猫天使 怪物を見る

第9話 もう慣れました

始まりの聖人、最後の1人が原因不明の死を迎えたあと世界は新たな指導者を求めていた。


当時の人々が目を付けたのが、新たに加護を得た者達だった。


その者達は、『神に愛された者』

男性なら神主や神父、

女性なら巫女や聖女、

と呼ばれ、聖人達に変わり世界を守ろうと日々努力していた。


だがその者達は弱かった。

聖人達と比べて神の加護が薄く、出来る事も少なかった。


怪我は完全には治らない

道具の力は弱い

異形を倒すのも一苦労


聖人を知っている人々の失望は凄かった。


石を投げられる事はなくても、外を歩けば陰口を言われらのは当たり前。

物を売ってもらえなかった事もあったそうだ。


その風潮は『魔石』の利用方法が発見されるまで続いた。

電気やガスに変わる新たなエネルギー、

風力発電や水力発電など、比にならないほどの発電が可能。


その作成方法は、


『異形や悪魔から採取する』

『神に愛された者による神力の固体化』

この二つだけだった。


ー神に愛された者 歴史教本より抜粋ー




「「……」」zzz


仲良く一緒に眠っている猫と静奈。


(…来る!)


ピーーーーー!


いつも通りに目覚めしの音が鳴り響く部屋の中、猫は鳴る直前に目を覚ましていた。


(もう慣れたよ。)


猫はこの音に慣れていた。


静奈と共に暮らし始めて10日、昼と夜は時間がずれたり、鳴らなかったりする。

だが朝の音だけは時間通りで、4日目ぐらいから勝手に目が覚めるようになり、不愉快なのに変わりはないが機嫌がすごく悪くなる事は減った。


「にゃ〜〜〜。」


(ほら、起きて〜。)


早く起きて音を止めて欲しい。

どうやって確かめてるかはわからないけど、この音は静奈が起きたら止まる。


「うぅ…おはよう…」

「にゃん。」


上半身を起こして座りながら眠気と戦う、猫も時折鳴いてサポート。

静奈が眠気に負け布団に横になると、再び目覚ましが鳴り始めるから、それを阻止するために毎日やってる。


(今日も頼んでおこう。)


箱の上へ飛び乗って、タブレットの電源を付ける。


(今日は魚がある、珍しいな…

でも頼まない、今日もベーコンで。)


9:59


朝ご飯を決めるのも猫の役目、

大体はソーセージかベーコンが入ってるメニューになって、同じ物である場合が多いが静奈は笑顔で猫に感謝を伝える。


(これが信頼の証。)


いや、猫は自分の食べたい物を頼んでいるだけである。


「眠い…」


まだフラフラしてる。

昨日は疲れる石を作ったせいもあって、まだまだ疲れが取れきれていない。


(また一気に増えてる。

やっぱり、あの石が静奈の白オーラに関係してるのかな?)


この10日間で、静奈が気持ち悪い石を作った回数は4回。

白いオーラは予想だけど9年ちょいぐらい。


そろそろ静奈を直視するのがキツくなってきた猫。


願いを叶えてオーラを回収したいが、願いを言わないためオーラが着実に増え続ける。


「ん…」


猫が静奈の周りで鳴いたり頭突きして、眠らないようにしていたが、


「ふあぁ…

今日は、ダメだぁ…」


と言って静奈は布団に倒れた。


(今回は大きめの石だったもんね。)


昨日作った石は拳2個分、いつもが1個分だった事を単純計算で考えると2倍の労力を使った事になる。

1個で疲労困憊になる石を2倍だ。


(休ませてあげたいけど、あの音なるからダメ。)


太陽が登ってる間に眠るには、お昼ご飯を食べたあとなら問題無い。

お昼を食べる前、つまり午前中だとあの音が鳴る。


「にゃーーーーー!!!!」

「はっ…!」


出せる1番大きな声で鳴く。

その鳴き声を聞き、目を開けてから少しキョロキョロ周りを見渡して、


「……」zzz


寝落ちした。


(仕方ないか。)


今日はもう諦める。

静奈が起きるまで、目覚ましが鳴り響く事は確定したのだ。


ガコン!


(む?)


ここに住み始めて初めて聴いた音だ。

重くて硬い物が落ちた時のような音。


「にゃ〜。」

「……」zzz


一応言ってくると鳴き、廊下へ出る。


少し肌寒い廊下を歩く、音の正体は直ぐに見つかった。

廊下の角に、鉄で作られた四角い箱が置いてあるのが見えたのだ。


『開きます、少し離れてください。』


「にゃ?」


近づくと機械音声で指示を出された。

離れて暫く待っていると、プシューと空気が抜ける音が聞こえ鉄の箱が開く。


(また箱じゃん。)


出てきたのは、ひとまわり小さいダンボール。

40cmくらいの正方形。


(開けたら怒られるかな?)


揺らしてみると意外と軽く、中からはシャンと控えめな鈴の音が聞こえる。


(もしかして静奈が遊び道具でも頼んだ?)


毎日遊びに誘われるので、遊ぶ事もある。

最初は無視してた猫だけど、静奈が落ち込むので仕方なく、本当に仕方なく遊んでいる。


(派手に動くと、気持ち的に疲れるからイヤ。)


パタン!


タッタッタッ


どうやって開けようか考えていると、障子を勢いよく開けた音と小走りで近づいてくる音が聞こえる。


「ごめんね、先に朝ご飯食べてて。」


(ん?何があったんだろ。)


さっきまで眠気に負けていたはずの静奈が、起きて行動してる。

その姿は少し焦ってるように見えた。


「今日……だっ…て。」


独り言を喋りながらダンボールを開けて、中から新しい服といろんな道具を取り出した。


(ここで着替えるの?)


時間が惜しいのか廊下で着替え始める。


(何が始まるんだろう。)


どうせご飯は冷めているのだ。

静奈が何をしようとしているのか、見てから食べても問題ない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る