夕飯までには帰っておいで

 遅くにごめん兄さん。俺さ、平田たちと一緒に例の廃屋に来てんだけど、まず入れる場所探そうって俺裏口触ってたら開いちゃって、中覗いたら真っ暗な台所で、じゃあ他の奴呼ぼうと思ったんだけど。


 カレーの匂いがして。

 真っ暗い台所に、女の人が立ってて。俺の方見て「お帰り、もうすぐご飯できるよ」って言うんだ。


 なあ兄さん──そうだよな俺らの母さんそんなこと一回だってしなかったし、そんな人だったら兄さんの背中も俺の足も無事だったはずだし。だから母さんなわけない。

 でもあの人、俺の名前を呼ぶんだよ。お母さん待ってたって。駄目だよな、これ。駄目なやつだって、それは俺も分かってんだけどさ、でも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る