ド甘いのがお好き

 就職を期に実家を出て一人暮らしを始めた兄のところに泊った日、食材の買い出しに近所のスーパーまで荷物持ちとして付き合ったのだが、調味料コーナーに立ち寄った途端提げていたカゴに角砂糖が三袋も突っ込まれて、何に使うんだと尋ねると「約束でさ、洗面所の排水口に一日三個差し上げないといけないんだよ」と答えられ、相手は誰だとかどうして洗面所なんだといった種々の疑問を一旦堪えて、約束を破ったらどうなるかとだけ問えば、兄は少しだけ考えるような間を置いてから「お前の兄じゃあいらんなくなるだろうね」と笑うので、俺はそれ以上は何も聞けずにカゴの取っ手を握り直す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る