第6話 おやすみ猫ちゃん…

「よいしょ、っと…」


箱から取り出したのは透明の四角い奴。

静奈の反応を見る限り、意外と重いのだろう。箱から取り出したあと地面に起き、手のひらで向かい合わせるようにして挟む。


「神よ、人を守りたまえ…」


呟くように祈りの言葉を言ったあと、静奈の手から四角い奴の中心に向かって金色の水が出ている。

宇宙空間に水を浮かべているのが1番近い、中心で渦を巻くように回転し、中からとても綺麗な宝石が出たのを確認して、


「ふぅ…」


疲れきった静奈が手を離す。


(見た目は綺麗だけど、この石なんか嫌だな。)


頑張って作った宝石を、まさかの石扱い。

だが猫が嫌だと感じたなら、あまり良い物ではないのだろう。


(不快…

それに静奈の弱り具合が普通じゃない。)


今の静奈は例えるなら、

3日断食したあと、1000メートルを全力ダッシュした時ぐらい、体力面でも精神面でも弱りきってる。


「にゃー。」

「心配、してくれてるの?

ありがとう…」


動ける体力も無く、声も掠れている、

そんな状態で立ち上がり、ふらつきながらも宝石の入った四角い奴を箱に戻す。


ピー!


「これで…終わり…」

「にゃー。」


お疲れ様と伝わるがわからないが鳴く。

その鳴き声に微笑みで返し、


「シャワー、浴びてきちゃうね…」


着替えを手に持ってフラフラと歩いていく。


(あれは危ない、着いていこう。)


まっすぐ歩けてない、少し歩けば倒れかけ壁に手をつき、またフラフラ歩くを繰り返している。


(なんで願わない…

いや、弱音を一言でも言えば願いとして叶えるて助けるのに、なんでだ?)


あんな状態なのに、一言も弱音を吐かないのが猫には理解できない。


人間ほど内と外が違う生き物は居ない。


長い間、人間と関わって猫が1番最初に学んだ事だ。


笑って居ても内側では泣いていたり、仲が良く見える2人組はお互いに嫌い合っていた。

それにはオーラの色には関係なかった。


(静奈は寂しがってる、いや泣きたいはず。)


決め付けている。猫自身そう理解しつつも静奈が弱っているのを見たくない気持ちが強く、早く弱音を吐けと念じている。


その気持ちは、静奈がシャワーを浴びている最中も落ち着くことはない。


(こんな感情、本当に嫌。)


体を動かしてしまう。

その場で回ったりクネクネして、この嫌な感情をなんとか消化しようとしていれば、


「あ、猫ちゃん。

待っててくれてたんだね…」


かなりの時間が経っていた。


(嘘ぉ…そんなに経った?)


シャワーを浴び終わったようで、新しい巫女服を着た静奈が出てくる。

髪の毛はまだ濡れているのか、頭にはタオルが巻かれていた。


(あの感情が思わず吹き飛んだ。

冷静に思えば変な事やってたな、最近は感情が昂ること減ってたんだけど。)


「にゃー。」

「ありがとう、ニャー。」


ほんのり温かい腕に抱かれ、共に部屋に戻る。


「本当はもっと遊びたかったんだけど、ごめんね。

今日は、疲れちゃった…」


疲れちゃったなら仕方ない、疲労困憊の静奈に遊べと強制する猫じゃない。


(別に遊ばなくても…)


それに長く生きてると楽しみが減っていく、猫にとってはそれが遊びだった。


部屋に戻り、布団を引く。


(結局あの石はなんだったんだろう、わざわざ静奈があんなになってまで作る意味が合ったのかな。)


嫌な感じはしたけどそれっきり、白オーラみたいに別の事に使えるとは感じないし、黒オーラほど気持ち悪くはない。


ただ静奈が疲れただけ。


「それはね、」


猫が箱を見ていたのに気づいた静奈が、箱について説明してくれた。


「一瞬で物を送れる道具なんだよ。

私が必要な物とか、食べたい物とか、頼めばいろいろ送ってもらえるんだぁ…」


(ふ〜ん、初めて見た。)


「たまに、向こうから…

送られ…てくるけど……」


途切れ途切れになりながらも説明を続けてくれているが、もう起きているのは限界そうだ。


「にゃ!」

「ごめん。

もう、寝よう…」


(おやすみ静奈、ん?)


もう少し探検しようと思ってたんだけど、


「おやすみ、猫ちゃん…」


腕に抱いたまま寝るっぽい。

猫が苦しくないように気をつけてくれてはいるが、全く動けない。


「にゃふ…」


(ま、しょうがない。

静奈、これからよろしく。)


猫も大人しく眠りにつく、

静奈もこの家も謎が沢山あり。変な事に巻き込まれるかもしれないが、猫は優しい静奈と共に暮らせる事に期待していた。


(家族、か…)



ーーーーー



一切の光が入らない暗い部屋。

そこには、マークが描かれた10体のモノリスが、円を作るように並んでいた。


「そろそろ収穫か。」


1体のモノリスのマークが赤く光り、何処からともなく声が聞こえる。


その声を皮切りに、並んでいたモノリスのマークも光始め、


「どの地区するか決まっているのか?」

「私の管理している地区はやめて欲しいわね。

もうそろそろで仕込みが完了するのよ。」

「あの天使が降臨した、って言ってる生意気なところとか?」


各々が好き勝手に話す。

ある程度話したあと、手を叩く音で皆静かになった。


「収穫する地区は既に決まっています。

かなり強力な力を持つ、純粋な魂が守護する地域。かの存在を絶望させ、流れで地区を収穫の予定です。

質問は?」


誰1人として喋らない、特に反対意見は無いのだろう。


「それでは今回の件はこれで決まりだ。

次の議題がある者は?」

「天使の残した結界の処理について。」


会議は続いていく…



少し先の未来、人類によくない事が起きようとしていた。


ーーーーーーーーーー

次回は18日 7時に更新します

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る