血肉分けたる生さぬ仲

 逃げたり死んだりしたらしい実の両親の代わりに俺のことを育ててくれた叔父は真っ当に町役場に勤めているのに右手の指が幾つか欠けていて、その理由を尋ねるたびに「お前は歯が生え揃うのが早かったから」「義兄さんに似て好き嫌いがなかったから」などと悪い冗談のようなことを口にしてから不揃いな指先に真っ黒い目を向けて笑うので、いつから指がなかったのかと思い出そうとしても俺が物心ついたころにはもうあの掌は歪な花のような有様だった気がして、その度にもしかしたらと浮かぶ想像と舌に過る知らない味の記憶についてまだ口に出せずにいる。

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