俺でも敵でも誰でもなく
双子で生まれてしまったので、ずっと人生における愛も幸せも楽しみも俺に割り当てられる分のきっかり半分をあいつに巻き上げられ続けているしそれは生きている間はずっとそうなのだろうと思って生きてきたのだけども、金木犀の強く香る夜にあいつのことを階段から突き落としきちんと事故を装い悼む真似も万全に葬儀に臨みつまるところ首尾よく始末し終えたというのに、額の中で永遠に微笑んだままの自分と同じ顔を見るたびに自身の半分を今度こそどうしようもなく損なってしまったような背の膚がじっとりと冷たくなる感覚に金木犀の季節がくるたび苛まれている。
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