇか!、あー、こりゃ中が粉々だぁ、弁償してもらわねぇとなぁ」


「ひっ・・・わ・・・私はよそ見なんて・・・貴方が私の前に急に・・・」


「はぁ!、聞こえんなぁ!、何だってぇ!、誤魔化すんじゃねぇ!、おら!とっとと払えや!」


「うぅ・・・ひっく・・・」





「わぁ・・・絵に描いたような当たり屋だ・・・それに恐喝、・・・行こう、シアさん、あまり関わらないほうがいいよ・・・え?、シアさん!」


「ちょっと待つっす!、ボク、見てたっすよ!、お兄さんわざと彼女の前に出て、大袈裟に荷物落としたっすよね!」


「何だこの女!ハンターか?、剣なんか下げやがって、お前が代わりに払ってくれるのかぁ!、あぁ!、痛い目に遭いたいようだな!」


「悪党に払うお金は持ってないっすよ、やるっすか?、それにボク、こう見えて素手でも結構強いっす」


「やろぉ、ぶっ殺してやるぁ!」


「ほい!」


「ふざけやがって」


「よっと、・・・お兄さんの拳、遅いね」


「くそ!、何で当たらねぇんだよ!」


「シアさん!、やめて、騒ぎになっちゃう・・・って、何か見た事のあるような・・・闘気が流れて・・・はっ!、こ・・・この動きは・・・「トッキィー」」


「ほあたぁ!」


「きゅぅ・・・」





「駅員さん、見てたでしょ、警備の兵士さん呼んで欲しいっす、それから縛るものあるっすか、拘束しておくから兵士さん来たら渡して欲しいっす、この娘は被害者ね」


悪党?を指先一つでダウンさせた後、駅員さんに引き渡し、女の子の無事を確認してシアさんが戻って来ました。





「ルシルくん、ボク、女の子が可哀想で思わず・・・ちょっと持ち場を離れちゃったっすね、ごめんなさいっす、できればお父様には黙っていて欲しいっす」


「うん、大丈夫だよシアさん、それと聞きたい事があるの、もしかして「ホクトゥのファイタァ2」で「トッキィー」使ってる?」


「あ!、ルシルくんもやってるっすか、ボクあれにハマちゃって、ストレス解消にいいんっすよ、でもハマり過ぎてお給料の半分を「グァチャァ」の「クワッキーン」に使っちゃってこの前お母様に怒られたっす!」


「・・・よく「ユゥリィアァ」使ってるダイ・マ・ドゥシィっていう人と対戦してない?」


「あ、何で知ってるんっすかぁ、もしかして・・・」


「そう、あれ僕なの、・・・ヤンデール・シーアさん、いつも遊んでくれてありがとう!」





「肉串超美味しいっす!、中央駅の裏にこんな美味しい屋台があったなんて盲点でしたぁ!」


「喜んでくれて嬉しいな、僕いつもここで食べてから帰ってるんだぁ、表の通りよりは少し治安が悪いけど、一緒に来てくれた騎士様をこれで買収して秘密にしてもらってるの」


「わー、ボクも共犯になっちゃったっす!、それにしてもあの「ダイちゃん」がルシルくんだったなんて・・・」


「僕ってまだ弱いでしょ、でもいつも本気で戦ってくれて感想までくれるヤンデールさんには感謝してたんだぁ、でも現状の強さが限界でね、何が悪いんだろう、装備かな、やっぱり「クワッキーン」しなきゃ強くなれないのかなって悩んでたの・・・」


「確か装備は・・・あー「ユゥリィアァ」に「リハァクゥの目」は絶対装備させちゃダメっす!、あれは運営の罠で、自分の速さと攻撃力を10分の1にするゴミ装備っす!」


「えー、僕唯一の星5装備なのに・・・」


「星4装備だと・・・「フードゥの兜」か「シュゥレーンの放火器」がいいっすね、え、持ってないっすか・・・じゃぁ・・・」


「フフ・・・楽しい・・・楽しいよぉ・・・僕、こんなこと話せるお友達いないから・・・こういうの初めてで・・・うぅ・・・ぐす・・・」


「わぁー泣かないで欲しいっす、あ、そうだ、次対戦した時フレンド申請するっすから、ウチのチームに入るっす!、メンバーは・・・ここだけの話、全員ウチの第3小隊の人達っす、面白そうだからみんなにはルシルくんの正体を秘密にするっす、チームに入ると装備を交換できるからボクの余ってる「フードゥの兜」とルシルくんの「リハァクゥの目」を交換するっす!、あれはゴミだけど、ボク装備コンプ目指してるから持ってる人を探してたっす!」


「うん!、ぜひお願いします!」


「それから、「ユゥリィアァ」ちゃんはえっちなポーズして技を放つと攻撃力が何倍にもなるっす!、一番強力なのは「手ブラ&M字開脚」っす!」


「え・・・」

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