大事な兄もただの■■

 大学を卒業しても定職につかず馬鹿みたいな柄のシャツやふざけたTシャツばかり着てふらふらしていた兄が突然就職したと報告してきてから数年が経つが、解雇もされず発作的に退職するようなこともなく地味なスーツで日々真面目に勤労の義務を果たし続けているようで、俺も家族も兄がいきなりまともな社会人になったことに驚きつつも安堵していたのだが、その兄が実家に帰省した際にかつての自室ではなく仏間で寝るようになり、その枕元に空のコップを二つ置いているのはどうしてかと尋ねても「職業病だよ」とうっすらと笑うだけでそれ以上何も教えてはくれないことについて真剣に考えるべきかどうかを悩んでいる。

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