第8話 なぜ昼間にも?

朝ごはんのお肉も当たり前のように冷たかったけど、とても美味しかったです。

でも静奈は少し物足りないのか、空になった皿を悲しそうな目で見つめています。


お皿を箱に戻したり、歯磨いたり、軽く掃除したあと静奈が近づいてきて、


「猫ちゃんってどうやって遊ぶの?」


遊びに来たみたい。


「にゃー。」

「そうなの?」

「にゃー!」


(これは伝わってないな。)


全部自己解決、なんとなく猫に問いかけて遊び道具とか雰囲気で選んでると思う。

だって、取り出したの鈴がついた紐だったし。


「ほら、紐だよ〜、鈴もついてるよ〜。」


猫の前で紐を揺らして興味をひこうとする静奈、だが猫は動かない、チリンチリンと鈴の音だけが虚しくなっている。


(ごめん静奈、今気分じゃないんだ…)


猫はまだ機嫌が悪かった。ベーコンを食べて少しは調子戻ったけど、朝のアラームのせいでまだ本調子じゃない。


尻尾を振って紐をあしらう。


「むぅ…」


頬を膨らませ不満です、と伝えるように唸る静奈。

紐を1本から2本、鈴を1個から3個と増やし猫が反応して遊んでくれるのを待つ。


「猫ちゃ〜ん。」


横になっている猫の鼻先をくすぐるように紐を動かす。


(痒いな。)


それでも尻尾であしらって過ごしていると、だんだんと不満が悲しみに変わっていったのか、目から涙が溢れそうになって、


「うぅ…」


部屋の端っこで体育座りで座り込んでしまった。


「にゃぁ…」


ここまでになると流石に罪悪感が湧いてくるけど、眠いんだもん、仕方ない。


「猫ちゃんって、むずがじぃ…」


静奈のダミ声が聞こえる。

かなり悲しんでる雰囲気があるけど折れてはない、いつのまにか持ってたタブレットで調べ物してるし、猫が動かなくても大丈夫のはず。


(おやすみ…)


丸まって眠る猫。

今回は直ぐに体勢が決まって、すぐに眠りにつけたようだ。


一方、落ち込みながら部屋の隅にいた静奈は持っているタブレットで、

『猫ちゃん 遊び方』

『猫ちゃん 食べる物』

『猫ちゃん 必要な物』

『猫ちゃん ……』

と、猫について調べ続けていた。


偶にメモアプリを使い、猫ちゃんとやりたい事を書いて、また調べ物に戻る。


最初は涙を流しながらの作業だったが、猫について調べていくうちに希望を取り戻したのか、徐々に笑みが戻った。

目は少し赤くなっているが…


「〜〜♪」


楽しげに鼻歌も歌い始めた。


「〜〜♪」

「……」zzz


その歌が猫にとっていい感じに眠気を深め、更に深い眠りへと誘う。

薄らと残っていた意識も完全に消える。


「む、寝てる。

寒かったりするのかな、タオルかけてあげた方がよかったり?」


眠っている猫を見て色々考える静奈だが、起こさないように部屋の端からは動いていない。


「えっと…」


『猫ちゃん 寒い』と検索。


「少し震えてる、は無いし。」


検索で出てきたのは、

猫が寒さを感じている時のサイン!と書かれたページで、そのサインが幾つか紹介されていた。


「くしゃみ、してない。」


1つ1つ確認していき、


「丸まって、動かない!」


1つだけ当て嵌まるのを見つけた。

それは、普段より丸まって動かない、といった物。

だが猫は寝ているだけで寒いわけではない。


「タオル、タオル…」


それを知らない静奈は、できるだけ音を立てないよう、タンスからタオルを取り出し。


「ふぅー…」


深呼吸をしながらゆっくりと猫にかけていく、

ピクピクと猫の耳が動く度、起きていないかと不安になりつつも全体にタオルを掛け終わり。


「…よし。」


安心した時、


ピーーーーー!


「ヒャア!」

「にゃーー!」


時間を知らせる音が鳴り響いた。

睡眠を妨害された猫はもう許せんとばかりに音の出所を探し、静奈はそんな猫を落ち着かせようとしていた。


「猫ちゃん、大丈夫だからね。

落ち着いてね…」


(なんで昼間にもなるんだ!)


フーフー、と荒い息をする猫を抱き上げて、撫でながら落ち着いてと囁く。


ピーーー…


(やっと止まった、見つけてぶっ壊してやる。)


2回目だ。

1回目でも許せなかったが、2回目はさらに許せない。


まだ朝はわかる、目覚ましとして使ったんだろうなっていうのでね。

でも今回はダメだ、だって昼間じゃん!

何のために鳴らしたんだ。


「これはご飯の時間を知らせる音なんだ。

ちょっと、音大きいよね…」


(ちょっとではないよ?)


ご飯の時間を、こんなに大きな音で知らせる必要があるのか、猫にはわからなかった。


「11時とちょっと…今日は少し早いかも、猫ちゃんお腹すいてる?」

「にゃ。」

「うーん…

どれ食べたい?」


(今は要らないな。)


昨日の夜、朝とちゃんとご飯を食べた猫は、気分的にまだ要らなかった。

それに、自分よりも静奈の方がお腹空いてそうだったから、ちゃんと食べてほしい。


「要らない?」

「にゃん。」

「じゃあ、これ食べよっと。」


静奈が選んだのはラーメンだった。

焼豚とメンマ、卵が乗った醤油ラーメン。


29:59


「え!30分?!」


朝以上に待ち時間が伸びてる。

静奈も驚いているから、普段と比べてもこの待ち時間は長いのだろう。


「にゃ〜〜。」


(散歩してるね〜。)


「猫ちゃん?!

何処行くのー?」


扉を体でこじ開け、廊下へ出る。


「猫ちゃんは自由だな…」


廊下の陽の当たる場所へ向かって、その場で横になる。

ボーッと中庭を眺め時間を潰し…


(また、眠く…)


そのうち、また眠りに付き…






ピーーーーー!


(またかぁぁぁ!)


外を見るとまだ陽は登っている、というか全然時間は経ってないようだった。

この家でゆっくり眠るのは難しいようだ。

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