警告あるいは目印

 このところ気づくと右手親指の爪が強烈な黄色のマニキュアで塗られているのだけども、勿論自分でそんなことをした覚えもなくそもそもマニキュアも所持していないので、恐らくは怪現象ということになるのだろうが、原因の候補としては友人と行った噂の廃墟で校歌の一番を熱唱したとか踏切で隣にいた学生が飛び込んだのを横目に迂回してバイト先に出勤したことかあの夏の夜に家に来てライターと煙草の一箱を押しつけたきり音信不通になった先輩を最早忘れかけているからか、このどれかと言われても全く見当がつかないが、どうせならもう少し上手く塗ってくれればいいのにと思いながら、俺はムラやはみ出しの目立つ爪を眺めている。

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