骨肉之親

 継母の連れ子だった三つ上の義兄とは殊更に憎み合うようなこともなかったが別段仲が良いというわけでもなかったので、彼の通っていた高校も卒業した大学も就職先も何一つ知らないし、好きなバンドも苦手な作家も煙草の銘柄もつまりは個人的なことプライベートについても全く教えてもらえなかったし、こちらとしても言いたがらないことにわざわざ踏み込もうとも思わなかったのだが、今こうして火葬が終わり焼き上がった彼と対面して、台上の灰の中にごろごろと転がる骨の白さに驚きながら、俺はこの人の趣味も学歴も何も知らないけども骨の色だけは知っているんだなということに気づいてしまい、喪服の袖に隠していた数珠をただ強く握る。

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