第107話 Side - 15 - 51 - あべるさん ご -

Side - 15 - 51 - あべるさん ご -



ギシ、ギシ、ギシ・・・


少し古びた日本建築家屋の階段を登った2階・・・ここだね。


コンコン


「ひぃっ・・・」


あー、すっごく怯えてるね、怖がらせないように・・・。


バン!


「やぁ、こんにちは!リーセロッテちゃん!・・・あれ?」


エンジ色の芋ジャージの上下、銀色の長い髪を後ろに束ね、左目に眼帯、両腕に目立つ金属の腕輪・・・間違いない、リーゼロッテちゃんだ、だが部屋の片隅で頭を抱えて蹲ってるね。


ガタガタと震えて小さな声で「やだ・・・怖い・・・来ないで・・・」、フローリングの床・・・これは和室の畳を撤去してリフォームしたのかな・・・彼女のお尻の下に溜まった水たまり、・・・あ・・・お漏らしするくらい怖かったのか、悪いことしちゃったな。


「怖がらないで・・・もうちょっとよくお顔を見せてよ・・・」


ゆっくりとお部屋に入り彼女の側に・・・腕で隠してるから顔が見えないな・・・。


「いやぁ・・・何で魔法使え・・・ないの・・・ぐす・・・怖いよぉ・・・」


「・・・緊縛」


見えない鎖で両手を吊して立たせ、両足も左右開かせて壁に「X」字に磔にする。


「あぅ・・・やだ・・・いやぁ・・・ぐす・・・えぐえぐ」


リーゼロッテちゃんの顔に私の顔を近付けて、・・・眼帯に手を伸ばし優しく外した。


「大人しくしなさい、怖くないよ、フフフ・・・」


「いやぁ!・・・左目・・・見ないで!・・・嫌だぁ・・・」


だから顔が見えないよ、顎を手で支えてクイッと上を向かせて・・・これテレビで見て一度やってみたかったんだよね、・・・ほらよく見えた、可愛いな・・・涙と鼻水でぐちゃぐちゃだけど・・・。


「うぅ・・・きゅぅ・・・」


しょわぁ・・・ぽたぽた・・・ほかほかぁ・・・


あー、またお漏らし・・・追いお漏らしだね・・・気絶しちゃったか。


「乾燥、浄化、・・・覚醒!」


ビクン!


「あぅ・・・ひぃっ!」


本当に可愛いなぁ・・・キスしちゃおうか・・・いいかな・・・いいよね。


「あむ・・・」


「んーっ!、んー!、#$+`%!!((>ω<))#!!」


ぷはぁ・・・、ふふふ、もう一回・・・


「うわぁぁん!、助け・・・んっ・・・やぁ・・・やだぁ・・・いやぁぁ!!・・・んっ!・・・んー!」


ぷはぁぁ・・・


「うむ、美味であった、余は満足じゃ・・・」


「あぅ・・・ぐすっ・・・ひっく・・・うぅ・・・」


フルフル・・・


「キスする前にお漏らしは乾かしたよ、浄化もしてあげた、暴れないと約束してくれるなら束縛を解こう、約束してくれるかな?」


「・・・」


「お返事は?」


こくこく・・・


「そう、いい子だね・・・緊縛解除・・・」


どさ・・・


リーゼロッテちゃんは私の目の前で束縛を解かれ、女の子座りをして「えぐえぐ」って涙と鼻水を流してる、私はハンカチを差し出して


「自己紹介をしよう、私の名はアベル・セーメイン」


「え・・・」


「知ってるよね」


「建国の・・・大魔導士様?」


「そう、正解、今日はリーゼロッテちゃんに大事なお話があってここまで来たんだ」


「お話・・・」


「そうだよ、君がドック・フューチャと共同で空間と時空、2つの転移魔法陣を開発、公表してからずっと君と2人っきりでお話をしようと思っていてね、だけどあまり人前に姿を見せないし、見かけても影が監視する王城だったり、いつも誰かと一緒だった」


「・・・」


「もう幻術を使って押しかけようかと思ったんだけど・・・最近はどこかに隠れてて見つからない、隠れるのが上手だね」


「・・・」


「だから最終手段として私が時空転移魔法陣を使って9年後の日本から・・・ローゼリアでは15年だね・・・2023年の日本にやって来た、でも困った事に家系図に記載の住所が古くてね、・・・何度か引っ越してるでしょ、だから今の貴方のお家を探して辿り着くのにも結構苦労したんだよ」


