われても末に

 酔って飲み屋の階段から落ちて死んだ先輩が割れた頭もそのままに俺の部屋をうろつくようになって一ヶ月が経つが、見慣れたとはいえ洗面所で背後に立たれて鏡越しに目が合ったり風呂場のドア越しに首が曲がった影が透けるのは心臓に悪いので、その手の人に相談して成仏とかしてもらうべきなのだろうかと思いはするが、先輩から借りたまま返せなかったバンドのアルバムや突然渡されたマイナー作家の文庫本を見るたびに、俺の趣味なんかを知っていてくれたのはこの人くらいだったのだから、俺が今しばらくはこの人を手元に置いておきたいと思うのは仕方のないことだろうと血まみれの背中を見つめて心地の良い思い上がりに浸っている。

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