会いたさ見たさにこわさを忘れ

「昔から悪さすると夢で真っ赤な顔した人にすげえ怒鳴られてぶん殴られて首とか絞められるんだけど、多分あれ死んだ親父だと思うから顔見たくなったらこういうことするようにしてんの」と電柱の下に供えられていた花束を地団駄でも踏むように蹴り散らす先輩の顔は防犯灯の光のせいかやけに青ざめて見え、いつもこんなことしてるんですかとかどういうときに顔見たくなるんですかとかその人本当にお父さんなんですかとか色んなことを聞くには何もかもが手遅れなんじゃないかと気づいてしまったので、俺はただ黙って暗い路上に散らばる白い花弁を眺めている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る