第108話 Side - 15 - 52 - あべるさん ろく -
Side - 15 - 52 - あべるさん ろく -
「・・・で、雪藤さんは何で彼女と一緒に居るのかな?」
「話せば長くなる・・・、あ、これは借りていたタクシー代だ、・・・硬貨ばかりで申し訳ないが」
ジャラ・・・
私は今、田中家の座敷に居心地悪そうに座ってる、リーゼロッテちゃんが私の事を家族にも話したいと言ったからだ。
あまり気が進まながったのだが彼女は「今後私の件で問題が起きて家に来る時、また私の家族に幻術をかけるのです?、やめて欲しいのですが!、それに私の家族は神様のシロさんも普通に受け入れたから大丈夫なのです!」って主張したのだ、今この部屋にはリーゼロッテちゃんとその両親、弟君が揃っている。
神様のシロさんっていうのはよく分からなかったが、説明を聞いていると宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)・・・私の友人、うかちゃんの事のようだ・・・知り合いだったのか・・・。
「ではまず初めに、私は皆さんを騙すようなことをしていた、親切にしてくださったのに申し訳ない、今から私の本当の姿をお見せする」
「おぉ・・・雪藤くん?・・・」
「白髪の・・・女の子?」
「私の名前はアメリア・セーメイン、リーゼロッテちゃんの生まれた国、ローゼリア王国がある世界の人間だ、縁があって1000年以上前、日本に渡り、当時は安倍晴明(あべのせいめい)と名乗っていた」
「え?」
「あの陰陽師のでござるかな?」
「そうなのです!、そして私たちのご先祖さまなのです・・・詳しく説明すると・・・」
その後はリーゼロッテちゃんが説明してくれた。
「・・・という訳で、アメリア様は私が今後時空転移魔法陣で好きな時代に自由に行けるようになってもテロリストに捕まった理世を助けないよう忠告にやって来たのです!」
「そんな事が・・・あったのでござるか・・・」
「そう、助けちゃうとアメリア様が消えちゃって私はもちろん、お父さんも龍之介も消えちゃうの、それにローゼリア王国もなくなる可能性が高いの、あの国は平和で暮らしやすいけど、一つ間違うと悪者がヒャッハー!する修羅の国になるかもしれないの」
「そういえばうちの仏壇に拙者の実家・・・瀬良家の家系図の写しがあったでござるな・・・」
「ほう、すまないが見せてもらう事はできないかな、一応本家の家系図は見せてもらった事があるのだが枝分かれした末端までは手が回らない、転生の事もあって我が子孫はできるだけ把握しておきたいのだ」
「これでござるな、結構古い家系でござるが、・・・まさか安倍晴明の子孫だったとは・・・」
「瀬良家は昔・・・江戸初期になるかな・・・安倍家に生まれた双子の片方が瀬良家の祖先にあたる家に養子に出されたのだ、そこからまた枝別れした家だな、そこの何代か後の当主が陰陽師を嫌っていて完全に本家と縁を切ったそうだ」
「この家系図も双子の代までは描かれていないだろう、こちらは縁を切ったつもりだっただろうが本家はかなり末端まで把握していたぞ、安倍家は有力な陰陽師の家だ、血縁は可能な限り管理していた、・・・長い歴史の中で抜けはいくつかあったがな」
「そんな昔の事まで分かるのでござるか・・・」
「どれどれ・・・大体のところは私が把握している家系図と一致してるね、でもいくつか把握できていないものもある、ありがたいな・・・例えばリーゼロッテちゃんのお爺さんの母親の兄弟・・・これは本家の家系から全部抜けていた、何故かは分からないが・・・」
「曽祖母の弟は結婚して・・・これは何と読むのかな・・・茂留田・・・もりゅうた?・・・もるた・・・かな、その家に婿入りしてる、・・・あれ、この名前は記憶にあるな・・・週刊誌やオカルト系の専門誌で騒がれていた事がある・・・確か・・・未確認飛行物体が日本の上空で多数目撃された日の夜に茂留田という姓の娘さんが失踪したという記事が書かれていた・・・」
「アメリア様、すごい記憶力なのです!」
「まぁ・・・ね、記憶力には自信があるのだよ、だがこの娘。登山の途中で行方不明になったらしいから、滑落して命を落としているかもしれない、そうなると確率は低いが向こうの世界に転生している可能性があるなぁ・・・」
「あ、それは拙者も覚えてるでござる、この周辺では目撃されてないでござるが、テレビでもやっていたでござる」
「あぁ、あれかぁ、私も覚えてるぞ、・・・理世が産まれてすぐだな、産婦人科の病室のテレビでやってたのを見たぞ」
「じゃぁ転生していたとしたら向こうでは20歳半ばくらい?」
「いや、そうとも限らない、向こうの転生者と話したのだが死んでからローゼリアで生まれ変わるまでに人によって誤差があるようだ、日本で死んだ翌年だったり、10年経っていたり・・・だから年齢はあてにならないな、もしかしたら転生してないかもしれないし、・・・どちらかといえば転生しない確率の方が高い」
