口裏・口止め・口封じ
我が家については何の曰くも謂れもない住宅地に建つ一軒家とそこに住む家族という以上のことはなかったのだが、大学を卒業してから音沙汰もなく生き死にも曖昧だった兄が五年ぶりに帰ってきてから、庭先から微かな泣き声が聞こえたり夜中に風呂場で地団駄を踏むような音がしたり二階廊下の突き当りがやけに暗く見えたりするようになり、何か関係があるのだろうかと兄にこの五年間のことを聞こうとするが、俺が昔好きだと言ったかもしれないバンドのアルバムや漫画本を「お前これ好きだったろ、欲しいもんがあったら兄ちゃんが何でも買ってやるから」と押しつけてくる兄のぎこちない笑みに怯んで、未だに尋ねられずにいる。
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