第11話 どうやったんだ?
『見つけたぞ!』
無音の時間が終わるまで、そこまで時間は掛からなかった。
異形の塊から子供を探していた1人の聖軍が、子供を抱き上げ見つけたと叫ぶ。
同時に周囲とアナウンサーも喜びの声を上げた。
『『『わぁぁぁぁぁ!!』』』
(いや、なんで喜んでるんだ。
あの銃撃の中で無事じゃないだろ。)
冷めた目でテレビを見る猫。
「よ、かった…」
(嘘でしょ、静奈まで?)
静奈まで安堵していた。
もしかしたら猫が勘違いしていただけで、子供は生きているのではないかと、再びテレビを見る。
『子供は無事です!
被害は家屋のみ、怪我人は全て軽傷で死者はいません。』
画面が切り替わり、中心にアナウンサーの下半分に地図と被害状況が書かれていた。
『今回も死者は0、みなさん神へと感謝を捧げましょう。』
左上にタイマーが出現し、アナウンサーが祈りはじめる。
1分後、再び被害状況と聖軍の活躍を語り始めた。
『現地の映像です。』
画面が切り替わる。
助け出された子供が母親と再会した瞬間、その映像だった。母親が泣きながら子供へと駆け寄り抱きしめている。
存在を感じるように、
生きていると理解するように。
(人間なら感動するんだろうな。)
猫には子供が生き残った謎の方が気になる。
もし猫が白オーラを使って願われたとする、
考えられる候補は、生き返らせたり、体を頑丈にしたり、治癒力を上げる。
生き返らせるのは、静奈に匹敵する程のオーラがあればなんとかなる。
だが今まで生きてきて、オーラをそこまで溜め込んだのは静奈しか見た事がないから却下。
残りの頑丈とか治癒力は正直わからない。
白オーラを消費し続ければ、なんとか耐え切れるかもしれないけど…
「ぁっ…」
(ん?)
テレビに映る感動の再会を見る静奈から、安堵と少しの嫉妬の感情を感じた。
静奈から初めて感じたマイナスな感情、とても珍しい。
「いい、なぁ…」
そう言ったあと、気絶するように眠ってしまった。
(いいな、か…)
静奈がここにきてから、なぜか眩しくなるまで増えた白オーラをつかって、
(やろう。
このままだと眩しくて、一緒に過ごしにくい。)
猫の解釈した願いを叶える。
願う側の静奈は眠ってしまっているが、最後に言った『いいな』を『やってほしい』願いとして処理する。
(テレビを見ながら言ってたから、多分抱き締められてるのに嫉妬してたはず。)
叶える願いが決まった。
(夜寝てる時に抱き締めてほしい、で叶えよう。)
寝てる間としたのは、抱き締めるために人化するのを誤魔化すため。
猫が急に人に変身したら間違いなく驚くし、住みやすい住処を失う可能性もある。
(最悪ペナルティが…)
ずっと考えてる可能性。
契約が終了し、何も問題なく願いを叶えられる状況で、猫から一方的に破棄したときに発生するかもしれないもの。
一度やろうとしたが強い悪寒を感じたため、試そうとは思えず未だ謎のまま。
「あ、う…ぃぁい…」
「にゃ…」
眠りながら胸を抑えて丸まっている、かなり苦しそうだ。
(今すぐ抱き締めて…
いや、この際オーラの消費が激しいのはどうでも良いとして、抱き締めて静奈は楽になる?)
どうすればいいか迷う猫。
願いに関係無く人化するのは、溜め込んでるオーラの消費が激しく、10分に1年分のペース減る。
流石に消費量が多いし、効果が出るかわからない。
結局、人化はせず静奈の額に、猫の頭をくっ付けて寄り添うことにした。
(少しでも楽になるといいな)
部屋には静奈が苦しむ声だけが響いていた。
ーーーーー
誰が見ても高級だとわかる料理。
それが並んだテーブルに座っている、スーツを着たオッドアイの男。
「あら、待たせたかしら?」
席に近づいてきたのは赤と黒のドレスを着た美しい女、約束をしていたようで特に断りもなく座る。
「別に待っていない。
それよりも、今回の大規模収穫についてだ。」
女は溜め息を吐く。
これだけ素晴らしい料理があるのだから、少しゆっくりしたい気持ちが溢れている。
「私はあそこの巫女ちゃんで遊びたいだけ、どうせ人間に収穫の邪魔なんて出来ないんだから楽しみましょうよ。」
メガネの位置を調節しながら話す。
「あそこには神が残した遺物がある。
少しずつ力を削いではいるが、未だ上位である我々でさえ覗き見ることはできん。」
「はぁ…
じゃあ何、もしもの事態に備えたいって事?」
嫌な予感がしたのか、顔を顰めながら問う女に対しその通りと頷き、
「そうだ、いくつかプランを考えてーー」
作戦を共有し始めた。
楽しむ事を考えている女とは同じ悪魔と思えないほど慎重。
いくつもの事態を想定し、その解決策まで複数用意する。
全体の半分を説明し終わる頃、女の機嫌はとても悪くなっていた。
それは周囲で食事をとっていた悪魔が、女の圧にやられ席替えを求める程であった。1番近い席に座っている悪魔は、立つことができなくなっていた。
「と、ここまではいいな?」
「どうでもいいわ。
これ以上続けるなら帰るから。」
今度は男が顔を顰める。
「覚える気がないのなら、実行日は俺の指示に従ってもらうぞ?」
「別にいいわよ。」
それでいいなら、もう話すことは無いと男はワイングラスを手に取る。
お互いにワイングラスをぶつけ、
「「乾杯」」
人間にとって最悪の日は近づいている。
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