痛みだけでも覚えて帰れ

 死んだ叔父が夜ごと夢枕に立つようになり、確かに俺は煙草の吸い方も二日酔いの対処法も大抵のわるいことを叔父から教わったので、化けて出られるのは納得していたのだが、怪訝そうな顔でこちらを覗き込んでから首を傾げて消えるというを繰り返すので、死んだからかそれとも頭を打ったせいかともかく全部忘れてしまったのかと悲しくなり、昨晩は叔父が現れ唇を開こうとした瞬間に堪らなくなって跳ね起き押し倒し散々に殴りつけたところ呻き声を残して消えたのだが、今夜現れた叔父はひどく怯えた顔をしており俺が身を起こすと小さく悲鳴を上げたので、生前のことを忘れたなら死後に覚えさせればいいのかと俺はその痩せた肩を突き倒す。

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