※霊験灼然ただし個人差があります

 先週の出張先で電車が来るまでの時間潰しに立ち寄った神社で「八年前の春に弟だけ連れて逃げた父に会いたい」と願ったせいだろうか、今朝がたアパートの廊下で顔を合わせた隣人が目元のほくろから欠けた右耳まで父と全く同じ顔をしていたので、他人の空似だろうかと思いながら出勤したのだけども、駅前のティッシュ配りも近所のコンビニのバイトも皆記憶の中の父と同じ顔でローン会社の広告が入ったポケットティッシュを突きつけてきたり弁当を温めるかどうかを尋ねてくるので、とりあえず心当たりに思い至りながらも対処法は特に思いつけず、神社の加護が切れるのと俺の気が狂うのとはどちらが先だろうかと考えている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る