第91話 Side - 302 - 7 - じゅうじけん -

Side - 302 - 7 - じゅうじけん -



こんにちは!、私の名前は転生?したらしいリィンフェルド・・・いえ!リィンちゃん!、ピチピチの15歳・・・という設定です!。


私は今、サウスウッドのお屋敷をのんびり歩き回っています、リゼちゃんとリンちゃんは南の大森林を見にお出かけ中、私は怖いから行きたくないって言ったらお留守番、サウスウッドの当主様に退屈そうにしている姿・・・ベッドに寝転がって一人ジャンケンを見られてしまって「退屈だったらお家の中を探索したらいいよ」って言って貰ったの。


このお家には私が生きてる頃・・・、女王様だった時に数回訪問して滞在しています、その時は「こんな辺境に女王様が!」って事で大歓迎を受けました、あの時のお料理、美味しかったなぁ、・・・この身体じゃ二度と食べる事は出来ないけれど・・・。


それにしてもこの服、・・・じゃなくて人工皮膚だけど、すっごく恥ずかしいの!、えっちだよこれ!、リゼちゃんはえっちじゃないし誰も気にしないよって言ってるけど、これが皮膚なら今私は下半身裸だよ!、無防備過ぎて落ち着かないし、上着を着てブーツと手袋はしてるけど余計えっちに見えると思うの!。


お屋敷で働く人達が目のやり場に困ってる!、私は王女様を長くやってたから人の視線には敏感なの、「うわ、こいつエロいな」ってみんな絶対思ってる、こんなの今すぐ脱ぎたいけどこれは皮膚だから脱げないし、・・・リゼちゃんに上から服を着てもいいか聞いたんだけど、あの子、人工生命体(ゴーレム)の服に何故か変なこだわりがあって、絶対に着ちゃダメって言うの、なんでよ?・・・、うぅ・・・恥ずかしいよぉ・・・。


そんな事を思っているうちに玄関ホールに出て来ました、広いお屋敷・・・シェルダン家と並ぶと言われている力と伝統がある上級貴族、ローゼリアでは南の大貴族と言われてる名門。


だけど、このお家もシェルダンと同じで権力やお金に対する欲や執着は全く無いの、贅沢はしないし家具や調度品は実用性重視、莫大な資産は民の為にっていう今では珍しい貴族・・・。


ホールを奥に進むと歴代の当主様が描かれた肖像画が並び、その一番奥には・・・。


「あ、私の十字剣、・・・懐かしいな、柄の部分の宝石・・・ダイヤ、サファイヤ、ルビー・・・まだ見つけてなかったの?、ヒントも出してたのに、・・・もう250年も前だから忘れちゃったのかな?、私がここを再訪する時、答え合わせをする筈だったクリント君との賭けゲーム・・・」


思わず呟いた独り言・・・でも。


「何故宝石の種類を?・・・それにヒントとは」


「あ、・・・聞かれちゃったかぁ」


柱の影から当主様が出ていらっしゃいました、気配が全然しなかったんですけど!。


「・・・私は女王陛下の記憶を学習しています、だから知っているのは当たり前ですよ」


「貴方のこの剣を眺めるお顔は、懐かしさと優しさに溢れていた、いくら最新型のゴーレムが凄くても「学習」だけでは出せない表情だと私は思いますがね」


「・・・そういうものでしょうか?」


「そういうものですよ」


あーあ、バレちゃったかぁ、もうすぐエテルナ・ローゼリアの王城にも出入りするからバレるのは時間の問題だって思ってたけど、・・・私って隠し事苦手なんだよなぁ・・・。


もう誤魔化せないね・・・、私は女王様だった時のように姿勢を正して・・・。


「その通り!、私は白銀の大魔導士様と同じ、死んでから前世の記憶を持って生まれ変わったリィンフェルド・フェリス・ローゼリアだよ、生身の人間じゃなくて、機械の身体の中に・・・だけどね、疑うのなら、お父様・・・統一国王陛下かギャラン・ローゼリアの陛下、貴方のお友達だよね、彼に聞いてみて、私が今言ったのと同じ事を言うと思うから、・・・って何してるの?」


当主様が跪いて臣下の礼をされています。


「ダメだよ!、私、今は人工生命体(ゴーレム)「リン」のプロトタイプ、「リィンちゃん」なんだから、そんな事しなくていいよ」


「ですが、私の・・・サウスウッド家の祖先は女王陛下に大変な恩義がございます」


「困ったなぁ、・・・じゃぁその恩義を返すと思って、私には普通に、これまで通り接して欲しいな」


「・・・」


「お返事は?」


「分かりました、ではそのように」


当主様は隣に立ち、壁に飾ってある剣を眺めながらお話を聞かせてくれました。


「この剣は我が家に伝わる家宝、我々一族の先祖、クリント・サウスウッドが女王様より賜った剣と伝わっています、柄の部分に嵌め込む形になっている宝玉は取り外されていて、我が家に伝わる書物によると、サウスウッド領で魔獣の大発生が起きた時、危険を顧みず領地に女王陛下自ら騎士団を率いて駆け付けて下さり、その時に友人となったクリント当主に大切な剣を下賜(かし)されたと、そして剣から宝玉を取り外し、次に会う時この剣に嵌めましょうと、再会を固く誓われたのだとか、・・・しかし残念ながらその後は女王陛下は多忙となられ、そして公務が落ち着いた時にはすでに高齢で旅をする体力が無く、剣はそのまま我が家に、そして宝玉は王家にと・・・」


