無間・無明・無道

 八月のお盆の頃になると、ひどく殴られたように顔を腫らした父が「お前にはひどいことをしたけれど父さんのことまだ許してくれないのか」と俺に延々と詫び言と泣き言の混在した懇願を繰り返すという夢を大体一週間ほど見続けるようになって四年が経つが、そもそも俺の父はまだ生きているし、青あざや腫れなど諸々を差し引いても夢の父の顔にはどうにも心当たりがなく、恐らくは出るべき相手を間違えているのだろうしそういうことをするから相手に許してもらえないんだろうなと納得してはいるが、それを伝える手段も義理もないため、夜ごと訪れる『父』の血の滲む唇から零れる縋りつくような声を今年もただ黙って聞き続けている。

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