木島別弥の超短編小説集第六期

木島別弥(旧:へげぞぞ)

第1話 地底の美女

 地底に行くと、ものすごい美女が待っていると地上で評判になった。地底の深くへ潜れば潜るほど、ものすごい美女がいるのだという。

 なぜ、地底に美女がいるのか。地底の美女はどのように生活を成り立たせているのか。それらは謎のまま、地底に美女がいるという噂だけが流れていった。地底の美女は、地上の美女とは比べものにならないくらい美しいらしい。地上の男たちは、いつか地底へ行かなければならないと心意気を高めた。

 地底に行くには、少しずつ穴を掘っていくという手がある。地底へのトンネルを掘って維持している連中がいる。地底へ行き、美女を手に入れなければならない。

 男たちは美女のためだと気合を入れて地底トンネルを掘削した。地底トンネルは、地殻を突き抜け、マントルに達した。マントルの中をトンネルの壁を補強しながら、さらに地底へ向かう。

 マントルの辺りから、まれに、地底掘削隊の間で、地底の美女を見たという話が聞かれ始める。地上の女とは比べものにならないものすごい美女だという。いったいなぜ地底に美女がいるのか。

 男たちはマントルの中のトンネルの壁を補強しながら、地底の美女を目指してさらに深い地底へと進んだ。地底を下に降りれば降りるだけ、すごい美女が待っているのだという。

 そして、男たちは、地底の美女を発見した。地底トンネルを掘っていくと、人類にとっての常温の土塊があり、その中から地底の美女の裸の体を掘り出したのだ。

 生きている。地底の美女は生きているぞ。男たちは、地底の美女を発見して興奮した。地上に「我ら、地底で美女を発見せり」と通信を送った。それを受け取った地上で、地底の美女の噂はさらに広まった。

 マントルの中のトンネルで、地底の美女を抱き寄せた男は、数十メートルもある巨大な口に食べられた。

 地底の怪物が、美女を餌に人類の男を釣り上げる漁業を行っていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る