第2話 人間って光るっけ?

「にゃー」


よほど疲れていたのだろう、1日中寝てしまっていた猫。辺りは特に変化は無いが、違和感を感じるのかキョロキョロして周りを見渡している。


「にゃ!」


違和感の正体を発見した。

自分の毛色が真っ白なのだ、揺れる尻尾が白くなっていて気づいた。


「どういうこと…え?」


また言語を話す。

今度は自分が喋っていると自覚できだが理由はわからない、喋れたのも無意識のうちに話していた。


「なにが、起こってる?」


原因を必死に考える。

それで気づいたが自分が知らなかった知識がある事に気づく。それは言語と人間のちょっとした常識、猫は1つずつゆっくりと理解していった。


「結局わからない。」


話せる様になり、人間の常識を理解したとしても、猫が話せる様になったり毛色が急に変わる理由など分かるはずもない。


「いっか…」


諦めた。


頭を使ったせいなのか、疲れが溜まっている気がするのだ。

今直ぐに知りたい事は考えてもわからなそうな事ばかり、山から出れなかった理由とかね。


寝る体勢を探す、なかなかうまく決まらない。

体をクネクネさせて良い感じの体勢を探していると、遠くから複数人の足音が聞こえた。


ガサガサ


「あっ!白猫だ!」

「まじ?」


(うわ、人間の子供が来た。)


草を掻き分け、半袖半ズボンの男児3人組が現れる。

猫を指差し近づこうとしてくる、直ぐに立ち上がって逃げる。


過去に経験したのだ、人間の子供と関わると追いかけられると。


「逃げた!」


草が多い山の中、大きさでも速さでも負けることはなく、撒くことにそこまで苦労はしなかった。


あの子供達が遊んでいるし、しばらく山には戻れない。

少し時間は早いが、餌をくれるお婆さんの元へ向かうことにした。


人間の知識を手に入れたおかげか、いつもと同じ通り道なのに雰囲気がガラッと変わって見える。看板の文字を見るだけでも楽しい。


ただ1つだけ気になる事が、


(うっ、前の人は黒い…)


人を囲う様にオーラが出ているのだ。

白いオーラは心地が良く別に気にならないのだが、黒いオーラはダメ、気分が悪くなる。


(そもそも人間って光るっけ?)


オーラの大きさも人それぞれ、かなり大きい人もいれば、小さくて黒か白かわからない人もいる。

どうやって色が決まってるかはわからない、だけど黒は近寄りづらいし白の人は心地いいから、黒を避ける様にして歩く。


チカ チカ!


「にゃ?」


通りかかった公園から点滅する白い光が見えた。


(どうしてだろう、何故か絶対に行かないと行けない気がする…)


最初は無視しようと考えたが、どうしても行きたくなり、体はともかく内心は恐る恐る近寄っていく。

光の元は公園の端っこ、そこには小さい女の子がしゃがみながら何かを探していた。


「グス…」


まだ幼い少女は心細くなってしまったのか、泣いている。


「どうしたの?」

「ヒッ!だ、誰ぇ?!」


(そうだ、猫は喋らないんだった。)


喋れる様になってるのもあり、思わず声を掛けてしまうミスをしてしまった。もちろん常識を直ぐに思い出し、連続で声を掛けるのを辞める。


女の子は焦った様に辺りを見渡し、猫が視界に入ると見つめた。


「ね、猫さんが喋ったの?」

「にゃ〜。」

「そうだよね、喋るわけないよね。

聞き間違いかな…」


少し落ち込むも、直ぐに探し物に戻る。

今、猫には一切興味がないらしい。


「見つけないと…

お姉ちゃんと、お揃いの…」


(一緒に探してあげたいけど、何を探してるかわからないし、かといって聞くのは論外。)


人間の常識を持つ今の猫にとって、泣いて困ってる子を助けてあげたいと思うのは当たり前である。

それに何故か此処から離れられない。


「見つかってよぉ…」

「にゃ〜。」

「猫さん…

お姉ちゃんとお揃いのリボン、一緒に探してくれない?」


心に限界が近づいてきてしまったんだろう、女の子がそう言ってくる。

その時、体が動き出した。


「にゃ〜!」


正確には勝手に動いている訳じゃない、ただなんとなくコッチにありそうだと感じ、その方向へ歩いている。


感覚で向かっていると、少し離れた木のところに引っかかっているのを見つけた。


「あっ!」


後ろから着いてきてた女の子も気づいた様で、駆け足でリボンの元へ。

切れないようにゆっくりと丁寧に取り、両手で持ちながら喜んでいる。


「猫さんありがとう!」

「にゃふ…」


お礼を言われながら頭を撫でられる。

人間の子供に撫でられた時は少し痛かったが、この少女は優しく撫でてくれている、とてもいい子だ。


しばらく撫でられていると、点滅していた白い光が手をつたって猫へと入っていく。

体が暖まり、頭がスーっと冴えていくのがわかる。


「じゃあね!」


一通り撫でて満足したのか、立ち上がり公園から出ていった。

少女の白いオーラは小さくなっていた。


(もしかして、願いを叶えた分オーラ貰ったのかな?)


「うん、今の私は冴えてる。」


頭もスーっとなって疲れが取れるし、また機会があったら白いオーラを出してる人間の願いを叶えようと決めた。


思いの外収穫があった寄り道。

猫も公園を出て向かっていたお婆さんの所へ。


(あ、そういえば起きてから何も食べないのにお腹すかない。)


そしてまた謎が増えた…

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