「あぁ、・・・そんな感じで伝わってるのかぁ・・・まぁそれでいいや、そのお話の方が私かっこいいし!、でも宝玉は嵌めてあげないと剣が可哀想だね」


「は?、・・・言い伝えと事実は異なるのでしょうか」


「あー、うん、・・・宝玉はこのお家にあるよ、今から言う所を探してみてもらえるかな、このお屋敷の書籍保管庫、膨大な本があると思うけど、一番奥の棚・・・場所は変わってるかもしれないけど、「王都食べ歩き!、美味しいスイーツご紹介」っていうタイトルの本をくり抜いてその中に入ってる、まぁその本私のなんだけどね、掲載されてるお店はほとんど潰れちゃってもう無いだろうから貴方にあげるよ、隠蔽の魔法陣と状態保存の魔法陣で覆われてるから分かりにくいと思うけど、見つけたら魔力を流せば魔法陣が消えるようにしてる、宝玉と剣は私が持ってても仕方ないから貴方の家で保管しておいてね」




そして当主様が宝玉を探しに行かれた後、私はクリント君の肖像画の前で昔を思い出していました。


「クリント君の脳内で、私はそんなかっこいい女王様になってたんだ・・・フフッ・・・美化し過ぎだよ・・・」




「ありました!、本の中に宝玉が3つ」


「隠蔽魔法で魔力量が多い人しか気付けないようにしてたから、メイドさんや他の人には見つかってなかったみたいだね、このお家の人にも見つけてもらえなかったみたいだけど・・・、じゃぁ早速嵌めてみようか、あ、家宝になってるみたいだけど私が触れても良い?、・・・そう・・・これを、こうして・・・こうじゃ!」




ペかー


「おぉ!・・・剣が光って・・・刃の部分が透明に!」


「元々この柄の部分が本体、剣は祭礼用の模擬剣に艤装してリゼちゃん・・・白銀の大魔導士様が後から作って取り付けたの、古代遺跡からの出土品で元から刃の部分は無かったんだぁ、当時としてもかなり貴重な物なんだよ、・・・で、この剣は残念ながら人や魔獣は斬れないの、代わりに・・・なんと!、霊体やゴースト系の魔物を斬る事が出来ます!」


「なんですと!、そんな幻と言われるものが、・・・もし存在するなら・・・国宝級のものではないですか!」


「そうだねー、私が女王の頃で言えば現存するのはミラージュ大陸にあるレパード帝国に国宝として1本だけ確認されてるね、それから後に出土してたら分からないけど・・・」


「いえ、私もその1本だけと聞いております」


「そっか、じゃぁこれが2本目だね」


「そのような貴重なものが我が家に、・・・しかも比較的容易に立ち入りできる場所に・・・なんという・・・」


「それについての文句は貴方のご先祖さま・・・クリントくんに言ってもらいたいなぁ、・・・私としてもこんなところに飾られてたの知らなかったし」


「では早急に梱包しますので王城にお持ち帰り下さい」


「いや、さっき貴方のお家で保管してって言ったじゃん、実はこれは狂乱の大賢者様が時空転移魔法陣で古代遺跡に行って拾ってきた奴なの、だから公式には存在しないことになってて、もしこんなのがある事がバレたら欲しがる人で争いになって大騒ぎになると思うの、しかもこれ狂乱の大賢者様から個人的にもらった私の私物なの、私は生きてないから精神攻撃してくる霊体は怖くないし、この領地ってアンデッド系やゴーストも出るんでしょ、だったら王城の奥で飾られてるよりここで有効に使ってもらった方がいいと思うの、私が許可するから持っててよ」


「はぁ・・・しかし・・・」


「いいっていいって、クリントくんもこの剣欲しがってたから私の出す問題に答えられたらあげるって事になってたの、まぁ彼はもう死んじゃってるから・・・私も忙しくてこれの存在を忘れてたんだよねー、もっと早く思い出してたら本人に渡せたんだろうけど、・・・悪いことしちゃったなぁ」


「リィン様、涙が・・・」


「あれ、やっぱり悲しいのか・・・ちょっと昔を思い出しちゃった、大丈夫だから気にしないで、・・・あ、ここの子になったリンちゃん・・・今はミリアちゃんだね、彼女も悲しい時や嬉しい時には涙を流すから泣いた後の体液の補充は忘れずにね」

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