「あの事件でテレビに映ったお家はモザイクが入ってたからお父さんの会社に詰めかけたマスコミの映像とBoogle Mapを見比べて会社名を割り出して・・・君のお父さんを使ってようやくここまで入って来れた、個人情報保護って面倒くさいよね」


「お父さんに?、・・・え、何をしたの?、大丈夫なのです?」


「大丈夫、幻術を使って本当は実在しない女性を会社の部下と思い込ませただけ、それでこの家に連れて来てもらったの、私が術を解除すると改竄した記憶も全部元に戻るよ」


「・・・」


「で、話なんだけどね」











「嘘・・・私やお父さんが、・・・安倍晴明の・・・子孫?」


「嘘じゃないよ、建国の大魔導士アベル・セーメインの子孫でもあるね」


「私が前世の記憶を持ったまま・・・ローゼリアのシェルダン家に転生したのって・・・」


「そ、私の子孫で若いうちに亡くなった事が原因、何でシェルダンの家に転生したのかは私にも分からない、結構ランダムに転生してるから偶然だと思うね、それに転生者はローゼリアだけとは限らないんだ、でも別の大陸なんかだと私には見つけようがないんだよねー」


「お話は分かったの・・・理世を死なせないように歴史を変えたら・・・2つの転移魔法陣が無かった事になって、アベル様も消えて、ローゼリア王国も建国できるかどうか分からない、私は生まれないか別人格に・・・理世もお父さんも龍之介も消えちゃうの・・・」


「理解が早くて助かるなぁ、だから将来、時空転移魔法陣で一度戻った過去より前の時代に行けるようになっても、絶対!、絶対に!、テロリストに捕まった理世を助けない事!、ドック・フューチャとリーゼロッテちゃんの転移魔法陣の開発を邪魔しない事、この2つを念押しに来たんだ」


「うん・・・でも本当に時空転移魔法陣で一度戻った過去より前に行けるのです?」


「私は行けたよ、リーゼロッテちゃんの魔法陣を改造して2023年の日本に来た後1980年にも行けた・・・それに、未来にも行けちゃう・・・リーゼロッテちゃんはそう遠くない未来で、白銀の大魔導士様って呼ばれてたね」


「どうやったのです!、教えて!」


「それは秘密、貴方も苦労して悩んだり失敗しながら魔法陣を開発するの楽しいでしょ、すぐに答えが欲しいかな?、それって勿体なく無い?」


「・・・あぅ・・・確かに、開発するの楽しい・・・できるって事実があるだけでも努力する意欲が湧いてくるの」


「えらいえらい、それでこそ我が子孫だ、まぁせいぜい頑張りな、それから空間転移魔法陣にもまだ貴方が気付いてない面白い事があるよ」


「え・・・そうなのです?、凄い、アベル様天才だ」


「私は天才じゃないよ、実はゼロから魔法陣を開発するのすごく苦手なんだ、他人の作った魔法陣を読み解いて、改造する方が得意かな」


「でも凄いのです・・・」


「じゃぁそろそろ私は帰ろうかな、目的も果たしたし、リーゼロッテちゃんともお話しできた、夕方にでも幻術を解くからお父さんやお母さん、お父さんの会社の人達の記憶から「雪藤」っていう女性が消えるよ、あ、そうだ、500円硬貨ばかりで悪いけどお父さんから借りてたタクシー代、適当に理由付けて返しておいて・・・何枚か令和8年や10年みたいな未来のお金が混ざってるけど多分バレないと思う・・・」


「待って!、もっとお話ししたい!」


「ほぅ、嬉しいこと言ってくれるね、じゃぁ何のお話をしようか、そうだ、私から宿題を出そう」


「宿題?」


「私はローゼリア建国前の魔導書を読んで全てを頭に入れている、それに加えて建国後に大魔導士の権力を使って世界中の魔導書を読んだ、今のリーゼロッテちゃんは守りに関しては誰よりも凄いけど攻撃力がまるで無い、攻撃魔法の知識はあるだろうけど使う勇気もないし、人を殺す覚悟もない、さて、ここに時間停止魔法陣があります、ちょっとだけ使うね、そこのお菓子を見てて・・・」


「あ・・・消えた、・・・と思ったら向こうに移動?」


「分かったかな、今私はこの世界の時間を止めて、停止した空間の中でお菓子を持ち上げて別の場所に置いた、もし目の前に魔獣が居たとして、時間を止めることが出来たら、リーゼロッテちゃんのような非力な女の子でも殺せると思わない?、例えば時間停止の後で首だけ残して胴体部分を空間転移させて・・・」


