3話 死神様は踠き生きる
「⁉︎……なん…で……?」
何故この人は会って間もない私に生きろと云うのだろう?
何故この人は私に生を望むのだろう?
貴方の目的はきっと、私を殺す事だろうに。
生きて持ってはならない異能を持った私に、何故生きろと云うのだろう?
「……死ぬ事で、現実の苦しみから逃げるように思ったからだ。」
「っ……!」
息を飲み込んだ。
思い当たる節が頭の隅にあったからだ。
死んで仕舞えば。
人を殺さないといけない此処から逃れられる。
死んで仕舞えば。
苦しむことも無くなる。
死んで仕舞えば。
自由になれる。
「罪を犯した貴女が、死ぬ事で逃げるのであらば、斬る事はしない。」
「…。」
「だから、生きろ。生きて其の罪を償え。
殺した者達の想いを忘れず、背負え。
彼等の叶わなかった願いを、貴女が代わりに叶えろ。
それが全て終わった時、貴女は死ぬ事を赦されるのだ。」
俺は、こんなにも標的に情をかける者だっただろうか。
否、違う。
彼女ならきっと、やり直せる。
そう確信を持ったから、こんな事を云って居るんだ。
だから、今は刀を振らず、鞘に収めるんだ。
「…私は…生きて…良いの……?」
私が生きて良いなんて、思ってもいなかった。
死ななければならない存在だと、思い続けて生きてきた。
でもそれは本音を隠したただの言い訳だった。
本当に生きるのが辛くて辛くて。
死んで仕舞えば、苦痛なんて感じず、皆私に殺される事なく生きれる。
私が、誰かの不幸を、作らなくて済むんだ。
そう思っていた。
死を以て赦されるのではないの?
私なんかが、生きて、それで彼らは赦してくれるの…?
「貴女には、生きて償う義務がある。
だから、生きろ。
良い悪いの軽いものではない。
貴女は義務なのだ。
全ての苦しみを背負って、逃げずに生きろ。」
「っ…ぁ…ぅあぁぁぁぁぁぁぁ…!」
泣き崩れた。
真面に自分で立っていられない、こんな身体だけど。
真面に自分で生活なんてできない、こんな私だけど。
生きよう。
逃げずに生きて、生き切ろう。
何をすれば良いなんて無い。
踠け。
踠いて踠いて、生きるんだ。
何が何でも、償い切る迄生き残るんだ。
「あ…あぁっ……!」
「しばし眠れ。先ずは此処から出て、己の体制を整えろ。」
首辺りを押さえられて、私は意識を手放した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます