住人が事故死や心中や後追いで全滅した隣家の庭先には小さい花壇があったのだが、いつからかその花壇の真ん中にアイスの棒が一本刺されていて、その棒が現れたのと前後して「廃屋の窓が夜中になると紫色に光る」「玄関に逆さ吊りになった人間が揺れていた」「甲高い笑い声が午後二時から三十分延々と続いた」などの噂が囁かれるようになり、恐らくはあの棒のせいなのではと近所の人間は皆うっすら考えてはいるものの、棒一本でそんなことになるわけがないという常識とそんな現象を起こすきっかけになったかもしれない棒を始末して何事も起こらずに済むだろうかという葛藤により、未だに誰も花壇の棒には手を出せずにいる。

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