木島別弥の超短編小説集第六期

第2話 地底の美男子

　地底に美男子がいると、地上で噂が流れた。

　地上の男たちが、釣り餌の美女とのラブロマンスを話し合い、釣り餌の美女と生きのびる話を考えている頃、地上の女たちは、地底の美男子を探して、地底へ向かっていた。地底に美女がいるなら、地底に美男子もいるはずだ。そういう推測だった。

　地底トンネルを掘削した女たちは、マントルより深い辺りまでトンネルを作っていくと、その辺りで、地底の美男子に襲われることを体験するようになった。

　女たちは、地底でのハードなラブロマンスを体験しながら、この地底の美男子は、地底の怪物の釣り餌なのか、地上から来た地底探索隊の凄腕なのか、どちらなのかわからず、思い悩んだ。

　地底の美男子は凄かった。マントルより深い階層で、小型の地底車に乗って地底を自由に掘り進んでいた。

　地底の伝説は、地上へ少しずつ語り継がれるようになっていった。地底の美女と地底の美男子の伝説が。