「す・・・凄いのです!、そんな事できたら無敵なのです!」


「でも時間停止魔法陣は失われた魔法陣、今のローゼリアには存在しない古代魔法だよ、さぁ時間をあげるから今の時間停止魔法陣を作ってみなさい」


「え、それだけ?、ヒントは?」


「近い魔法陣は・・・時空転移魔法陣、それから弓矢を加速させる魔法陣あるでしょ、それくらいかな、あと、魔法陣のベースは・・・今の魔法陣の様式じゃなくて、古代魔法の文献が王立図書館に残ってるからそれを参考にしなさい、まぁ10年くらいで完成できたら合格かな」


「やる!、やってみるのです!」


「頑張ってね、それから・・・ラノベやWeb小説では新旧の大魔導士様が初めて出会ったら「勝負するのだ!」って感じで戦い始めて、「やるねぇ」「そっちこそ」、「くっ、いつかお前を超えてやる!」「望むところだ」っていう熱い展開あるけど・・・やる?」


「・・・い、いいのです!、勝てる気がしないのです!」


「そうかなぁ、いい勝負できると思うけど、リーゼロッテちゃんにはどんな攻撃も通らないから、私の魔力が先に尽きて負けちゃうかもね・・・でもそれくらい本気で殺り合ったらこの周辺が更地になりそうだ・・・」


「怖いこと言わないで欲しいのです・・・」


「・・・私はね、ローゼリアで転生した子孫には今まで素性を明かした事が無いんだ、ただ側で見守って、不幸になりそうだったらちょっとだけ力を貸したり、障害になりそうな奴らを始末したり・・・幸せに暮らせるといいなって、ね・・・」


「でも今回のリーゼロッテちゃんの転生は話が違う、ローゼリアで転生してそこからまた日本に戻って来た、こんな事は初めてだ、だから私は素性を明かして貴方がいかに危険な存在になり得るか忠告に来たんだよ」


「・・・このまま私は貴方の前から消えて、・・・ただ見守るだけの存在に戻って今後はお互い交流しない予定だったけど、・・・私はリーゼロッテちゃんがとっても気に入ったの!、これからも連絡を取れるようにしよう」


「本当に!」


「じゃぁちょっと待っててね」


「消えたのです・・・あ、また出て来た」


「右がいいかな・・・、腕を出して、リーゼロッテちゃんの腕輪に魔法陣を追記しよう」


「はい・・・」


「ここが空いてるね、ほい!、刻印!」


「腕輪のこの部分に魔力を流してみて」


「こうなのです?、・・・わぁ!、透明なスクリーンが立ち上がった!」


「ハロー、リーゼロッテちゃん!、見えるかな、アベルだよ」


「っ・・・凄い、スクリーンにアベル様が映ってる、お話もできるの?」


「できるよー、私の指輪で同じようにリーゼロッテちゃんの姿が見えてるよ、これでお互いに連絡できるでしょ、用事があって出られない時は・・・こうすると留守録機能が使えてメッセージが入れられる、あ、容量の問題で伝言は1分以内ね」


「それから、今の私はこの家に潜入するために作った仮の姿なんだよ、普段生活している時はどこにでもいるようなおっさんだ、高知県で会社員をしている、でも通話の時は本当の姿に戻ろう、・・・姿替えの幻術を解くからよく見てて」


「わぁ・・・15歳くらいの・・・女の子・・・綺麗・・・」


「そう、これが私の本当の姿、名前はアメリア・セーメイン、金で売られて男達の性欲処理に使われていた女の子、私はたまたま時空転移魔法陣を使って建国前の過去に来ていたドック・フューチャに助けられた、彼は私を地獄から救い出し孤児院に預けて別れたけど、そのおかげで私は幸せな人生を送る事が出来たんだ、だから彼は私の命の恩人」


「博士が・・・」


「でも彼には絶対にこの事言っちゃダメだよ、自分が気まぐれで助けた女の子・・・その行動で歴史が激変した・・・なんて知ったら後悔するかもしれないし・・・罪悪感に苛まれるかもしれない」


「彼に助けられた私は大魔導士と呼ばれるまでになったけど、その間に数え切れないほど沢山の人間を惨殺して来た、男も女も、子供も老人も、何百万人も容赦なくね・・・厄災の悪魔って呼ばれてた時もあったかな・・・こう見えて私って若い頃は尖っていたんだ」

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