光なければ影もなし

 漫画から小説までぎっしり詰まった本棚と画面がデカいテレビに古典じみた名作と聞いたことのないような題名のDVDが並んだ棚と一緒に中古の一戸建てに一人で住んでいる叔父は、外がどんな天気でも遮光カーテンを開けずに生活しているので、何か人目を避けるような理由でもあるのかと尋ねれば「疚しいことはないけど、こんな感じ」と居間の大窓を覆うカーテンを開けた途端、射し込んだ秋の淡い光が首を吊った人間の影をくっきりと床に映したので、この人よくこんなとこ住んでられるなと思っていると「あと開けると閉めなきゃいけないから、じゃあずっと閉めとけば手間もないし」と叔父はどうしようもないことを言って笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る