第十話
あの後、流行のすでに過ぎ去ったタピオカに華美が目を輝かせていたため、そのままみんなでタピり、詩織に引っ張られ何件ものアパレルショップをはしごしたりで、四人がショッピングセンターから出たのは五時過ぎだった。
電車に揺られ、四人は高校の最寄り駅で降りる。
「俺はこっちだから、じゃあな、涼」
「おう」
交差点で順陽たちは右に曲がっていき、涼たちも直進していく。
「それにしても、結構な量あるよな、本当に持たなくて大丈夫なんだよな?」
「うん、大丈夫だよ」
華美の両手は袋でふさがっていて、彼女の服を片手に持っている涼は気お使ってそう言ったが、華美の持っている袋の中身は下着と水着も入っているので見られたくないという事だろうか。
「とりあえず、荷物置いて食材買いに行くか」
「うん、今日は何食べたい?」
「そうだな、何でもいいんだけどな、まぁ、しいて言えば素麺とかかな。暑かったし」
「じゃあ、素麺にするね」
◇ ◇ ◇
「「ごちそうさまでした」」
夕飯を食べ終わり、涼が食器を洗いながら、疲れてソファーでウトウトしている華美に
「そう言えば、何かしたいことあるか?遊びに行きたいところでもいいし」
「うーん、とりあえず、海にはいきたいな」
「まぁ、水着買ってたしな、海は決定かな」
「ありがとう」
華美は先ほどまでの疲れた様子はどこへ行ったのか、彼女は涼の方へ振り返り嬉々とした声色でそう言った。
「別にいいよ、どうせ、順陽と行くことになっただろうし。何なら、順陽たちと一緒に行くか?俺と華美、順陽と詩織の四人で」
「うん!そうしよ!」
テンションの高い華美をみて、涼はLINEを順陽に送った。数分もしないうちにその誘いに乗るという返事が返ってきた。
よって、四人で海に行くことが決まった。まぁ、具体的なことは今一つ決まっていないが
涼は食器を洗い終わり、華美と今後の予定を決めようと近付いていった。そこで見た華美の顔色は青褪めていて明らかに異常だった。
「え、大丈夫か?華美?」
「うん、大丈夫だから心配しなくていいよ」
心配して声をかけた涼が焦っている様子を見て、華美はすぐに表情を取り繕い、ニパッと笑いそう答える。そうされると涼は何とも言えなくなる、本人が大丈夫と言っているのに、それ以上に関わってしまえば、より傷つけてしまうかもしれないから。
行き所のない心配が顔に出てしまっている涼をみて、華美はどうすればいいのか分からず、ただ気まずい空気から逃れるため
「わ、私先にお風呂入ってくるね」
「お、おう」
そう言って華美は浴室に向かった。
『危なかった、でも、、このことはいつか言わなきゃいけないのかな』
「でもなんで、、」
湯船につかった天川の口からそんなことばがこぼれる。その表情は何か憂い気であった。
いつか必ず言わなければならないことなのだが、その決意が固まらない。それは涼たちに迷惑をかけたくないからだろうか。
◇ ◇ ◇
「はぁ、なんか疲れちまったな、、それにしても、、」
天川が風呂に入っている間、涼はソファに一人座り、スマホで今後二週間の天気予報を見ている。
今週中はずっと晴れだが、来週は台風か何かで天気が崩れるらしい。
『まぁ、海に行くのは台風過ぎてからでもいいか』
そう思ったので、とりあえず海水浴場を探してみる、毎年順陽と行っているところでもいいかと思ったが、あいにくその海水浴場で毎年ナンパが横行しているの涼は知っている。
そして、今回一緒に行く女子二人は世間一般的にいえば美少女だ、少しでもリスクは減らしておこうという魂胆だろうか。
『そう言えば、明日であれから二年か、、』
涼はなんとなくため息をついた
儚き君へ花束を 薄明 黎 @singononote
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