地獄のように、悪魔のように

 七つ上の兄は優秀なので、俺のように愛想のなさで父に殴られることも素行の酷さを母に責められることも要領の悪さで祖父母に憐れまれることもなく、あの家とその周辺で自慢の息子として真っ当な社会生活を送っているのだけども、それでいて高校卒業と共に都会に逃げた不出来な弟とも交流を欠かさず月に一度顔を見に来るので、俺が最低限のもてなしとして唯一父親から教わったやり口で淹れたコーヒーを飲んでは「お前の方が父さんに似ているからな」と悪口じみたことをひどく穏やかな目をしたまま言うので、恐らくはそれがこいつにとっては賛辞なのだろうと理解しつつも、いつか毒を盛るか殴り殺すかしてやろうと思ってしまう。

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