遺文化コミュニケーション

 喫煙所で後輩が「先輩って遺書とか書いたことありますか」と言い出し、そのままこちらを見もせずに煙を吐きながら「俺月一で書くのが習慣になってるんですけど、毎回家族宛てってのも芸がないから今月から宛名に先輩の名前使ってみたいなって」というので好きにしろと答えると「じゃあ今月何かあったら受け取ってくださいね、そしたら読んでも捨ててもいいんで」と初めてこちらを向いて煙草を咥えたまま黒子のある右の目だけを細めるのを見ながら、なんとなくろくでもないことの片棒を担がされているような予感を抱きはするが人の趣味に口出しするのは行儀が悪いので、俺は曖昧な返事をしつつ次の一本に火を点ける。

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