猫天使 小話2つ
〈猫天使 ニュースにでる〉
『日本地区に現れた天使様、徹底解説!』
異形達に攻められ、滅びかけた日本地区。
他の地区は次は自分達かと恐怖に震えていたが、猫天使の存在のおかげで前を向き、復興支援も頻繁に行われていた。
『昨日、大量の異形から襲われた日本地区、そこに現れた天使様。詳しく解説していきます。』
複数の専門家とテロップによってニュースは進行していった。
『全員が無傷で助かる事は不可能だと言われていたらしいのですが、いったい何故なのでしょうか?』
『それは現在までで確認された異形による襲撃の中で、1番の規模であったからです。
それに加えて、日本地区に現在存在する神に愛された者は1人のみ、戦力の面でも厳しいと判断されていました。』
地区と装備、戦闘の流れなどを説明していく。
だがこの番組を見ている者の殆どはそんな事に興味は無く、天使様の解説を待ち侘びていた。
『さて、それでは皆様が気になっているであろう、天使様についての解説に移ります。』
テレビが近くにある者は皆、作業の手を止めて画面を見つめた。
信仰の対象である神の眷属、その姿を写した映像か写真が映るのだ。会社などの場でも手を止める者を咎める声は上がらない。
『天使様のお姿はこちらです。』
『『『おぉー!』』』
絶世の美女、絶世の美少女、天使の姿を見た者は皆どちらかを思うだろう。
美しい容姿、長い金髪、3対6枚の翼、ドレスのような鎧、画面越しでも神聖な物だとわかる槍。
そして猫耳。
『とても美しく、気高い印象を与えますね。』
『そうですね。
ですが私は天使様の頭にある猫耳が気になります。』
『はい。
皆さんが気になるであろう猫耳なのですが、実は最強の聖女と呼ばれている御方の有名な話があるのです。』
専門家の1人が興奮気味に話し始める。
『現存する天使に直接祝福を与えられた御方です。
当時の証言に出てくる天使様には猫耳が付いていた、というお話です。』
『では真実であったと?』
力に目覚める前、
既に死んでしまった親と会いたいと願ったら猫耳をつけた天使が来た、近くの教会で短い間だったが両親と話をさせてもらった。という話。
その当時、教会に誰1人居なかったこともあり力に目覚めるまでは嘘吐きと呼ばれていた。
最強の聖女と呼ばれている者の唯一の汚点と言っても良い。
だが力に目覚め、1番強い神に愛された者になった後でもこの話だけは信じられていなかった。
皆、表立って言っていないだけ。
『その可能性が高いかと、過去のインタビューで聞いた天使様の特徴と一致しています。』
『なるほど。』
『これ以上詳しい事は未だ研究中ですが、今回日本地区が助かったのは天使様のおかげ。
皆様、祈りを捧げましょう。』
番組の切り替えが近かったせいで、無理やり締めに入ったようだ。
ニュースは暫くの間、天使の話題しかやらないだろう。
〈猫天使 掃除する〉
静奈と猫の住む空間。
普段なら自然が溢れて心地の良い空間は、侵入してきた異形によって破壊されていた。
「掃除大変すぎるよぉ〜!」
「にゃ〜。」
「あっ、リエル!
手伝ってくれても、良いんだよ?」
(此処で見てるから頑張って。)
横になって尻尾を振っている。そんな猫を見て苦笑いしながら木片を纏める作業に戻った。
「ふぅ…」
小さな木片なら運ぶ事はできるが、大きな倒木になると静奈の力じゃ無理だろう。
もちろんそれは神力を使わなければの話で、使えば簡単に持ち上げられる。
だけど静奈は使わない、聖人になった今はともかく、前の状態では少しでも使うと魔石の生成ができなかった為使わないのだ。
(あったかいなぁ…)
「はぁ、はぁ…」
「にゃー。」
(少し休んだほうがいいよ。)
気温が高く、長時間外で動くのはとても危険。
足元でウロウロする事で作業を中断させる。
「少し、休憩…!」
「にゃん♪」
玄関で靴を履いたまま座る。廊下は玄関より少し高いから、椅子の代わりになる。
「復興に忙しいから私だけでやらないといけないんだ、このままだと1ヶ月かかっちゃうかも。」
「にゃ?!」
「遊ぶ時間減っちゃうけど、許してほしいな。」
「……」
(それは許容できない。)
「…?あっ……」zzz
判断した猫は早かった。
すぐに膝の上に飛び乗り、静奈と眼を合わせて眠らせる。
意識が無くなったとわかった瞬間に天使へと変身、頭をぶつける前に手を入れ優しく寝かせた。
「さて、木を纏めて地面の穴を埋めるか。」
終わるのはあっという間だった。
片っ端から折れた木を浮かべ重ねて、ボコボコになった地面は緩やかにならした。
「木が減ったが、育てたほうがいいのか?」
流石にやり過ぎかとも思ったが、倒木集めで既に誤魔化す事などできないのだ。
やってしまおう。
一本一本丁寧に植え、猫の力で成長を促進する。
1分で1年ほどの成長、あっという間に荒れ果てた敷地は元通りになった。
「よし。
静奈は夜まで起きないだろうし、私も寝るか。」
猫の姿に戻り、静奈の肩に頭を乗せて眠る。
静かな時間が過ぎていった。
「ん、あっ!」
静奈が目覚めた時には既に日が沈み始めていた。
「寝ちゃってたのかぁ…
また明日頑張ろ。」
お風呂に入って夜ごはんを食べるため、猫を抱き上げていつもの部屋へと歩いていった。
次の日、外を見た静奈が驚きで固まっていた。
口を半開きにしてポカンとしたまま暫く動かなかった。
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10分後ぐらいにもうひとつ更新します
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