猫天使if  孤独な天使

注・ストーリーに直接関わりはありません、続編を書いたとしても話に全然関係無く、繋がってないので気をつけてください。


あったかもしれない世界線って感じです。


ーーーーーーーーーーー


猫は天使状態で、静奈と共に過ごした家の屋根から太陽を眺めている。


「……」


あれからどれ程の時間が経ったのだろう。


あの日、猫は最後まで静奈に寄り添った。


『あの人達を、助けてほしい…』


そう言った時には、静奈の目はもう何も写していなかった。

だがその願いには抵抗した。

猫にはあんな奴らに助ける価値を見出せなかった。


『私も…

ほんとは、猫ちゃん、とーーーー』


最後の言葉だ。

後半は途切れてしまい、何を言おうとしたのかはわからない。


『静奈…』


静奈の魂は旅立ったのだ。

その事実を天使の感覚で理解してしまった、猫は内側から湧き出る感情を抑えられなくなり。


『蹂躙の時間だ。』


異形と悪魔相手に暴れた。

出現していた異形を滅ぼし、人々に感謝されても湧き出る感情は収まらない。


静奈の体がある2人の家へと戻る、帰れば静奈が起きて話してくれると想像しながら。


また一緒にご飯を食べれれる

また一緒に寝ることができる

また一緒にーーー


『静奈…静奈…』


だがそれは幻想だった。

そこに居たのは目覚めない静奈の体。


猫は抱きしめてずっと名前を呼び続けた。

疲れないのもあって、1週間の間ずっと呼び続けていた。


『頼む…

私を、1人にしないで…

私をーー、頼むよ静奈…』


自らの感情にも気付いた。

これは悲しみだ。もう静奈と話せない、共に過ごせない、そんな辛すぎる事実を受け止めきれなかった。


『やだ、やだ、

やだやだやだやだやだやだやだ!』


怪我を治す魔法を一心不乱に掛け続ける。

天使の知識には、人を蘇生する魔法は存在するとあるが、どのような魔法なのかはわからなかった。


『ああああぁぁぁぁぁぁぁ!!』


こんなに辛い思いをするなら勇気など出すんじゃなかった。


『嫌だぁぁ!

また私に笑ってくれ!私を呼んでくれ!

私と共に生きてくれ!私と遊んでくれ!

私を1人にしないで…』


泣いて、泣き叫んで、


『……』


急にどうでも良くなった。

それは静奈以外の事が、だ。


無駄に生きる必要も感じない、

私はもう朽ちよう、抵抗も何もしない内側の力が尽きるまで何もしないで…


「夜…」


あれからずっとこの家に住んでいる。

静奈の体は魔法で凍らせ、壊されたり破損しないように何重にも防御魔法で固めた。


「ただいま静奈。」


『……』


「聞いてくれ、今日は鳥が5匹飛んでいた。

それと人間は来なかった3日連続だ。」


『……』


「それと、それとな…」


最近の日課、寝る前に外で見た物を静奈に話す。


「…寝ようか、おやすみ静奈。」


『……』


静奈の体は魔法で凍らされてるため冷たい、が特に気にする事はなくベットに寝かせて抱きしめる。


「また、明日…」


今日という変わり映えの無い1日が終わって、また新たな1日が始まる。


そんな生活を続けていると、気づいたら10年が経っていた。


この10年で変わったことなど殆どない、変わった事と言えば数回人間と会話した程度。

たまに現れる異形以外、つまり悪魔は現れず人の社会は比較的平和な日々が続いていた。


「おはよう、静奈。」


『……』


「今日は雲ひとつない、いい天気だ。

ただ少し肌寒いな。」


『……』


「では行ってくる。」


また屋根の上に登る。

空気がひんやりとしている、そろそろ雪が降ってもおかしくない季節だ。


草木が揺れる音、風が吹く音。

とても静かな時間が過ぎていく…


「もう、夕方か…」


今日は静奈に話す内容がほとんど無い。


「少し歩きまわってみるか。」


少し違う発見があるかもしれない、静奈に色々と話したい、その一心で歩いてみる。


「ん…?」


何者かの気配を感じた。

普段は特に気にしないのだが、今回は気になってしまった。


「小さい…?」


それは大人の大きさでは無く、小さい子供の気配だった。


「何者だ?」


今までも何度か人間が紛れ込む事はあった。

そういう者は右往左往して辺りを見渡しこの空間から出ようとする、だが小さな気配は真っ直ぐとこの家に向かってくる。


「干渉は不要だと言ったはずなんだが。」


此処は静奈と猫だけの家、今侵入してきた人間もきっと他の人間達と同じ様に私と話したいだけだろう。


「話題にはなる、か。」


侵入者の元へと向かう。


「こんなに、遠かったっけ…」


侵入者は黒髪で静奈より一回り小さいぐらいの幼い少女、息切れしながらもしっかりと歩いている。


(なんだ、これは…)


その少女を見た瞬間、猫は動悸が酷くなり胸の奥が痛んだ。


「それ以上はダメだ。」

「…?」


もう猫に話す余裕など無くなった。

少し悪いとは思うが帰ってもらおう、そう判断した。


「あっ、天使様!その実はーー」

「迷い込んだのだろう、送ってあげるから早く帰るといい。」


少女が何か話そうとしたのを遮ってでも帰らせようとする。


「さぁこっちだ。」

「あ、あのあの!私、少し探し物がーー」

「そうか、少なくとも此処には無いだろう。

此処には私と…もう1人しか居なかった。」


手を引き、少し強引に空間から出ようとする。


「猫ちゃんを探してるんです!」

「!」


話を聞かずに外に出ようとしているのを察してか大声で叫んだ。


(猫ちゃん…?)


「白くて、ふわふわな猫ちゃんなんです。

何処にいるかわからなくて、元気で暮らせてれば良いなって。」


この日から猫は再び変わろうとしていた。




ーーーーーーーーー


シリアスばっかりはダメでしたねぇ。

なんか笑顔にしたくなるんですよ。


最後に軽い設定だけ


・ifルート 孤独だった猫天使

願い【猫ちゃんと一緒にいたかった】が間に合わなかったら進むルート。

生きる目的を失い、滅びるまで喋らない静奈と共に過ごすはずだった。


最後の少女は魂と記憶を持って転生した静奈。

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猫天使 白い翼食べたら不思議な事ができるようになりました ノツノノ @pannda1617491021

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