「龍之介も30歳になるまで気をつけないといけないでござるな、今死んだら向こうに転生するかもしれないし・・・龍之介の息子や孫も気をつけてやらないと・・・」
「そうだねー、私の目が届く所に転生してたら助けてあげられるけどね・・・」
「いやお姉ちゃん何で僕が死ぬ事前提で話してるの!」
「では迷惑をかけたね、ここに潜入する目的があったとはいえ親切な皆を騙すような事をして申し訳なかった」
「あ、会社の皆の記憶はどうなるのでござるかな」
「ここに居る家族以外はすでに幻術は解除してある、明日会社に行ったら誰も雪藤と言う女性は覚えてないだろう、だが私が本当の姿を見せて、あまりにも強い印象を残し過ぎたから、貴方達の記憶を改竄するのはもう無理だ、雪藤という女性がアメリア・セーメインだという紐付けもされてしまっている」
「すまないが会社では「雪藤ちゃん」の話をしないで欲しい、他の皆もその話をきっかけに幻術にかかっていた時の事を思い出すかもしれないからね、意外とこの術も万能ではないのだよ、・・・ふふふ、・・・では、短い間でしたがお世話になりました、田中課長!、飲み会、楽しかったです!」
「あ、消えたでござる・・・」
「まぁアメリア様とはいつでも連絡できるようにしたからまた来ると思うよ、あ、そうだ、見てこの500円玉、令和10年だって!」
「・・・おぉ・・・本当に未来から来ていたのでござるな」
「映画みたいだな・・・って言うか使っていいのかこの500円・・・」
「僕はもう余程の事がないと驚かなくなったよ・・・」
「ムフフ、驚かないか・・・龍之介、実はアメリア様に頼んで、私の国籍と身分証明書、全部揃えてもらえるのです!、もう国籍不明の不審者じゃなくなるのです!」
「な・・・なんだってー!」
「アメリア様ね、長い日本滞在中にいろんなところにコネがあるらしくてね、私が国籍無くて困ってるって言ったら国籍やパスポート、ビザも用意してくれる事になったの!」
「みんなが帰ってくるまで2人で考えたんだぁ・・・ノルウェー国籍のリーゼロッテ・シェルダン15歳、向こうでは両親が事故に巻き込まれて死亡、自分も大怪我、身寄りがなくて、ゲームやアニメ好き、日本文化に興味のある女の子、両親の遺したお金で日本に長期ホームステイ、その時に龍之介と知り合って意気投合、頻繁にこのお家に遊びに来るようになった・・・っていう設定」
「おぉ・・・」
「そのうち日本への帰化申請もアメリア様がしてくれるって、私はこのお家の養子になりたいって思ってるけど、アメリア様も外国人との養子縁組?、・・・その辺のややこしい手続きに詳しくないから調べる時間が欲しいみたいなの、できなければ私単独の戸籍を持つ事になるかな・・・それまでは留学生のリーゼロッテとして今まで通り暮らしてろって」
「それからね、向こうの金貨の換金ルートも持ってるみたいで、私の資産の一部を日本円に替えてこっちに移す予定、あと9年でこのお家を廃墟にしないといけないでしょ、だからそのお金で新築一軒家建てるよ、お父さんに場所を選んで欲しいの、会社の近くでもいいし、駅やスーパーの近くの便利なところでもいいよ」
「え、でもそれは理世たんのお金ではござらんか、そんな事してもらう訳には・・・」
「気にしないで!、前にも言ったけど私向こうでは超お金持ちなの、こっちに持ち込む日本円はアメリア様と相談したんだけど3億円くらいかな、向こうでは忙しくて使い道が無いの、とにかくここを空き家にして9年後に廃墟にしないと歴史が変わっちゃうかもしれないからね、あまりにも豪邸だと怪しまれるから・・・土地付きでオール電化、5000万円くらいの普通よりちょっと大きいお家で大丈夫でしょ、もちろんもっと高くてもいいよ」
「・・・ふぅ、疲れた・・・腹減ったしビール飲みたいな・・・久しぶりの我が家だ、そこのスーパーで鰹のたたき買って来たぞ・・・おっ、形代(かたしろ)が戻ってるな、会社の様子はどうなってるかな・・・」
「そうか、社員食堂のおばちゃんが無事復帰、・・・ん?、なんだって?・・・会社の経営状態があまり良く無いのか・・・希望退職者を募集?、3日後希望者と面接・・・ふむ、10年くらい勤めたが同僚とはそれほど親しくないし、会社にもあまり愛着は無い・・・何より程よくブラックだった、最近は飽きてきてほとんど形代に任せてたからなぁ・・・うーん、そろそろ潮時か・・・」
どさ・・・
「やはり自分の家のベッドが一番だ・・・、最近は昔の事ばかり思い出していたが、これから先どうしようか・・・会社員も悪くなかった・・・自営業はあまり仕事が複雑だと形代に任せられない・・・この高知の土地は気に入ってるからできれば離れたく無いな・・・時間はたっぷりあるのだ、ゆっくり考えようか、・・・次は女性の姿で生きるのもいいな・・・あの雪藤ちゃんの造形は我ながらよく出来ていた・・・フフ・・・」
そういえば、私は日本に来た時からずっと・・・男性の姿だったな・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます